今月のひとこと 2025年 12月号

今月のひとこと 2025年12月1日号

高市内閣の発足と外交ラッシュ

高市早苗総理の「存立危機事態」をめぐる発言は、中国が対日政策を更新、転換させる「理由」として利用されている。写真は韓国・慶州で行われた日中首脳会談を前に、中国の習近平国家主席(右)と握手を交わす高市早苗総理。2025年10月31日(共同通信社)

今月の話題のトップは何と言っても高市内閣の発足と活動でしょう。劇的な総裁選から、その後の目覚ましい外交攻勢まで、まるで数ヶ月分の出来事が一気に押し寄せたかのようですが、実際にはまだ 就任後一ヶ月しか経っていません。

総理本人も就任によって明らかに“人物が変わった”印象があります。櫻井よしこ氏も言っていましたが、総裁選の頃は政策を細かく語るばかりで「とっつきにくい人」という評価がありました。私自身も、大局観を必要とする外交や国家観は大丈夫なのかと思っていたのですが、政策は元々得意で、国家間とかは安倍政権を引き継いでいて、外交は各国の要人と個人的な信頼関係を積極的に築くことで、想定以上にうまく立ち回っているとおもいます。まさに「地位が人を作る」の典型ではないでしょうか。

しかし国会では少し気になる場面もあり、岡田克也議員への予算委員会答弁で、必要以上に突っ込んだ答弁をしてしまい、中国の反発を買いました。 言っていることは間違いなく、中国の方が曲解して言いがかりを付けている感じですが、政治問題化してしまい、幸い経済的には影響は少なく、しばらく時間を置くしかないと思います。 騒がしい観光客が減って良かったと言う話もあります。

対中国に関しては、トランプはああ見えて意外に機微な話はうまく避けていると思います。 メディアでは言いたい放題だが、実際はそうでも無いと言う事が良く分かりました。 米中電話会談の翌日に電話してきて、日中双方にメッセージを出した感じです。

AI風刺動画の完成度と情報発信度

ネットで特に話題になっているが、AIによる風刺動画です。国内外の政治ニュースにAI生成コンテンツが絡み、まさに“民衆レベルのメディア”として影響力が増していると感じました。

【22連発】「ポケットに両手」の大喜利動画、総集編!!

この動画は高市早苗首相の「台湾有事」発言を受け、日本の金井正彰アジア大洋州局長と中国の劉勁松(りゅう・けいしょう)アジア局長が北京で会談したあとの、例のポケットに手を突っ込んでいるアジア局長を揶揄したものです。

その政治的なインパクトの前に、この動画がこの精度で、多くの人が作っていると言うのはすごいなと思って見ていました。 本人だけでなく周りの人もすべてちゃんと処理されています。 そういう観点で動画をチェックするのは面白いと思います。

こうした動画の多くが一般ユーザーによって制作されているという点が象徴的です。権威や専門機関ではなく、個人がAIを用いて高度な表現を行い、それがニュースと同等レベルの拡散力を持つ。日本は高圧的な態度で対抗するのではなく、ユーモアや皮肉で反応する“ソフトな反撃”を行っており、この構図自体がネット文化として成熟してきたことを示しているように思います。

AI巨大投資、オラクル失速、ビットコイン急落

AIへの巨額投資は相変わらず過熱気味で、Google、OpenAI、Amazon、Microsoft が2桁兆円規模で競い合っています。その一方で、以前に本欄で取り上げたオラクルがとうとう失速してきました。 OpenAI から大規模なクラウド業務を受けつつ、自前のデータセンターが不足しているため、新規建設の負担が重くのしかかり、株価が 40%下落する事態となりました。従来の「法人向けデータベースの覇者」という地位だけでは、新しいAIの波を乗り切るのが難しくなっているのかもしれません。

ChatGPT は 5.1 に進化し、私自身も画像ビューアの構築などで活用しています。30行のコードから始まったものが500行規模に成長し、ほぼ実用的なツールに仕上がりました。この辺りの“短期間での加速度的成長”はまさにAI時代の象徴と言えるでしょう。。

価格高騰の背景と仮想通貨 1000倍への期待

その一方で、ビットコインが大幅下落しています。ここ数年はETF資金の流入で上昇基調が続いていましたが、今年に入り、AI関連株が注目を集める中で資金がそちらに流れていること、金利や経済指標の変動なども重なり、不安定な動きになっています。とくに「上昇し過ぎた反動」が強く出ているとの見方も多く、値動きの荒さが改めて露呈した形です。

ビットコインの値動きを語る上で避けられないのが、半減期(Halving)という仕組みです。これは4年ごとに「新しく発行されるビットコイン量が半分になる」イベントのことで、ビットコインの供給量が自動的に絞られる設計になっています。もともとビットコインは最大発行枚数が 2100万枚 と決められていて、さらに採掘(マイニング)報酬は4年ごとに半減する事で、発行スピードが落ち、長期的には“希少性が上がる”仕組み担っています。 この辺は天才的ですね。

しかし半減期前に上昇し過ぎて、ビットコイン発足時には1ドル以下だったものが、下落前では日本円で1400万円にもなっており、その反動で下落するのでしょう。 今回の大幅下落も、「半減期後の反動」+「AI投資への資金移動」が重なって起きたという見方が強いようです。

AI・クラウド・暗号資産という三つの領域が、2025年には互いに影響し合う大きな潮流となり、金融市場全体を揺さぶっている印象です。

人型ロボット競争の加速

中国のEVメーカーが人型ロボットを公開 CEO「来年末までに大量生産を目指す」【知っておきたい!】【グッド!モーニング】

AIはソフトウェア面で猛烈に進化していますが、それと並行して フィジカルAI=人型ロボット の分野が急速に重要性を増しています。世界中の企業が競い合っている中でも、中国の勢いは桁外れで、参入企業の数や試作・改良の回転速度が他国と比べて圧倒的です。数が多い分、その中から突出した性能のロボットが登場する可能性が高く、実際に動画で見る限り歩行・把持・姿勢制御のレベルはすでに「実用の入口」に達しつつあります。 しかし、どう見ても人間が入っているとしか見えないものや、おもちゃに毛が生えたレベルのものまで、玉石混交です。

人型であることの意義は非常に大きく、世界のあらゆる設備や道具が“人間が使う前提”で作られているため、ロボットも人型の方が最も高い互換性を持ちます。つまり、従来の産業ロボットのように特別な環境を整備する必要がなく、家庭・工場・店舗・病院といった既存の環境にそのまま投入できるという点で、技術革新の幅は極めて大きいと言えます。

現在はまだ価格が高く一般導入には難がありますが、将来的には 高級車1台分(500万~1000万円)ほどまで下がるという予測もあり、企業の人件費と比較して十分採算が取れる世界が見えつつあります。

技術課題はバッテリーで、一度の稼働時間が約2時間とされていますが、自力で充電ステーションに向かい、自らバッテリーを交換する仕組みが確立すれば24時間運転も可能になります。

しかし、ロボットが人間に近い形と力を持つ以上、誤作動や事故の問題は避けて通れません。自動車と同じく事故があっても利便性が勝れば社会は受容しますが、この分野では安全基準や法整備が急務になるでしょう。こうした議論は今後さらに活発化し、私たちの生活にも直接影響を与える段階に入ると考えています。

今月の読み物は「ともぐい」 ハードカバー 新潮社 2023/11/20 河﨑 秋子 著 5つ星のうち4.1 (603)

第170回直木賞受賞作! 己は人間のなりをした何ものか――人と獣の理屈なき命の応酬の果てには
明治後期の北海道の山で、猟師というより獣そのものの嗅覚で獲物と対峙する男、熊爪。図らずも我が領分を侵した穴持たずの熊、蠱惑的な盲目の少女、ロシアとの戦争に向かってきな臭さを漂わせる時代の変化……すべてが運命を狂わせてゆく。人間、そして獣たちの業と悲哀が心を揺さぶる、河﨑流動物文学の最高到達点!!

十数年前、最後にアメリカに行ったときに現地のツアーに参加してヨセミテ公園で、ガイドが「熊がキッチンに侵入して台所を荒らした」という話をしていたことを思い出します。 本書はだいぶ前に読んだのですが、最近のニュースとかでは、猟友会とか警察とか果ては自衛隊まで言及されていますが、単なる銃器による「猟」では無いと云う事が良く分かります。 まさに人と熊との壮絶な戦いと言って良いでしょう。 TVのインタビューでも関係者がそんなことを言っていましたし、それが書籍になっているそうです。内容は重厚で、読むには少し気持ちの準備が必要ですが、現代日本の状況に非常に合致したテーマを持つ作品だと思います。



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