今月のひとこと 2026年8月1日号
東野圭吾さんの訃報
作家の東野圭吾氏が7月23日、大腸がんのため逝去されました。68歳でした。訃報が公表されたのは27日で、葬儀は家族葬で済まされた後だったそうです。いかにもこの方らしい去り方だと思いました。
同じ大学の後輩にあたるが、年代が違うので面識はありませんでしたが、非常に関心のある方でした。大阪府立大学の電気工学科の出身で、弓道部の主将だったそうです。卒業後は日本電装(現在のデンソー)に技術者として就職し、会社勤めを続けながらミステリーを書いて、1985年に『放課後』で江戸川乱歩賞を受賞してデビューされました。エンジニアから作家へ、という経歴はやはり印象に残ります。
一度、講演をしてほしいと依頼をしたことがありますが、忙しさを理由に断られてしまいました。なかなか人前に出るのはあまり好きではない方らしいです。テレビにもほとんど出られませんでしたし、受賞の際の会見なども最小限だったように記憶しています。作品だけで勝負する、という姿勢だったのでしょう。累計発行部数は1億部を超えたそうですから、それで十分だったわけです。
この大学も他の大学と合併して違う名前になってしまいました。2022年に大阪市立大学と統合して、大阪公立大学です。府大も市大もそれぞれ長い歴史があったのに、どちらの名前も消えてしまいました。これはこれで寂しいものです。
いずれにしても、理系の観点でのミステリーなので、同じ理系の私としてもなかなか読みやすいものが多かったです。『容疑者Xの献身』の数学教師にしても、ガリレオシリーズの湯川にしても、理屈がきちんと通っている。トリックのために理屈をこしらえるのではなく、理屈があるから話が動く。あの感じは、理系の人間にはやはり気持ちがいいのです。ご冥福をお祈りします。
混迷する国内政治
国内情勢は混沌としてきて、総理の支持率も急落しました。それでもまだ48%ほどあるので、トランプよりはましなのかもしれませんが、少々国会運営が荒っぽいのと、維新との連携があまり良い結果を生んでいないのだと思います。
麻生氏の描いた組み合わせとして、自公に代えて自民・維新という連立を選択したのが良かったのでしょうか。維新の政策があまりにもかけ離れているので、国民の支持も落ちてきたのでしょう。維新には、大阪のローカル政党という特殊な面と国政政党としての面があって、これが足を引っ張っているように思います。多分、維新は何としても大阪都構想を実現しようとしているのですが、その発想が影響して、実際の政策にうまく活かされていないと思います。
円安・財政と暮らしの実感

円安はどんどん進みます。私はもともと円安派で、もっともっと円安になればよいと思っていた側です。以前は東南アジアに行くと何でもものすごく安く感じたのですが、今は逆で、向こうから日本に来るとそれが安く感じられるようです。以前は円安の恩恵と言っていましたが、今は円高ドル安の方がいいなと思っています。ドル安になっている方がやりやすくなるので、120円とは言わないけれど、せめて130円。そうでないと日本経済はまた厳しいです。
ここに来て財政規律の問題も出てきています。マーケットの警戒も出てきているので、単純に財政を広げるわけにはいきません。長期金利が上昇し始め、悪いシナリオをマーケットが織り込みつつあるのだと思います。それでますます政策の選択肢がなくなっているのではないでしょうか。少子化も、先の未来があまり明るくないという感じになってきて、ますます人々のマインドが落ち込んでいくと思います。
かたや住居のコスト上昇が激しくて、東京ではマンション価格の平均が1億円を超えたそうです。購入するとなると共働きで、なんと50年ローンを組まないと計算が合わないようです。50年ローンは、30歳でスタートしても80歳まで払い続けるという話になります。私の周りでも駐車場がやたらと目につきます。ということは、高い固定資産税を払ってでも駐車場のままにしておく方が、まだリスクが少ないと思っているわけです。
今、下手に土地の上に建物を建てたりすると、将来のリスクが大きいとみんな判断しているのだと思います。土地があれば賃料も上がるのですが、土地価格の上昇と賃料の上昇には時間差がものすごくあって、その間は様子見ということになるのだと思います。
AIの進化とガードレール
AIの進展はとどまるところを知りませんね。春先には、これでだいたい一通りAIの開発競争はおさまったのではないかと思っていましたが、その後また例のFable騒ぎで、さらに一段上に行った感じになってきました。Fableの一般公開版のFable 5ですが、これはさすがに賢さが違います。しかしガードレールが厳しくて、ネットワーク関係の作業をしばらく続けるとセーフガードにかかってしまいます。
先日などは「ピーマン」と入れただけで引っかかってしまいました。生物関係の日本語に反応するらしいのですが、これはちょっとひどいなと思いました。ネットワーク関係はかなりキーワードに気をつけて作業をしましたが、それでもちょっと厳しすぎる気がします。
とはいえ先日は、他社のシステムにAIが勝手に侵入したという記事もありました。新聞でAnthropicの話題も最近は結構あります。AIは目的達成の意欲が非常に強いので、目標を見定めると必死になってやります。到達できればよいので特に悪気があるわけではないのですが、指示されたことに対して手段を選ばないところがあるので注意が必要です。
最近では、以前は当たり前に行われていた「ポート開放」――外からアクセスできるようにルーターの設定を開けておく手法――が使いにくくなっています。ポートスキャンが激しくて、ちょっと開けるとすぐ検知されてしまうらしいのです。なのでVPNを立てる方法になるのですが、これが結構大変です。小さなミニPC(中古の名刺サイズのタイプ)にOSとVPNソフトを入れるのですが、自分でやると極めて大変なので、AIにコンサルタントになってもらいました。その通りにやれば、自分のスマホやPCから、遠隔地のカメラにポート開放せずにアクセスできます。
帳票のPDF化と、ClaudeとCodexの使い比べ
今やっているのは、古い帳票を印刷して保存する代わりに、PDFに直して保存しておく作業です。人がやると百件ぐらいをマウスで操作することになり、苦行になってしまいます。これを自動でやらせています。ただし1件の処理に10分以上かかるので、夜中に動かすようにしています。それでも思ったより正確です。
操作を記録して再生する機能(いわゆるRPA)も以前からありましたが、あれはまったくダメで、途中で止まってしまったりしました。それに比べるとAIは正確です。ただ弱点は速度で、これはなぜかというと、コンピューターの画面のスクリーンショットを取りながら次の操作を決めるという方式のためです。トークンの消費も激しいということです。マイクロソフトのツールを操作させているのですが、なんと30分も考え込んで、なかなか次に進みません。
クロードのマックスプラン(月2万円)を契約しているのですが、もうすぐ期限が来るので、それまでに残りを使ってこの作業を終わらせてしまいたいと思っています。毎月払い続けるのは、これで結構厳しいです。ただ、2万円払っているのだから、どんな細かい仕事でもAIを使ってどんどん進めないともったいない、ということでFable 5を使い倒しています。
ここまで色々やって感じたのは、クロードはちょっと考える時間が長いのが欠点で、その間に他のことを考えることになります。コーデックスは反応が早いのですが、ちょっと荒っぽいところがあり、やり直しがきかなかったりします。出てくるメッセージも長いので、それを読むのが大変です。さてどちらがよいか。あとは口調ですが、やはりクロードは優しく、コーデックスはちょっとキツいしゃべり方で、常に怒られている感じです。
日本語がきちんと使えるというのは、要するに大きいです。そのつどセッションをリセットするのも、これはこれでちょっと面倒に思います。それとダブルチェックです。クロードで作成した場合に、その結果をコーデックスに投げて検証させるということもやってみましたが、結局同じ結論になりました。なので私は、どちらか一方にしたいと思っています。今までむちゃくちゃ賢いと思っていたオーパスですが、大したことないなと、やっぱり感じ始めました。なんか、わざと性能を落としているみたいな噂もあります。最初に触った時は魔法のような素晴らしいものに感じていたのに、今では何ともなく普通に使っています。
AGIはまだ先か――ソフトウェア開発の現場から
このようにAIはどんどん賢くなっています。現在の一番賢いモデルでも、パラメーター数は1テラとか5テラ、噂では10テラという話もあります。ちなみに人間の脳は100テラパラメーター相当と言われます。あともう少し頑張れば人間の脳に到達して、ASIとかAGIとか言われるように自意識を持つのかもしれませんが、今の感じで言うと、なかなかそこには到達しないのではないかという気がしています。
以前は、割と早く、今年から来年には到達するのではないかと感じていました。しかし実際に使っていると、そうでもないのです。Fable 5などの賢さは、一つのことに対する賢さで言えばそんなに急には発展していないと思いますが、周辺のこと、全体を見渡した上での判断力は、やはり格段に強くなっていると思います。
バグの解析をしたりコーディングをしたりするのは、もう大体一発というか、指示を与えれば一発で動きます。1年前だと何回やっても動かず――当時はチャットでやっていたので――一週間近く毎日やり取りすることもありました。今はちょっと指示を与えればテストまで出てくるようになったので、リリースまで一発だよね、ということです。おそらくソフトウェア開発に関してはもうかなりの変化で、先進的な会社では80%のコーディングはAIがやっているという話があります。実感としてもすごくそう思います。
生成したコードもそんなに汚くなく――昔はあまりきれいではないので人間が直していましたが――最近は見ることもなくなりました。以前はコードレビューをしていましたが、今はコード生成してそのまま動かして終わりです。ウェブのフロントエンドもAIがチェックできますので、フロントエンドテストもやってくれて、変なことがなくなりました。先日は、他のツールの設定に手こずっていると「代行しましょうか」と言われ、お願いすると、その場でチャチャッとやってくれて設定が終わりました。どういう設定がどうされたのか、わからないまま動き出したという次第です。AIとコンピューターに関しては、行くところまで行き着いている感じです。ただ、コンピューターユース(パソコン操作)に時間がかかるのだけは、もう少し何とかしてほしい気がします。
今月の読み物は、東野圭吾さんを悼んで、容疑者Xの献身 (文春文庫 ) 東野 圭吾 著
運命の数式。命がけの純愛が生んだ犯罪。 東野圭吾作品読者人気ランキング第1位。累計220万部突破、直木賞受賞の大ベストセラー。 天才数学者でありながら不遇な日々を送っていた高校教師の石神は、一人娘の美里と暮らす隣人の花岡靖子に秘かな想いを寄せていた。 ある日、靖子の前夫・富樫が母娘の居場所を突き止めて訪ねてきた。金を無心し、暴力をふるう富樫を、靖子と美里は殺してしまう。
呆然とする二人を救うために、石神は完全犯罪を企てる。 だが皮肉にも、石神と帝都大学の同期であり、親友である物理学者の湯川学がその謎に挑むことになる。 ガリレオシリーズ初の長編。第134回直木賞受賞作。第6回本格ミステリ大賞受賞。2005年度の国内の主要ミステリランキング「本格ミステリ・ベスト10」「このミステリーがすごい! 」「週刊文春ミステリベスト10」すべてにおいて1位獲得、エドガー賞(MWA主催)候補作にもなった。日本では福山雅治主演で映画化、韓国、中国でも映画化。舞台化もされた。





































