今月のひとこと 2026年3月1日号
アメリカのイラン攻撃と核兵器問題
今朝のニュースで、アメリカがイランを攻撃し、続いてハメネイ最高指導者を殺害したという報道が入ってきました。もともとアメリカはイラン体制の転覆を狙っていたと思われますが、イラクやアフガニスタンでの教訓から、軽率に手を出せばとんでもない事態になるとわかっているはずなので、今後の対応が最大の焦点になると思います。今回の攻撃の最終目的は、イランの核兵器開発を阻止することではないかと考えています。以前に核関連施設への攻撃も行われましたが、それだけでは不十分と判断し、今回の強硬手段に踏み切ったのではないでしょうか。
イスラエルとイランの関係は、日本と北朝鮮の関係に多少似ています。隣国に核兵器が存在することは死活的な脅威であり、それを阻止しようとしたという構図です。日本も北朝鮮の核兵器保有をかつて阻止すべきでしたが、クリントン政権時代にベネズエラ侵攻作戦に似た計画が準備されていたものの、最終的にアメリカ政府によって中止されたと伝えられています。あの時に実行していれば、現在のような北朝鮮の核保有はなかったのではないかと思っています。
アンソロピックと米国防総省の確執
この問題に関連して気になるのが、アンソロピック(Anthropic)と米国防総省(戦争省:最近また名称が変わったようですが)との確執です。前回のベネズエラ関連の作戦でアンソロピックの人工知能「クロード(Claude)」が使われていたことが後から判明し、アンソロピック側は激怒。今回の問題へと発展したという経緯があります。最終的にアメリカ政府はアンソロピックを使用しないとしたようですが、現時点でこの用途に実際に使えるのはクロードしかないというのが実情らしいです。
オープンAI(OpenAI)も選択肢に上がるでしょうが、そもそもオープンAIは2015年の設立当初、このような軍事利用を懸念してわざわざ非営利団体として立ち上げられた経緯があります。ところが2019年に営利部門が設けられ、現在の体制へと移行しました。この方針転換に反対したメンバーがオープンAIを離れ、最終的にアンソロピックを設立したのです。アンソロピックは設立の経緯からして、アメリカ政府の要求に応じることは会社の存亡に関わる問題ととらえており、非常に強硬な姿勢をとっていると思われます。
人工知能の急速な進化と規制の必要性
それにしても、2015年の時点でここまで強力な人工知能が社会に脅威をもたらすと想定していたことは驚異的です。開発者たちも、まさかここまで急速に発展するとは思っていなかったかもしれませんが、ここ最近の進化は目を見張るものがあります。
今や人工知能は、核兵器や毒ガス兵器と同等に取り扱うべき技術になりつつあると思います。高度な人工知能が悪意ある国家や組織の手に渡れば、サイバー攻撃・偽情報の大量生成・自律型兵器の開発など、これまでとは次元の異なる脅威をもたらしかねません。核不拡散条約(NPT)があるように、人工知能についても各国が参加する国際的な規制条約を結ぶ必要があると思います。
ただし、核兵器の場合でもわかるように中国などが枠組みに入らないケースがあり、全世界が足並みをそろえることは容易ではありません。また、人工知能は核兵器と異なり、ソフトウェアである以上、技術そのものの拡散を物理的に防ぐことが難しいという問題もあります。核施設は衛星で監視できますが、モデルのコピーや流出を完全に封じることはほぼ不可能であり、規制の設計自体が非常に難しい課題です。
それでも、かつて核兵器開発に携わった科学者たちが集まって核軍縮を訴えたパグウォッシュ会議の例にならい、人工知能の開発者や研究者が国境を越えて連携し、同様の取り組みを続けていかなければならないと思っています。技術の進歩を止めることはできませんが、その使われ方に対して国際社会が共通の規範を持てるかどうかが、これからの大きな問いになってくるでしょう。
各社モデルの性能向上と実用化の現場
昨年後半から今年にかけての人工知能の性能向上は目覚ましいです。夏ごろはまだ誤りや幻覚(ハルシネーション)が多かったですが、秋から年末にかけて各社から大型モデルが相次いでリリースされ、性能が一気に上がりました。特にグーグルの「ジェミニ(Gemini)3.0」の登場で状況が大きく変わり、チャットGPT(ChatGPT)・ジェミニ3.0・クロードの「オーパス(Opus)4.6」あたりが横並びでトップ水準に達したのではないかと思います。
それぞれに得意分野があり、クロードはソフトウェア開発(コーディング)に優れ、チャットGPTは汎用的な使いやすさに強みがあります。ジェミニはグーグル検索をベースにした情報収集と画像・動画解析に非常に優れており、驚いたのはレシートをビデオで撮影してジェミニに渡すだけで全文テキスト化されたことです。また、洋ランの写真の下に水平に置いた非常にボケた品種ラベルを正確に読み取り、品種名を特定したのには本当に驚かされました。
コーディングの場面でも、プロンプトで仕様を伝えるとほぼ一発で動くコードが生成されるようになりました。以前はエラーの連続で苦労しましたが、最近はほぼ一度で動作します。先日も非常に複雑なWebデータの取得作業を約一時間で完了させることができました。AIに「うまくいったね」と声をかけると、「この開発はなかなかうまくいった」と自ら評価していたのも印象的でした。
個人の作業レベルでは、かつてエクセルのマクロを苦労して組んでいた処理が簡単に自動化できるようになります。パッケージソフトの一部機能しか使っていない場合、その機能だけを自前で作ってしまうことも現実的になってきました。仕様さえ決まれば、コーディング自体は数分で終わる時代です。ただし基礎となるデータの整理や入力は引き続き人間の作業になります。
データの外部流出や学習利用のリスクを考えると、機密情報は社内で処理するか、ローカル動作の大規模言語モデル(ローカルLLM)を使うことが望ましいです。ローカルLLMはまだ高性能なゲーミングPCが必要な段階ですが、あと一年もすればノートPCでかなりの性能が実現するのではないかと思っています。
ヒューマノイドロボットの躍進とAIの未来
最近もう一つ非常に驚いたのは、中国の春節特番のような番組で披露されたユニツリー(Unitree)社製ヒューマノイドロボット約20体による集団演技です。カンフーや踊りを披露したのですが、その身のこなしが人間の体操選手並みで、空中バク転や2回転まで平然とこなします。リモートコントロールだという説もありますが、それにしてもあの俊敏な動作は驚異的です。
従来のヒューマノイドロボットといえばゆっくりぎこちなく動くイメージでしたが、完全に覆されました。自律動作への移行は時間の問題だと思います。ただし自律的に「世界」を認識し行動するには、「物は上から下へ落ちる」「雨は上から降る」といったごく基本的な物理常識をいかに学習させるかが現在の課題になっているようです。
あとビックリしたのは、これらのヒューマノイドロボットがAliexとかアマゾンで売っていると云う事です。 大体200-300万ぐらいの値札がついています。 もっともこれを買っても自律的に動くわけではなくて、リモコンで動かさないといけないと云う事です、 しかしこれか自律的に動いて家事などを手伝ってくれるて自動車1台分の値段なら心が動くのではないでしょうか? 少子化で働き手が減ってもこれを工場で使えばコストダウンにもつながります。 現にヒュンダイは自動車の生産に使う予定だと発表しています。
人工知能の発展と将来の展望
人工知能の発展を振り返ると、スケーリング則(モデル規模を大きくするほど性能が上がる法則)の発見がここまでの急成長を支えてきました。しかし最近は「スケーリング則がそろそろ効かなくなるのではないか」という声も出てきており、それが性能の頭打ち感に表れているかもしれません。それでも汎用人工知能(AGI)の登場については「2-3年以内」という見方が一般的ですが、不確定要素は多いです。
私はずっと技術のシンギュラリティを注視してきました。最初の大きな階段は音声認識の革新であり、現在の大規模言語モデルが二段目だと思っています。三段目がいつ来るかわかりませんが、三段目が来れば全体像が見えてくるのではないでしょうか。
自然界を見ると、クォークが集まって原子になり、原子が集まって分子になり、分子からタンパク質が、タンパク質からDNAや細胞が生まれます。さらに自然選択による進化を経て人間が現れ、自意識が生じました。どこかに劇的な転換点があったわけではなく、量的な積み重ねが質的な変化をもたらし続けてきたのです。
これをAIに当てはめると、トークン数がさらに桁違いに増えたとき何が起きるかは誰にもわかりません。分子レベルでも「自己組織化」という現象があります。ギザギザの金具をたくさん集めてかき混ぜると、勝手に引っかかって一つの塊になります。ある規模を超えると自然に秩序が生まれるという現象がAIにも起きる可能性があり、そのときに自意識に相当するものが芽生えるかもしれないと、私はひそかに思っています。
今回はアンソロピックに敬意を表して、クロードで文章校正しました。
文章はうまいです。







