今月のひとこと2014年7月号





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2014年7月2日
せっかく上昇に転じた株価も力不足で停滞してるようです。 消費税アップでもたいして落ち込まなかったほうがすごいと思います。 政府の成長戦略も中身はもっともですが、サプライズがないので材料にはならないのでしょう。 しばらくは持久戦になりそうです。

集団的自衛権の議論も決着したようで、現政府/自民党のチカラ技がすごいです。 自党だけで無く他党の公明党までねじ伏せた感じです。 しかし世の中は改憲論一色になりましたね。 護憲の人もみんな改憲論者になってしまいました。 しかしよく考えないと行けないのは、要するに改憲と言っても9条のことですが、大概の「普通の」改憲容認論者でも、2項の削除もしくは変更で良くて1項は手つかず、と思っているのではないでしょうか? それが、今回はからずも、そうは行かないことが分かりました。 改憲、特に9条の変更でもそう簡単ではないと思います。 マスコミは、ほとんど報道しませんが、何故でしょうね。 気がついていない? もしくは無視している。

今回の議論で出てきたのは、個別的自衛権と集団的自衛権。 さらに突然出てきて、公明党が大慌てした、集団安全保障。 前2者は、ほぼ議論が終わって憲法の解釈の変更と言うことで決着しましたが、集団安全保障は、解釈では難しいと思います。

憲法は自衛権に関しては明確に書いていないので、解釈が可能で、厳密に言うなら2項の「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」は駄目ですが、すでに自衛隊があり、みんな認めているので実施的には問題にならず、将来の改憲時に修正すれば良いと思いますし、これが大方の認識でしょう。

憲法 第9条の1項には、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」とあり、前段部分は無視するとしても、後段では「国際紛争を解決する手段」としては使ってはならないと、明確に書いてあります。 国連の活動は例外ないしは、国際紛争ではないと言う解釈にするんでしょうか。 もの凄く無理があると思います。

日本帝国憲法つまり明治憲法ですが、これは学校では教えてくれないし、あまり話題にもならないのですが、読んでみました。 これが非常に良く出来ています。 明治憲法に戻せと言う議論も少しは理解できます。 あの明治の時代にこれだけの権利意識がちりばめられているのは驚異としか思えません。 改めて明治の人の気概と能力に脱帽します。

この憲法の最大の欠陥は、軍隊のシビリアンコントロールが出来ていなくて、それで先の大戦に至ったと言う議論があります。 確かにそれさえ入っていて、天皇大権が象徴天皇であれば、現憲法とそんなに違わないと感じました。 それで何でこんな事になっているか? 明治の人々の考えに抜けがあったのか? と少し考えてみましたが、こういうことでした。

当時の政府もしくは政党はまだ成熟していなくて、もし軍を政府の中に置くと、時の政府の思うままに動かされてしまうと言う危惧があったようです。 タイのクーデターを見ていても、軍は独立しています。 中国でも軍は共産党のものであり、政府のものではないようです。 だから中国は戦前の日本と同じ道を歩む危険性がある・・・・ と言う議論も可能です。

明治憲法では政府も軍も天皇に所属していました。 だから軍の暴走は天皇がコントロールする責任があったわけで、立憲君主制で、議会が開戦を決議したら天皇は裁可するしか方法が無いと言うのは昭和天皇の言葉ですが、そこまで言うなら、憲法が規定している天皇の統帥権を発揮して軍の暴走を止めなかったのは、天皇の責任と言うことになります。 軍とくに関東軍の暴走に対しては、天皇よりいろいろ発言があったようですが、結果的にはガバナンスが効いていなかったのは明白です。

憲法の話から急に重力波の話です。 ビッグバン後の宇宙は「インフレーション(膨張)」と呼ばれる急拡大現象が発生したとされていて、今年の3月に、南極の望遠鏡「BICEP2」を使って宇宙創世記から残された重力波を発見したとビックニュースになりました。 しかし、その後、この話はノイズを拡大解釈しただけで、証拠にはならないと言うことになりました。 何しろ重力波はもの凄く弱いので、その残滓を調べるのはさらに難しいことになります。 これが発見されれば、インフレーション理論の提唱者の佐藤勝彦教授のノーベル賞は間違いないと言われていますが、存命の間に発見されることを望みます。

これと同じ話は宇宙の背景放射の発見で、これは文句なしにノーベル賞でした。 これは宇宙の始まりのビックバンの時には宇宙は非常な高温でしたが、その後宇宙が膨張するにつれ冷やされて、ほとんど絶対零度まできているのですが、よく調べると、わずかに残っているのです。 要するに宇宙はほんのりと暖かい。 暖かいのはストーブでも分かるように赤外線です。

赤外線の元は光つまり光子ですが、冷えてくるとどんどん波長が長くなり、発見された現時点では、マイクロ波レベルになっています。 その観測に専用の人工衛星も複数打ち上げられて、背景放射の宇宙のムラが発見され、これと現在の宇宙の構造と一致することが確認されています。 これと同じようなことを、インフレーションでも観測しようと言うことです。 しかし電波と重力波では観測の大変さは格段に違うと思います。

今月の読み物は「人口から読む日本の歴史」 講談社学術文庫 鬼頭 宏著 ¥1,037
現在の住民票にあたると言っても良い江戸時代の「宗門改帳」を元に江戸時代の人口、さらには他の文献で平安時代、弥生時代、縄文時代とそれぞれの時代の人口を元にその文明論まで至る話です。 読む前は、退屈な人口研究の本だと思っていたのですが、下手な小説よりも遙かに面白いです。 自分自身、宗門改帳を見たことがあったので、興味が湧きました。

意外なことに、江戸時代でも近郊農家では、貴重な働き手である女性の結婚時期は意外に遅くて、30歳前ぐらい。 私も以前から不思議に思っていて、自分で見た江戸時代の資料でも27歳とか26歳とがいっぱい出てきたので、たまたまそう言う人の資料を見たのか、と思っていましたが、一般的だったようです。 婚期が遅くなると子供の数も減る。 また裕福な家ほど子供の数は多くて、「貧乏人の子沢山」は当たらないとのこと。

また子供の間引きは常に行われていて、貧しいからと言う理由でもなく、裕福な家でも間引きは行われていたようです。 事の性格上なかなか資料には出てこないようですが、出生間隔とか、男女比率を見ていくとだいたいの傾向は出てくるようです。 適切な避妊知識がなく、堕胎は非常に危険が高いので、間引きにと言う手段で、人口調整を行ったようです。

江戸時代でも、都市部の出生率は低いそうです。 江戸の町は流入人口が多いので規模を維持できましたが、出生率は低いままです。 現在の少子化問題を考える上でも非常に参考になる本でした。

内容紹介
歴史人口学が解明する日本人の生と死の歴史増加と停滞を繰り返す四つの大きな波を経て、一万年にわたり増え続けた日本の人口。そのダイナミズムを分析し、変容を重ねた人びとの暮らしをいきいきと描き出す

★★★(少子化問題を考える上でも、是非読むべし)





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