今月のひとこと2014年8月号

2014年8月2日
やっと株価が上がりそうになったのですが、また落ちてしまい、一進一退の状況です。 出遅れていた電機関連の業績が上がってきたので、それに牽引されているようです。 頼みのアメリカの経済状況は、良いようでもあり悪いようでもあり、しかし量的緩和は着実に収束しつつあります。 やはりアメリカの金融緩和は特に発展途上国への副作用が大きいと言うことでしょうが、ブラジル辺りは、またミニバブル状況です。

日本は遙か以前から、アメリカもこのQE3まで、膨大な金融緩和を行ったので、その副作用はどうなるのかと思っていましたが、これは想定通りに経済バブルを生じさせました。 効果と副作用を天秤にかけると、やはり効果の方が高いと言うことでしょう。 日本の20年近くの金融緩和にしては意外に副作用が出ていないです。 銀行が抱え込んでしまって、国債の形で政府に貫流されて、市中にはあまり出回っていないのでしょう。 これを良いというのか悪いというのかですね。 効果があまりなくて、国の債務残高だけ積み増したカタチになっています。

アベノミックスのおかげで、予想を上回る物価上昇で、民間の見込みはすべて外れて、黒田さんの一人勝ちみたいになっています。 さてこれからどうなるか? 需給ギャップが結構縮まっているので、サプライサイドの強化とインフレ対策が重要になりますが、インフレ期待とは裏腹に長期金利が上がるどころか下がっています。

今や住宅ローンで0.6%は珍しくなくなっていて、量的緩和を終了しつつあるアメリカでも長期金利は上がっていません。 これから急激に上がると言う人も居ますが、ひょっとしたらこのままずーっと低金利のままに行くのではないでしょうか。 物価は上がり、長期金利は上がらないと言う、巨額の国債を抱えた財務省にとっては、理想的なカタチになっていくのでしょうか。

最近では「ニューノーマル」なる言葉が発明されていて、以前もニュー何とかは結局何も新しいことは無かったと言うことになっているので、結局、新しいことは何も無いと言うことになるのでしょうか。 最近の特に長期金利や中国の参加などを見ていると、ひょっとして今回は「ニューノーマル」なのでは? と思ってしまします。 それはいつも裏切られますが。 いずれにしても日米の直近の7-9月期の経済状況が全てを決めると思います。 消費税アップも絡んで、よくよく眺めていきたいと思います。

今日の読売新聞のトップに、家庭用のルーターによるDNSアンプ攻撃で、容易にインターネット接続プロバイダがダウンさせられると言う記事が載りました。 以前から言われていたのですが、ここ数ヶ月でその攻撃が急増したとのことです。 もっとも家庭用ルーターと言っても少し高級なもので、全国で54万台とのとこと。 心配な方は、確認サイトがありますので、ここで確認すると、自分のルーターと接続先のプロバイダのサーバーの両方が該当しているかどうかが確認できます。

新聞記事によれば今年5月末以降、この攻撃による通信障害を明らかにしたプロバイダは、ジュピターテレコム(JCOM東京都千代田区、利用者282万世帯)、ケイ・オプティコム(大阪市150万世帯)、アルテリア・ネットワークス(東京都港区56万世帯)、DTI(渋谷区)などで、昨年8月には、NTTコミュニケーションズ(千代田区)が運営する最大手のOCN(815万世帯)でも、約40分間にわたってネット利用ができなくなった。 とのこと。

この攻撃方法を要約すると、ドメイン名を実際のIPアドレスに変換するDNSサーバーは、インターネットの基本中の基本の機能ですが、このサーバーのキャッシュに大容量でしかも更新期間がやたらと長いエントリーを設定して、この設定元のIPアドレスを偽装して攻撃先のサーバーにしておきます。 ここで新たな問い合わせをDNSサーバーにすると、応答として最初に設定したキャッシュの大容量のデータが、偽装したIPアドレスつまり攻撃先のサーバーに送られる仕掛けです。

少しの問い合わせデータで大量のデータが返信されるので、アンプ(増幅器)と言う名前が付いています。 これを対策がなされていない54万台のルーターの一部でやれば、プロバイダの接続サーバーへの分散DoS(DDoS)攻撃が簡単に出来、機能が停止してネットにアクセスできなくなります。 ウイルスを使って、面倒なBOTを作る必要もないようです。

原因はDNSサーバーを何の制限設定も無しで立ち上げた事に寄ります。 通常は、プロバイダが運営しているので、設定はキチンとされている場合がほどんどですが、家庭用のルーターは盲点になっていて、DNS機能が付いているとは知らずに、何の制限設定もしないで放置されているのが大半で、ここを攻撃手段に使われているようです。

20年以上前からLSIの高密度化の限界について議論されていましたが、今までは、微細化の限界と言うより、電力による発熱の問題が主で微細化は2の次でした。 電力問題も電圧を下げるとかの対策で対応してきましたが、とうとう微細化の究極である原始1個分の配線が可能になるようです。 一つの論文を元にした記事だけなので、本当に可能なのかは良く分かりませんが、少なくとも一つの限界に達したことは間違いないようです。

記事によると、実験ではインジウム・ヒ素半導体の基板を使い、基板表面はインジウム原子が六角形を組んで整然と並ぶ。六角形の中央には穴が開き、走査型トンネル顕微鏡でインジウム原子を詰めたところ、電子の通路ができた。直線3本で交差点も作った。さらに複雑な回路を作れば、極めて集積度が高いLSIが実現でき、光の粒(光子)を出す光源も実現すると期待されているとのこと。

最近では多層化も進展し、10層はざらで、下手なプリント基板顔負けの多層化が実現しているようで、100層ぐらいまでは行けそうです。 微細化と多層化で、半導体はますます高機能・高性能になっていくようです。 そろそろLSIのトランジスタ(ゲート)の数が脳細胞の数とおなじ水準になってきて、コンピュータが自我をもつのかどうかが議論になっています。 しかしどう考えてもいくらトランジスタの数を増やしても自我を持つ気がしません。 一つ一つの脳細胞が、それぞれ一つのコンピュータぐらいの比較をしないと行けないのかも知れませんが、世の中のコンピュータはほとんどがネットで相互接続されていますから、似たような状況は生まれつつありますが、自我をもつ気配はありません。

今月の読み物は、「資本主義の終焉と歴史の危機」集英社新書 水野 和夫著 ¥799
在庫切れで入手するまで1ヶ月以上かかりました。 今回の主題と一致するのですが、この低金利状態をニューノーマル以上に捉えて、資本主義の終焉まで話を持って行ったものです。 出だしの部分は、共感することも多いのですが、途中からやたらと悲観的になってきて、成長否定主義者の榊原さんが推薦に名を連ねているのが段々と分かりました。 ヨーロッパの経済的な歴史を紐解いているのですが、これは水野さんのヨーロッパ時代の研究の結果でしょう。

気になるのは、時間軸の設定。 長期の話をしているのか、短期なのか、長期と言っても100-200年なのか30年程度なのか、その辺ごっちゃに議論されているので納得性が低いと思います。 さらには、資本主義の次の体系は何かと言っても、何もなく、それに備えると言う程度しか無いです。 今の資本主義を延命する努力をしないと言うことですが、その次のビジョンもなくて、現状で何もせずそのままにしておくと言うのは少し無責任ではないかと思います。 いずれにしても、経済学者でも現在の経済状況をどう捉えて良いのか分からないと言うのが本当のところみたいです。

超短期ですが、この7-9月期の状況で少しは方向性が出てくると思っています。

★☆☆(興味のあるひとだけ読むべし)

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