今月のひとこと2006年10月号





「今月のひとこと」の目次 毎月一回はその時々のトピックスをお送りしています。

本家の http://www.masuda.org/ もよろしく
本ページは最小フォントで最適化をしています。マイクロソフトのIEをお使いの方は、「表示」メニューでフォントのサイズを「最小」にしてご覧ください。 絵や写真をクリックすると、そのページに行けます

10月3日
10月号も遅くなってしまいました。 やっと涼しくなってきてやれやれです。 歳とともに暑さ寒さがが身にしみます。 株価も16000円を上限に行ったり来たりです。 アメリカの景気も危ないと言われながら、株価は史上最高値に近くなったりします。 原油はサスガに下がって来ましたが、日本及び英・蘭企業が出資するロシアのサハリン2プロジェクトが急遽キャンセルされるなど、不安要素がまだまだ沢山あります。 中国、北朝鮮、韓国問題でかすんでいるロシアも良く見ておかないと、先日のような北方領土で起きた銃撃事件などは、もっとキチンと対応しておかないといけないと思います。 北朝鮮のミサイル発射で見せた対応が何で出来なかったのか、やはり事前に米国の情報がないと動けないのか、と思います。

日本は既に核を持っている、と思っている国が多いと言う事を聞いた事があります。 核査察を行うIAEAの予算の20%が日本の査察に使われているとの事(よく調べると20%を拠出していると言うことだと思う)。 日本人はともかく、世界の人は日本人がその気になれば、すぐに核兵器を作れると思っているのです。 ミサイルに化けるロケットは固体燃料のものも液体燃料のももあるし、ヨーイドンで始めたら、北朝鮮よりはるかに早く核武装出来るでしょう。 核で脅してくる国に対しては、いざとなったらいつでも準備出来る、と思わせる事も必要でしょう。

そんな物騒な話はこれまでにして、最近見つけてハマった本。 「昆虫-驚異の微小脳」中公新書 水波 誠著 882。 地球上でもっとも成功した生物は人間と昆虫です。 人間は大きくなって、その分肺とか血液とか複雑な循環系を発明し、物凄く大きな脳を持ちました。 おかげでこの地球で60億以上の人口へと成長し、地球の環境自体も変化させようとしています。 他方の昆虫は大きくなる事をアキラメて数と言うか種としての成功を目指して成功しました。 はるか昔には同じ先祖から分かれたのですが、ほとんどの機能がそれぞれの目的に最適になって、例えば目だけでも全く異なる結果となった訳です。

昆虫はまず、外骨格のクチクラと言うものを発明し、これで体を覆う事で、体液の蒸発を防ぎ、体を支えることに成功しました。 またややこしい肺などの循環系は省略して、直接細胞に酸素を与える気管を採用しました。 これらは全て大きくなる事を放棄した成果です。 また小さいために多少ぶつかっても、飛んでいるときに落ちてもたいしたダメージにはならないのです。

ただ生まれてからの成長は必要ですので、さなぎから変態したり、脱皮をしたりします。 しかし、これは苦肉の策で大変なリスクを伴うものです。 良くこの段階で失敗して死んでしまう事も多く、昆虫の設計の中でもっとも弱い点であります。 これは外骨格を採用した事へのリスクとなっていて、完全に覆ってしまって、その上でさらに酸素を摂取すると言う矛盾した設計をしなければならなかった訳です。

「昆虫-驚異の微小脳」は特に昆虫の非常に小さな脳に着目し、この小さな脳が驚くべき情報処理を行っている事を示します。 あの小さな脳で、すばやい飛翔と動きを実現しているのですからビックリします。 今ハヤリのロボットには全くマネが出来ません。 まず蚊のように小さく作る事、それを飛ばす事、当然に姿勢制御をキチンと(しかし大体で)行う事、餌を探す事、それを学習する事。 これをあの大きさで実現している事は、人間の技術も大したことがないと言う事でしょう。 また、昆虫に学ぶ事も多いでしょう。

昆虫の情報処理は一口で言って分散処理になっているみたいです。 複眼や感覚器でフィルタリングして結果だけを脳に送って、脳はニューロコンピュータみたいに(と言うかそのもの)高速でリアルタイム処理を行うのです。 だからあのようなアクロバット飛行が可能になるのです。 ただ処理が完全ではないので、たまにはアチコチぶつかったりするのですが、あんまりダメージにはなりません。

それにしても、あの小さな脳で、我々の最高レベルのロボットを遥かに凌ぐ性能を発揮しています。 完全な自律系で、しかもエネルギーまで自分で探して摂取して、さらに子孫まで残して、その段階で進化をしていくわけですから、全く実現のレベルが異なると言っても良いでしょう。 なんで人間の脳がこんなに大きなのかは、外界地図を作るためではないか、生存のための学習ももっと複雑になるのではないか、と言うのが本書の論点。


小型、軽量、低コスト。1立方ミリメートルにも満たない昆虫たちの小さな脳こそ、情報処理装置の傑作なのだ! 本能行動の神秘に迫る最新生物学の成果を公開。昆虫の繁栄の秘密について、その行動と脳に焦点を当てて解説する。

 6億年以上も前にわれわれと共通の祖先動物から枝分かれしたのちに地球のすみずみにまで適応し、大繁栄をとげている昆虫。昆虫のユニークな姿、形、行動は今や子供だけでなく、大人をもとりこにしている。ところが、昆虫の多様な行動をうみだすのが、たかだか1ミリ四方しかない小さな白い脳だといわれると驚かれるであろう。本書は“微小脳”の名付け親による昆虫の神経行動学の入門書である。
 ファーブルが昆虫記を世に送り出して100年、フリッシュがミツバチのダンスコミュニケーションを発見して50年、今や神経行動学のメスは高次行動をつかさどる微小脳の機能解明へと入りつつある。昆虫が哺乳類にも似た認知能力をもつことが次々と明らかにされ、動物共通の神経原理を追求するのに格好のモデルとなりえることが示される一方で、微小脳の構造は複雑で、一筋縄でいかない部分も垣間みえる。本書ではバッタの飛翔のようにそのしくみを単一神経細胞のレベルで理解できる行動から、ゴキブリの場所学習、ミツバチやチョウの視覚認知に至るまで研究のトレンドが余すことなく解説される。日本の神経行動学者の奮闘ぶりをみて頂きたい。
 ポケットブックにしては図が多く、キーワードやキーフレーズが太字で示されていることから、流し読みでも十分楽しめる。また、たとえ話、こぼれ話が満載で、科学読み物としても楽しい。本書は高校生物程度の知識があれば十分に楽しめる内容となっているが、とくに動物行動のしくみに興味のある方、将来神経科学者を志す大学生に一読を薦めたい。読み終える頃には昆虫もわれわれと同じ“地球のなかまたち”として親近感を覚えるのか、それともその卓越した能力に怖れを抱くのか、読者自身で感じとって頂きたい。【書評より】
 





</BODY>
</HTML>

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください