今月のひとこと2006年9月号





「今月のひとこと」の目次 毎月一回はその時々のトピックスをお送りしています。

本家の http://www.masuda.org/ もよろしく
本ページは最小フォントで最適化をしています。マイクロソフトのIEをお使いの方は、「表示」メニューでフォントのサイズを「最小」にしてご覧ください。 絵や写真をクリックすると、そのページに行けます

9月5日
とうとう冥王星が惑星ではなくなりました。 確かに天文学的には、変な軌道を描いているし、月よりも小さいし、どう見ても変な惑星でしたが、遠くにあるのでしょうがないかと言うところだったのですが、他にもっと大きなものが見つかって、とうとう格下げになりました。 それにしても名前が良かったですね。 一番遠くに有って冥王とはよく付けたものです。

火星の運河の予測で有名なパーシバル・ローウェル20世紀初頭に、天王星と海王星の軌道のずれから、未知の惑星があると予測してから、探索が始まりました。 その後、探索はトンボーに引き継がれて、トンボー天体写真を別々に日に2枚撮って、それを比較すると言う方法で、ローウェルの予測した場所に、1年もしないうちに冥王星を発見したのでした。 惑星はわずかに動いていて、背景の恒星は動かないので写真を比較すると判定できるのです。 しかし発見された冥王星は小さすぎてローウェルが予測したような軌道のズレを生じさせないと言う事が分かりました。 私も、ローウェルの逸話を何となく知っていたので、冥王星はさぞかし大きな天体だろうと言う印象をずっと持っていました。 結局ローウェルの計算は間違っていて、トンボーが発見したのは偶然だったと言う事が分かっています。 他にも似たような天体は沢山あるので、他の天体が見つかっていても、それが冥王星だと言う事になったのでしょう。

地球の月は、はるかに大きなもので、私はこの月が絶妙の大きさで絶妙の距離にあることが、生命体それも高等生命が誕生する原因になったのでは、と思っています。 大きな月のおかげで大きな潮の満ち引きがあり、これが生命の進化を促す事になったのでは無いでしょうか? また、日食で示されるように、太陽と月の見かけの大きさがほとんど等しいと言う事は、いろんな意味で特殊ではなかろうか、と思います。 いわば地球は選ばれた惑星だ思います。 ほとんど見かけの大きさが同じなのは、少し月が近くて小さく見えると、日食は金環食になって、周りの太陽がはみ出て見えるのです。 同じく遠いと完全な日食になります。 ちなみに次回の金環食は、2009年1月26日に東南アジアで見えるものです

冥王星の降格で笑ってしまったのは占星術。 記者から聞かれて、冥王星の影響は徐々に弱まっていきます、とは笑ってしまった。 冥王星の発見以前の占星術はどうなっていたんでしょうね? 占星術ではないのですが、以前は惑星直列で何かが起きるとかで、本当は惑星の重力の影響なんかはほとんど影響が無いのですが。 月とか太陽の影響がほとんどです。 あれだけの海水が持ち上げられるんですから。

ちなみに、月に面した部分の海水が持ち上がるのは分かるのですが、その反対側の海水も持ち上がるのは、イマイチ良く分かりませんでしたが、これは高校の物理で習った潮汐力というもので、重力による軌道上の速度が距離によって変化しますが、地球のような大きさがあるものでは、全体が一体で動きますから、軌道の両側に引っ張る力が働くのです。 非常に大きな重力を持つ中性子星やブラックホールの周りでは、潮汐力が働いて、近づくと引き離す力が働いてバラバラになってしまうと言うSFが良く有ります。

8月のもう一つの話題はデルのノート型パソコンのソニー製バッテリのリコール問題でしょう。 410万個のバッテリをリコールし、これに必要なコストは200億円とも400億円とも言われています。 デルとソニーがどのようにこれを負担していくのか注目されるところです。 特にデルは業績も悪化しており、今後目を離せません。 更にアップルも180万個のソニー製のバッテリのリコールを発表し、大規模ではないものの問題は文字通りくすぶり続けています。 基本的な問題はバッテリの製造中に金属片が混入したとの事で、出荷時の検査にも引っかからず、動作時にもシャットダウンせず、発火すると言うのは、何十億個も作っているといくつかはあっても不思議ではないでしょう。 死に至る事故はまだおきていないのですが、今年の6月のデル製のパソコンの爆発事故とは大きく報道されました。

いずれにしても、充電されたバッテリはエネルギーの塊ですから、危険と言えば物凄く危険と思います。 いつもノートパソコンが熱くなるので、このエネルギーが一度に発生したら爆発するなー、といつも思っています。 これに根本的な解決を与えるのが燃料電池です。 燃料電池は電気を貯めているのではなくて、必要に応じて発電するので、安全だと思います。 発電の元の燃料はアルコールや水素のように、多少は危険ですが、すぐに爆発するものではないでしょう。 いずれにしても、ガソリンやLPGのようにエネルギーを取り出せるような、活性のものは、多かれ少なかれ危険だと言う事です。

今月の読み物は、冥王星の本は良く知りませんが、重力の話が出てきたので、インテグラルツリー。 ラリイ・ニーヴン著 小隅 黎訳 504 早川書房 文庫/387p 1986.11発行。 どうも現状では入手が出来ないようです。 古本屋さんで見かけたら入手ください。 非常に強い重力を持つ天体の周りに空気があって、しかも衛星軌道上を回る事が出来たとして、潮汐力によって軌道と直角方向に伸びた樹木の上で暮らす人々の話です。 樹木の上下は風を切りますから、上下に生えた 葉っぱは反対側に風に押し流されて、全体に積分のインテグラル(∫)の形をしています。真ん中は重力ゼロで、上や下に行くとその方向に潮汐力で、重力が発生するのです。 この発想がなかなか面白い。 ラリイ・ニーブンのSFには、空中に浮いた話が多くあります。 有名なのはリングワールド。 地球の軌道ぐらいの大きさにリング状の構造物の上でいろんなことが起きます。 昼夜を作るためのスクリーンを張るとか、その支えのロープの強度とか、リング状の構造物の強度とか、下に穴を開けて飛び出すだけで宇宙に出れるとか、着陸するためにはリングと同じ速度に合わせないといけないとか、リング物理学も生まれました。 他に悪魔のハンマーとか、私好みのハードSFです。 ニーブンを読んで一時重力を忘れてみませんか。

中性子星ヴォイの周囲をめぐる直径数万キロの濃密な大気の輪〈スモーク・リング〉は、奇怪な動植物にあふれた、自由落下状態の楽園だった。なかを漂う巨大な積分記号形の樹“インテグラル・ツリー”では、地球からやってきた播種ラム・シップの乗員の末裔たちが、牧歌的な暮らしを営んでいる。だかそのクィン一族に、いま飢饉の恐怖が忍びよろうとしていた。新たな食料を見つけて一族を救うべく、壮大な旅に出た若者たちが遭遇したものは?ハードSFの巨匠が『リングワールド』にまさるとも劣らぬ魅力的でカラフルな世界をみごとに創造し、ファンを熱狂させた最新SF!ローカス賞受賞。






このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください