暑い夏も終わりに近づいて、やっと少し涼しくなってきました。 加計問題にかまけている間に、東アジア情勢は風雲急を告げて、とうとうミサイルが日本を超えました。 いろいろな情報をまとめると、どうも今回の発射は、最終段階で失敗したようです。 本来は距離的にグアムに届く所に発射したようですが、少しショートして短くなったようです。
しかし計画はそうであっても、発射の段階でアメリカの反応を考えて、少し短くしたと言う可能性も残っていると思います。 それにしても金正恩はしっかりしている。 オーラも出てきた。 北朝鮮はすぐに崩壊すると言った評論家は何処に行った? 金正恩を選んだ北朝鮮政府の上層部の選択眼はしっかりしていたと言うことです。
このミサイル発射状況下での経済七不思議の最大のモノは、日本が危機にあったにも関わらず円が上昇したと言う事です。 サスガに株式は下落しましたが、すぐに元に戻りました。 ミサイル発射と言うことで、これは円が下落すると思ったのですが、有事の円買いは当事国になってもその通りだったと言うことでしょうか。
いずれにしても円が常に高めに振れるのは、基本的には日本の経常収支が黒字だと言うことです。 政府債務が巨大だと言うことで円暴落を予想する人が居ますが、これは日本が経常収支黒字で、しかも世界最大の債権国だと言うことを忘れているのだと思います。 政府はなるほど財政赤字を抱えていますが、日本の国全体としては黒字国で、政府の財政赤字を日本国内で相殺しても、日本国としては黒字のままのピカピカの国のままです。
ちなみにアメリカは世界最大の債務国で、国としても借金まみれで、通常の国ならとっくにデフォルトを起こしていると思いますが、最強の基軸通貨であるドルの発行権を持っているために、それでも平気です。 もっとも政府の財政赤字は深刻で、アメリカの国債は上限が法律で定まっており、これを毎年法律を作って更新しているのですが、これが9月に再び上限に達します。 現時点ではマーケットは楽観的で、過去にも例があってギリギリのところで、法案が成立したのですが、今回のトランプ政権では民主党が反対を崩さず、民主党の一部の賛成が無いと成立しないようで、9月末が近づくと状況は混沌としてくるかも知れません。
通貨発行権を持つ国の赤字と言う点では、一ランク規模が小さくなりますが、日本の国としての赤字と政府の赤字も、アメリカの世界とアメリカの国との対比で似たようになります。 アメリカが世界に対して赤字でも平気なのは、日本政府が日本国に対して赤字が平気なのと似ています。 財務省は財政均衡主義なので、どうもこの日本政府と日本国の区別を意図的に曖昧にして居ると思いますし、特に家計との対比はまったくのミスリードになっていると思います。 先日の日経新聞の大機小機欄で、遅ればせながらの指摘がありました。
今月の読み物は、応仁の乱 – 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書) 呉座 勇一著
オススメ度 ★★★ 是非読むべし
京都で先の大戦と言うと応仁の乱。 太平洋戦争では焼けなかった京都も応仁の乱では丸焼けに。 特に上京は戦場になったので、ほとんど丸焼けになったようです。 何しろ登場人物が多いので、名前を覚えるだけで大変ですが、やっと読みました。 少し予備知識がないと、学校で教わっただけではなかなか読めないです。 私は録画したのを見ましたが、探すとYoutubeにありました。
基本的に京都と河内が舞台なのですが、主役の一人の畑山政長の墓が大阪平野にあります。 以前に行ったことがあるので、写真を引っ張り出しましたが、当時はあまり応仁の乱に興味がなかったので失念していました。 墓と言っても、住宅地の真ん中にあって、非常に行きにくいし、草ぼうぼうだし、何の変哲も無い五輪塔だし、本当かな、と当時から思っていましたが、どうも本当らしいです。 墓地の一角にある『乃木将軍景仰碑』は3m以上はある大きな石碑で、何でも畠山政長の軍師であった佐々木源次左衛門清高の子孫が乃木希典であるらしい。 それにしても墓地はみすぼらしい。
【以下引用】
成功例の少ない「応仁の乱」で18万部。日本史研究に新たなスター誕生か。
日本史上の大トピックとされていながらも、全体像を捉え難い「応仁の乱」。そんな題材を、既成史観の図式に頼ることなく、絶妙なバランス感覚で丁寧に整理した新書がヒットしている。NHK大河ドラマの歴代最低視聴率記録を長年保持していた『花の乱』(1994年)を始め、「応仁の乱」を扱ったものに成功例は少ないので、異例の現象だ。
「『応仁の乱』をテーマに選んだのは著者ご本人です。地味かもしれませんが名前を知らない日本人はおらず、そういう意味では歩留まりがよい。大ヒットはしないまでも絶対に失敗はしないテーマという認識でした。中公新書は『歴史ものに強い』というアドバンテージもありますし後は“著者力”で突破だ、と」(担当編集者の並木光晴さん)
古くは網野善彦さん、近年では磯田道史さんなど、日本史研究者には、時に、学識の確かさと読み物としての面白さを両立させるスター学者が登場する。36歳とまだ若い本書の著者は、次代の有望株だ。
「扱う題材の全体像をはっきりと理解し、その上で、読者に伝える情報を取捨選択できる。30代半ばでのこの筆力には、とても驚かされました」(並木さん)
中公新書の主な読者層は50代以上。しかし本書の売れ行きの初速はネットなどと親和性がある30代・40代が支え、そこから高年齢層に支持が広がった。これは、新たなスター誕生の瞬間かもしれない。
評者:前田 久 (週刊文春 2017.3.2号掲載)
だらだらと続く大乱
小学校の教科書で紹介されていることもあってか、「応仁の乱」の知名度は高い。しかし、それがどのような戦乱だったのかと問われると、多くの日本人が口ごもる。室町後期に京都でおきた……戦国時代のきっかけとなった……諸大名入り乱れての……。
呉座勇一『応仁の乱』は、ほとんどの日本人が実態を知らないこの大乱を、最新の研究成果をふまえながら実証的に検証してみせる。さらには、同時代に生きた興福寺の2人の高僧(経覚と尋尊)が遺した日記を通じて、戦乱に巻きこまれた人々の生態を描いている。それらの合間に、気鋭の中世史学者ならではの自説も展開する。いたって学術的な内容なのだが、構成の巧さと呉座の筆力によって最後まで読ませる。
しかし、全体としては、やはりよくわからない。それは決して呉座の責任ではなく、この戦乱が結果的に大乱になってしまっただけで、発端の当事者(細川勝元と山名宗全)たちも、短期に決着するとふんでいたからだ。それがいつしか、両氏が多数の大名を引きこんだために、諸大名の目的が錯綜して、将軍も大将もコントロールできなくなっていき、京都だけでなく各地で戦闘がくり返され、だらだらと終結まで11年もかかってしまったのだ。しかも、戦後処理まで判然としないのだから、応仁の乱はよくわからない。
大義名分に乏しいだらだらと続いた応仁の乱は、第1次世界大戦に類似していると呉座は説く。結果的に諸国に新たなパワーバランスを生みだすことになる、地味な大乱。ひょっとしたら今、私たちもそんな混沌の時代を生きているのかもしれない。
評者:長薗安浩 (週刊朝日 掲載)