ニデックに見る「業績至上主義」の落とし穴
永守会長の流儀と、気になっていたこと
京都関係者として、今回まず取り上げなければならないのはニデック(旧・日本電産)の問題です。永守会長とはそれほど親しい間柄ではありませんが、何度かお話を聞かせていただく機会がありました。当時から、コンプライアンス意識が非常に緩いという印象を持っていました。
一方で、会社の知名度向上に強いこだわりをお持ちだったことはよく覚えています。「日本電産という名前がまだ知られていない」と非常に気にされていて、「天橋立大学というような名前の大学があっても誰も来ないだろう、日本電産も同じだ」と話されていたことがあります。後に京都学園大学を「京都先端科学大学」に改名されましたが、あれはそのころから温めていた構想だったのだと思います。
M&Aで規模を着実に拡大し、買収した会社はすぐに見れば伸びるかどうかわかるとおっしゃっていました。ある程度のベースがある会社のV字回復は、やり方によっては決して難しくないと私も思います。ゼロから立ち上げるベンチャーとは根本的に違い、人事・財務などの基本インフラはすでに存在しているからです。
ただ、気になる点もありました。100円の伝票まで自分で決済するとおっしゃっていましたが、さすがにそれは全部は難しいのではないかと感じていました。また、「365日働く、なぜなら初詣は午前中に終わるから昼からは出社する」と公言されていた時期もありました。働き方改革の流れの中でさすがにそれは控えるようになりましたが、当時のそういった雰囲気が組織全体の文化として染み込んでいたのではないかとも思います。
プレッシャーと不正の連鎖
業績に対して過大なプレッシャーをかけると、どうしても違法な方向へ傾いていくことがあります。東芝の不正会計問題も根本は同じ構造でした。あれほど大きなプレッシャーがあれば、事業部長クラスの幹部自らが不正に手を染めてしまう——そういう事態が生じてしまうのです。
定時の30分前に出社させる規則を設けて強制したという話は、今でもよく覚えています。これは明らかに労働基準法違反です。それに抵抗する社員が駐車場で定時まで待っていると、わざわざ出向いて「出てこい」と言いに行ったというエピソードも耳にしました。そういった文化が長年にわたって積み重なり、今日の問題として表面化してきたのだと思います。
もう少し大きな話になると、何が正しくて何が悪いのかわからなくなってくる場合もあります。最近で言えば、エヌビディアとオープンAIとの間の取引がその例として挙げられることがあります。エヌビディアが数百兆円を出資する代わりに自社の半導体を購入させる——これは一種の循環取引ではないかという指摘がありました。企業の規模が大きくなるほど、グレーゾーンの判断は難しくなります。コンプライアンスの問題は、規模の大小を問わず、経営者が常に意識し続けなければならない課題だと改めて感じます。
AIの「賢さ競争」は終わりに近づいている
エージェント化という次のステージ
過去半年、とくに昨年末にかけてAIは目覚ましく進歩しました。「賢さ」という点では、現在のスケーリング則(規模を拡大すると、性能が比例する)が到達できる水準にほぼ達したのではないかと感じています。そのため、最近の動向はエージェント型の活用へと移行しつつあります。
私自身が使っているCodexは自律性が高く、コードを書いてテストし、エラーが出れば修正してまた動かす——という一連の作業を自動で繰り返してくれます。以前のチャット形式では出力されたコードをコピー&ペーストして自分でテストする手間がありましたが、エージェント型ではローカルPCのファイルを直接操作して検証まで行います。
事務作業においても同様のことが可能になりつつあり、ファイル名を変えたり内容を更新したり整理したりといった日常的な作業を自動化できるようになってきています。ただしローカルファイルを操作するだけに、他のファイルを誤って壊す危険もありますので、最終的には人間がテストする必要があります。
NotebookLMと30年分の日記
最近試して面白かったのが、GoogleのNotebookLMです。これは自分専用のLLMを手軽に構築できるツールで、自分の持っているデータを読み込ませてその上で質問するというものです。私は30年分のデジタル日記を丸ごと読み込ませてみたところ、過去の出来事を面白いように再現してくれました。バラバラに書き散らした記録も、関連する話題をまとめて引き出してくれるのは大変助かります。
通常の日記検索と違って、曖昧な言葉でも関連する記録を幅広くヒットさせてくれる点が優れています。しかも無料で、かなりの数のファイルをアップロードしても使えてスマートフォンからもアクセスできます。ちょっと昔のことを思い出したいとき、サッと調べられるのはなかなか便利です。ただし、ハルシネーション(でたらめな情報の生成)が多めで、別の話をごちゃ混ぜにしていることがよくありますので、厳密な用途には向かないと感じています。
ClaudeチャットとClaude Code、そしてClaude Coworkの違い
最近、Claudeのチャット・Claude Code・Claude Coworkの違いについて面白いYouTube動画を見ました。要するに根本にあるLLMはひとつで、ただ三つの入り口から見ているに過ぎないという話でした。動画の中でClaudeにこの質問を直接ぶつけてみたところ、Claudeチャットの回答もなかなか苦労して答えを出しているような様子でしたが、基本的にはLLMはひとつで、三つの入り口それぞれに「味付け」が施されているということのようです。
まずClaudeチャットは、文字どおりチャットに特化した軽めの返答が得意で、日常的な質問や文章の作成・要約といった用途に向いています。コードを書くこともできますし、長い文章の読み込みにも対応していますが、どちらかといえば会話の流れに沿って手軽に使うためのインターフェースです。使用するトークン数が比較的少ないため、上限に達しにくいという特徴もあります。
次にClaude Codeは、コマンドライン上で動くエンジニア向けのツールです。自律性が高く、コードを書いてテストし、エラーが出れば修正してまた動かすという一連の作業をほぼ自動で繰り返してくれます。ローカルPCのファイルを直接操作するため、チャット形式のようにコードをコピー&ペーストする手間がなく、大規模なプログラムを開発するときに特に力を発揮します。その分、消費するトークン数はかなり多くなりますので、有料プランでも上限に達することがあるのは注意が必要です。
そしてClaude Coworkは、エンジニアでない一般のユーザーでも使えるように設計された、デスクトップ上のファイル管理や業務自動化を担うツールです。ローカルPCのファイルの概念をそのまま活かしながら、ファイル名の変更・整理・内容の更新といった日常的な作業を自動化できます。コマンドラインの知識がなくても扱えるように設計されているところが、Claude Codeとの大きな違いです。プログラミングというよりも、日々のオフィス作業をどれだけ効率化できるかという観点で活用が広がっています。
三者をざっくりまとめると、チャットは「話しかける入り口」、Claude Codeは「コードを書かせる工房」、Claude Workは「日常業務を任せる秘書」といった味付けがされていて、それぞれ最適のトークンが使われるようです。 同じLLMを使いながらも、それぞれの用途に合わせた使い勝手の差は確かに存在しますので、目的に応じて使い分けていくのがよいと思います
AIをどう「使いこなす」かが問われる時代へ
個人から組織全体へ
AIの賢さを競う時代は過ぎ、今は社会でどう活用するかに力点が移っています。個人レベルでの試行錯誤は着実に進んでいますが、会社や組織全体で使っていくためには、セキュリティのルール整備、導入するツールの選定、従業員の運用方針など、考えるべきことが山積みです。
企業が扱うデータには機密情報が含まれており、そう簡単に外部クラウドへ預けることはできません。社内でLLMを立ち上げるには相応のコストがかかりますし、クラウドを使う場合はセキュリティをどう担保するかが課題となります。さらには、担当者が専門家に頼らずとも自力で日常業務を自動化できるような仕組みをどう作るか——そういったところにだんだん力点が移ってきているように思います。パソコンが職場に初めて導入された頃と同じように、今まさに「どう使うか」を試行錯誤している段階なのでしょう。
スケーリング則の限界と日本のLLM
一方でAGI(汎用人工知能)を目指す動きも続いていますが、現在のスケーリング則——モデルを大きくするほど性能が上がる法則——がそろそろ限界に近づいているという声もちらほら聞こえてきます。膨大な電力消費を伴いながら成長してきたAIですが、どこかで頭打ちになるのではないかという気がしてなりません。来年・再来年という近い将来にAGIが実現するという見方もありますが、スケーリング則の限界が先に来るとすれば、話は変わってくるかもしれません。
それよりも気になるのは、日本独自のLLMがほとんどないことです。先日、楽天が発表したモデルも結局DeepSeekをベースにしていることが明らかになり、少し残念に思いました。スクラッチで一から開発するのは現実的ではないでしょうが、オープンソースのモデルを上手く活用しながら日本語化・チューニングしていくのが現実的な道筋ではないかと思います。全世界のデジタルコンテンツに占める日本語の割合が数パーセントに過ぎないという現実も踏まえ、学習データをどう充実させていくかが日本のLLMにとっての根本的な課題です。
今月の読み物 「じんかん」 今村 翔吾 著
今回は 戦国三大梟雄のひとりである 松永秀久(弾正)主役です。 信長に先立つ 日本 統一の 一番近いところにいた 三好長慶の家臣から大名へとのし上がった武将です。主家を凌ぐ実力を持ち、主殺し、将軍殺し、東大寺大仏殿焼失の三悪を成し遂げたという伝説から斎藤道三、宇喜多直家 と共に「戦国三大梟雄」と称されています。 一方茶人としても名高く、最期は名器「平蜘蛛」とともに信貴山城で爆死(自害)したという逸話で有名です。 また 短気な 信長を二度も 裏切って、しかも咎を受けずに いたというのも不思議な話です。
居城にしていた多門山城は 奈良市市街の少し北にあり、現在は学校の敷地になっておりました。 信貴山中にある信貴山城は 意外に遺構が残っており 登るのは結構大変ですが、当時を彷彿とさせる土塁がたくさん残っています。
【Amazonの書評から】
仕えた主人を殺し、天下の将軍を暗殺し、東大寺の大仏殿を焼き尽くすーー。
民を想い、民を信じ、正義を貫こうとした」青年武将は、なぜ稀代の悪人となったか?
時は天正五年(1577年)。ある晩、天下統一に邁進する織田信長のもとへ急報が。信長に忠誠を尽くしていたはずの松永久秀が、二度目の謀叛を企てたという。前代未聞の事態を前に、主君の勘気に怯える伝聞役の小姓・狩野又九郎。だが、意外にも信長は、笑みを浮かべた。やがて信長は、かつて久秀と語り明かしたときに直接聞いたという壮絶な半生を語り出す。
貧困、不正、暴力…。『童の神』で直木賞候補となった今最も人気の若手歴史作家が、この世の不条理に抗う人すべてへ捧ぐ、圧巻の歴史巨編!









