今月のひとこと 2007年7月号

7月1日

やっと株価が上向いてきたようですが、こう言うときには下落の心配をしないといけませんね。 いずれにしても個人投資家が多くなったせいか、少し上がると利益確定売りと言うのが出てきて下落します。 また、日本の株価は世界的に見ると、割高なものが多いので、その点でも上値は重いようです。 前回の本欄を書いているときに、上海市場が8%ほどダウンして、ヒヤッとしましたが、何と言うことも無く、ニュースの見間違いだったのか、と思いましたがやはり下落はあったようです。 しかし今回は3月と異なって影響はほとんど無かったようで、 中国の株式市場はほとんど国外からは入れませんので、影響は無いのでしょう。 しかしそれも来年のオリンピックまでと言う話が多く、 いずれは下落して、そのショックが世界的な影響が出るでしょう。 まあ長期金利も上がってきましたから、親方日の丸の国債でも買っておきましょうか。 税金が高いの何のと言う前にキッチリ国債で取り戻しておきましょう。

将来のことを言うと、特に日本はダブルでお先真っ暗ですね。 地球温暖化と少子化。 どっちもあと20年ほどすると、その影響がモロに出てくるでしょう。 だいだいこう言う話は、裏があって、実際には誰かが手を打ったり、状況が変化して、問題にならない事が多いものです。 例えば、石油が30年で無くなる、とか日本の経済が沈没するとか、の類です。 しかし、温暖化と少子化は、そう言う状況の変化では、どうしようも無いものなので、ますます深刻です。

地球温暖化について言えば、その原因が炭酸ガスであろうと無かろうと、南極の氷が融けて海水面があがるかどうかに関わらず、現に温暖化していて、しかもその温暖化速度が地球始まって以来の速度で変化していることは間違いないようです。 地球の過去にはもっと暖かかった時代もあったようですが、その変化は万年オーダーのゆっくりしたもので、現在の温暖化は100年単位ですから、その影響は計り知れません。 こう言う急激な変化では、温暖化すれば農作物の収穫が多くなって、良い面もあると言うような楽観的な事では済まないようです。 まあ自分が生きているうちには多少日本が熱帯化する程度でしょうが、その次の世代には確実にもっと大きな影響が出てくるでしょう。

また、少子化について言えば、20年後の成人は、今日すでに生まれた赤ん坊です。 当然ですがこれは増えようがありません。 また来年生まれる赤ん坊の数もそんなに急に増えるものではありません。 従って、現状で物凄く有効な少子化対策を打ち出しても、その効果が出るには、20年はもちろん、50年以上かかるのではないでしょうか? また、たとえ出生率が急激に上がっても、子供が成人するまでの非生産者としての負担が現役世代にのしかかって来ます。

少子化は、温暖化に比べて対策はしやすいでしょう。 ここ数十年の対策は、外国人労働者の受け入れと、高齢者の就労です。 アメリカのように移民を受け入れて、外国人労働者を増やさないといけません。 アメリカはしっかりしていて、グリーンカードを発行して、就労を認めるとともに、税金や年金の負担を求めます。 反面、選挙権はありません。 税金はともかく、大騒ぎしている年金制度を根本的に改革して、当面は外国人に支えてもらおうではありませんか。 また、高齢者の就労を阻害しているのも年金制度です。

悪名高いパート103万円の壁のように、多少給与をもらっただけで、年金が全部パーになるのです。 年金が保険的であるのか、税金的であるのかはさておいても、まともに働くとペナルティーがあると言うのはどう考えてもおかしいと思います。 要するに現状の年金制度では、60歳もしくは65歳であとは働くな、と言っているのと同じなのです。 他方で人が足りない、少子化だと騒いでいるのが現状でしょう。

働くと言う観点からすると、現状の年金の問題は、給与所得者だけが年金をもらえなくなる(延期ではない)、他の所得ならいくら貰っても、年金はもらえる。 しかも、給与所得ならさらに年金の掛け金を支払い続けないといけないと、ダブルのマイナス効果があります。 沢山払ったからと言って、年金の支給額が増えるわけではありません。 ここまでして給与を貰って働きたいと言う人は余程奇特な人としか言いようがありませんね。

年金と言えば、5000万件の宙ぶらりんの年金記録問題。 これは現状でコンピュータに入っているものだけで、入っていないのがまた発見されているようですが、他にもあるはず。 この5000万件にしても、元々2億件あったものを、延々と10年以上かかって少しずつ名寄せをしてきたもので、そう簡単にソフトを作ったら解決できるものではないでしょう。 一説には、担当のNTTデータと日立SSの社長が呼ばれて、1年で何とかせー、と言われただけとか。 恐らく1件1件人間がチェックしないと、名寄せソフトで処理できるとは思えません。 なにしろ、元データが不完全な名前の読み、怪しい性別、嘘が含まれている生年月日しかないので、名前の読みの揺らぎ辞書を作って、それで候補を挙げるのがせいぜいではないでしょうか。 1年で何とかなると言うのは、選挙対策としか思えません。 ITオンチの臭いがして、いつかの偽メール問題を思い出しました。

また一説では、オリジナル帳簿があるのなら、えいやともう一度入れなおした方が早いのではないか、と言う話もあり、私もその方が結局トータルコストは安く付くような気がします。郵送や処理に200円/件かかるとすると、100億で終わります。 がんばって1人が1日250件の処理をするとすると、1ヶ月で5000件。 1年で5万件とすると、1000人居れば1年で片が付く勘定になります。 交代をいれても2000人集めれば何とかなるでしょう。 今なら漢字でそのまま入りますし、コンピュータで機械的にカタカナに直せば、検索も間違いがありません。

結局、これで儲かるのは、ITゼネコンと化した、上記の会社ではないでしょうか? 一説では、現状の社会保険庁のシステムの運用に、年当り900億円も支出されていて、しかも入札はもちろん契約書もロクに無いと言うことで、どんどん泥沼になってきています。 150兆の積立金に比べたら、こんなお金は誤差に見えるのでしょう。 まあ国にお金の管理をしろと言うほうがおかしくて、30年前の領収書がないと言っていますが、それもおかしい。 金券と同じだと思って、しっかり持っておくべきです。 国債や株券を捨ててしまわないのと同じです。

最後に、良い悪いは別にして、社会保険庁の論理がありますので、それを紹介しておきましょう。 まず、支払ったことの立証責任が支払者側にあるかと言うと、制度を作った時に参考にしたヨーロッパの制度がこうなっていたので、事務処理を減らすために支払者に証明させるようになったようです。 従って、社会保険庁のデータベースはいわば確認のためだけで、そんなに厳密性を要求されていなかったのです。 ちなみに年金受給を申請するのは、裁定と言います。 要するに両者で交渉して金額を決めるのです。 裁定は英語でArbitration、もう一度日本語になおすと、仲裁となります。 社会保険庁はけしからんのですが、こう言う論理で動いてきたので、当然といえば当然。 しょうがないと言えばしょうがないのです。 せめて前回の年金制度改革の時にキチンとやっておけばこのような事にはならなかったと思います。

社会保険庁の解体について一言。 確かに一度全員解雇して、やり直すのは良いのですが、独立行政法人にするとますます見えなくなる。 民間と言っても競合があるわけでもないので、ガバナンスが発揮される保証はどこにもありません。 単に民営にすれば問題がなくなるのではなくて、正当な競合がなければ、談合の世界に入ってしまって、余計に中が見えなくなると思います。 郵政の時と同じで、問題は150兆円も積み立てがあることに原因があると思います。

今月の読み物は、紙面が無くなって、ほとんどタイトルだけです。「超」リタイア術 (新潮文庫) 野口 悠紀雄 \500税込。 タイトルよりは面白い。 江戸時代の再認識と年金の問題点が良く分かります。

内容(「BOOK」データベースより)

「リタイア=将来のために現在を犠牲にする時代を卒業すること」―。高齢化が加速する中、年金制度は抜本改革にまだ遠い。そんなこれからの日本でアナタはどう生きますか?時間的にも経済的にも余裕が生まれ、知力充実した退職後こそ、本当の自己実現は可能なはず。複雑な年金や税のしくみをわかりやすく解説しながら、人生最高のステージを迎えるための鉄則を野口教授が徹底指南。


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