今月のひとこと2010年11月号





「今月のひとこと」の目次
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2010年11月1日
台風一過と言うわけにもいかなくて、秋の梅雨になってしまいました。 何十年ぶりかで、車で東京まで行ってきました。 流石に歳を考えて行きは沼津で一泊したのですのが、帰りは一気に浜名湖での30分の休憩で、正味5時間15分で帰りつきました。 よくよく考えたら、東京まで直接自動車で行ったことはないのでは無いかと思いました。 学生の頃は名神しかなくて、東名がところどころ出来ているだけだったので、国道1号線をひたすらトラックの追い越しに必死になっていました。 これで確か沼津までノンストップで8時間はかかったと思います。 ずっと高速道路で、自動車の性能は飛躍的に上がり、体力があれば一気に走り切れますね。 リニアの話も出ていますが、その時点では電気自動車(EV)で少なくとも東京・大阪間は充電なしで走れるようになるのではないでしょうか。

政治も経済もぱっとせず、また近い将来の展望もなく、うっとうしい天気で陰気な気分になってきます。 アメリカは、さらなる未踏の金融緩和に出ようとしていますので、ますますの円高が進行するでしょう。 本欄でも何回か紹介したように、自国通貨が上がるのはその国の価値が上がることなので、本来喜ばしいことです。 従って、現時点では海外の資産を買い取るとか、大名海外旅行に出かけるとか、もっと円高を謳歌したら良いと思います。

あまりにも輸出企業の言い分が声高になりすぎです。 某日本経団連の会長が顔をしかめながら円高は困る、とだけは言って欲しくない。 他の団体だっと思いますが、70円でビジネスが出来るように、と言っていて、ふーんと思ったら東芝の会長か相談役で、東芝は社内レート70円で行くそうです。 いつも元気な電産の永守さんは、このチャンスにとどんどん大型のM&Aを進めています。 円高キャンペーンで気を付けないといけないのは、インフレ(デフレ)係数を考えると、現状は名目で言うほど円高では無いのです。 日本はデフレが進行していますので、その分は名目の円高に触れるので実質はあまり変わっていないと言うことです。 従って問題は、デフレに対応出来ていない輸出企業に有ります。 また、円高と言うよりドル安ですから、他の通貨に対してはそんなに円高になっていません。 ニュースでも円高円高と言いますが、対米ドルであると言うのはあまりいいませんので、円高だけが印象に残るのです。 むしろ米ドルの時代が終わりつつあると認識すべきでしょう。

またまたノーベル賞が2人出ました。 やはり長生きしておかないとと言う事と、何が評価されるのか分からないと言うことですね。 今回受賞された特にアメリカにいる人は、ラッキーでした、と言う言葉を何回も言っていました。 これが本心ではないですか。 特に今回の受賞は、技術もさることながら液晶がこれだけ広がったと言うことの要因が大きいでしょう。 私も若い頃に液晶に少し頭を突っ込んで、ついでに有機ELにもわずか関連しましたが、40年前の液晶はどうしようもなく不安定で、寿命が短く、量産性に欠けるものでした。

せいぜいデジタル時計の文字盤とか、電卓の表示とかにしか使えませんでした。 50インチ100インチの画面が出来るとは夢にも思いませんでした。 もちろん基板となる大型の薄いガラスの製造技術に寄るところも大きいのしょうが、今回の受賞につながった技術がメジャーな役割を果たしているのではないかと思います。 パテントがなかったと言うことですが、これがあれば市場は膨らまなかったでしょうが、何とか日本の優位が保てたのかも知れません。 他の優位の技術が見当たりません。 ひょっとしたらELがもっと早くメジャーになったかもしれません。

ノーベル賞での連想で、例の本当にラッキーだったニュートリノの観測で賞をもらった、カミオカンデで、また新しいプロジェクトがスタートしたようです。 カミオカンデの最初の目的は、素粒子論の標準理論で予言されていた陽子の崩壊を観測することでした。 理論では陽子も崩壊しこの世は、何十億年後かはエネルギーだけつまり光で薄ぼんやりした、後はなにもない世界になると言うことで、何十億年も待てないので、数を増やして膨大な水の中の水素原子の崩壊を捉えようとしたのです。

計算では年に2-3個の崩壊があるはずだったんですが、結局これは見つからなかった。 それで同じような機構で、今度はニュートリノを観測しようと言うことになり、東京の研究所でニュートリノを発生させて、富山のカミオカンデで検出できたのですが、それと同時に地球の近く、近くと言っても何光年の距離ですが、ここで新星が出現した。 つまり星が大爆発を起こし、その時に発生した大量のニュートリノを検出したのです。 これがノーベル賞受賞の大きな要因でした。 たまたま検出器を作ったら、たまたま近くで新星が爆発したなんて偶然は楽観的に考えても、数千年に一度だと思いますので、あの受賞はラッキーだったとみんなに言われているようです。 受賞した本人も、ラッキーだったと言われていますが、といつも言っていました。

そのカミオカンデが3度目の正直で、今度は宇宙の暗黒物質を検出しようと動き出しました。 これが検出されたら今度は本当にノーベル賞ものです。 この宇宙全体にある、我々の体や地球を形成する物質は物凄く沢山あるように思えますが、実は全体で言うと10%しか無いのです。 他は暗黒物質とさらには暗黒エネルギーが大半を占めているのです。 暗黒物質は、単に見えない宇宙の塵みたいなものでは無くて、重力以外の相互作用を持たないので検出は極めて難しいとされています。 この中の候補としては先程のニュートリノがあり、当時ニュートリノの重さがゼロでない、と言う事が間接的に実証されて、当時のクリントン大統領も言及しました。 しかしこれだけでは暗黒物質の総量には達しないことが分かりました。 暗黒あネルギーは、ご存知アインシュタインが、生涯の間違いと言った、アインシュタイン方程式の中に無理やり追加した宇宙項に関連していて、この宇宙項そのものが暗黒エネルギーに相当すると言うことが分かってきました。

アインシュタインは古典物理を、最後に集大成した人ですから、量子論には最後まで反対していましたが、宇宙に関しても膨張宇宙は信用せず、定常宇宙だと信じていました。 それでほっておくと膨張する宇宙を止めるために無理に宇宙項を追加しました。 その後宇宙が実際に膨張している事が分かって、アインシュタインは、自説を否定し上述の言葉になったのです。 その後、当時そうていしたような定常的な膨張ではなくて、膨張が加速していることが分かり、その原因が暗黒エネルギーだと言うことです。

今月の読み物は、世界は分けてもわからない (講談社現代新書) 福岡 伸一著 ¥819
前作が面白かったので、また読んでみましたが、ここで取り上げて置いてなんですが、そんなに面白いとは思えませんでした。 文章が少々読みにくい。 しかし後半の研究結果の捏造に関しては、なかなか筆も冴え、一気に読みました。 ノーベル賞確実と言われた研究成果が、ひょんなことから捏造とばれてしまった話ですが、その途中の電気泳動の実験手順が微に入り細に入り、図解すると一発で分かるようなことが、文章化され、それがまた良く読める。 実際に自分で実験しているような気分になりました。

こう言う捏造事件は結構あって、似たようなケースでは同じような時期に、ジョン・ロング事件と言うのがあって、マサチューセッツ総合病院で、癌の一種である「ホジキン病」の培養株を得て、これを元に種々の成果をあげたのですが、結局は捏造が発覚したそうです。 日本でも、以前に話題になった、旧石器の発掘捏造も有りました。 筆者は、研究者がなぜこう言うことをしでかすのか? と言う分析をしたかったらしいのですが、その結論はイマイチぼんやりしています。 いずれにしても、この捏造作業の描写は一読の価値アリです。

内容紹介
60万部のベストセラー『生物と無生物のあいだ』続編が登場! 生命は、ミクロな「部品」の集合体なのか? 私たちが無意識に陥る思考の罠に切り込み、新たな科学の見方を示す。 美しい文章で、いま読書界がもっとも注目する福岡ハカセ、待望の新刊。

内容(「BOOK」データベースより)
顕微鏡をのぞいても生命の本質は見えてこない!?科学者たちはなぜ見誤るのか?世界最小の島・ランゲルハンス島から、ヴェネツィアの水路、そして、ニューヨーク州イサカへ―「治すすべのない病」をたどる。




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