今月のひとこと2015年8月号





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2015年8月4日







今年の夏は例年に増して暑いです。 下がりかけた景気にはプラスに作用しますが、それにしても暑い。 夏は明け方には少しひんやりするんですが、ここ2-3日は、明け方でもむぅーっとしています。 今日は心なしか少しはマシでしたが。

日本の景気回復もイマイチです。 今まで調子の良かった安倍政権に逆風が吹き荒れているようです。 基本的には経済を好調にしておいて、安保法案などを通そうと言うことでしたが、少し時間切れで、経済の方が先に息切れしてきたようです。 3年越しのTPPも、アメリカがTPAを可決して、やっと本格的な交渉に入ることが出来て、これで大筋妥結かと思われたときに、思わぬダークホースのニュージーランドの強硬姿勢でずっこけている状況です。 流石のフランケン甘利大臣も怒っているのは、これがずれると来年の参議院選挙に大きな影響が出て、政治シナリオが狂ってくるからです。 アメリカは大統領選挙と絡んでくるので、ややこしいはずですが、どうも熱意がないですね。 あのフロマン通商代表も、本来は頭から湯気を出して怒る場面ですが、そうでも無い。

アメリカは与党の民主党が反対の方向ですし、政策的には共和党とねじれているので、本腰が入らないのではないでしょうか。 結局、3本目の矢でTPPしかのこっていないアベノミックスが抜き差しならないところに来ていて、日本が最後に貧乏くじを引いたと言うことになるのでしょう。 これで交渉が不利にならないことを祈ります。 足下を見られて押し込まれるのではないでしょうか。 ニュージーランドの要求もこの臭いを感じます。

東芝は大問題に発展しましたね。 しかし、どこの会社も程度の差はあれ似たような事はやっていると思います。 年度末の代理店への押し込みなんかは日常的ですし、だから役所に関係ないどんな会社でも年度末には多少は売上げと利益が伸びるものです。 また、決算をすっぴんでは無くて多少のお化粧するのは、経営者としては当たり前だと思います。 一般には、会計数字なんてのは、一度決まったら変更できる数字ではないと言うイメージがあるのですが、合法的に認められている手法を使っても、かなりの数字の操作は可能です。

東芝は一線を越えてしまった。 やり過ぎました。 どこまで、何とかOKで、ここまではダメと判断するのは経営者の基本的な判断力ですが、ここに社内政治が絡んでるんですね。 しかし、まずいと思ったら引けば良いのであって、辞めるつもりならいろいろ摩擦はありますが、何でも出来ると思います。 オリンパスの英国人社長を見習えば良い。 社内政治のせいにするのは、言い訳でしかないです。

利益を圧縮して、いわゆる節税につながるものに関しては、税金を取りたい税務署がうるさくチェックするので、そんなに問題にならないです。 なるときは脱税として、金額が大きければ、刑事事件になり、服役することにもなります。

粉飾決算のように利益が出る方向は、税務署としては税金が多くなるので、基本的なチェックは入りません。 おのおのの法人の責任として自律しないと行けないところです。 ここで監査とか内部チェックとかの必要性が叫ばれるのですが、本来(アメリカ式で)は、取締役は執行部つまり社長を取り締まることが仕事で、良くあるように部長と社長の間の、社長の部下みたいな事はあってはならないと思います。 日本の場合は、この取締役の役割がハッキリしていないので、監査役を設けています。 しかも公認会計士による決算の監査があり、どこまで監査したら気が済むというか、問題がなくなるのか、と思います。 取締役が本来の役割を果たしても、社外取締役を強制するとか、こう言うことをどこまでやっても意味が無いと思います。

まずやるのは取締役を本来の取締役の役割にして、社長以下の執行部のチェックをキチンとする。 しかし社長以下が、本気で確信的に不正をして、それを覆い隠そうとしたら、これは誰にも分かりません。 もっともバランスシートを年度ごとにすーっと見ていけば、粉飾をするのは大きな額で無いと意味がないですから、良く見れば分かると言う専門家も居ます。 しかしオリンパスのように簿外で徹底的にやれば誰にも分からないです。 オリンパスも外人を社長にしたのでバレましたが、日本人だとあそこまで暴露することには非常に躊躇したと思います。

いずれにしても取締役がキチンと監視する。 また監視できる体制を作ることを含めて、もし不正がバレたら、一生刑務所の外には出れないような刑事罰を科すべきです。 日本の経営者のほとんどは結構な年寄りですから、少し刑期を長くすれば出てこれません。 アメリカのように全ての罪の刑期を積算すると言うような荒っぽい手も考えないと行けないと思います。 アメリカの経営者と話していると、そんなことをしたら Go To Jail だと冗談を含んでしょっちゅう話題になります。

東芝の場合はトップが細かく指示を出しすぎだし、プレッシャーを与えすぎた。 お化粧も1年で落として、次の年は別の化粧をすれば良かったんですが、厚化粧すぎて、化粧を落とせずに、さらに上に化粧をしていった結果だと思います。 今回は、内部通報で不正が明るみに出て、自社内ので調査がまず始まったのが唯一の救いで、これが未だに粉飾決算と言わずに「不適切会計」と報道されている理由だと思います。 どのような法人であれ、幽霊法人ではなく、実際にキャッシュフローがあるのなら、グレーゾーンは必ず存在します。 このグレーゾーンをどうハンドリングするかは、それこそ経営者の志と自律心にかかっていると思います。

最近は悪い話題の東芝ですが、8ビットや16ビット全盛の時代に12ビットのマイコンを作るなど、ユニークな会社だと言うイメージがあります。 またディスクの世界では、常に世界をリードしていて、今月は、東芝のディスク技術の話題です。 半導体メモリによる記憶媒体の容量アップが大きいので、従来型の円盤に情報を記憶するディスクドライブの出番が少なくなってきていますが、東芝はディスク容量を10倍にする多層記録方式の実証試験に成功したとのことです。

それで思い出したのが垂直磁化記録方式。 1970年代に提案され、それ以降30年以上に渡って研究開発が行われてきましたが、最近はその名前を聞かないとおもっていましたが。どっこい、現在のディスクドライブには必ず使われているそうです。 ディスクの容量がどんどんと上がったのは、垂直磁化方式と磁性層間にトンネル電流を流すことが出来るTMR/PMR磁気ヘッドの貢献によるものです。

今回はさらにこの記録を多層に渡って行おうと言うもので、マイクロ波磁界を使って磁化層を選択するものです。 高密度化の限界を超えた10テラビット/インチ2の記録密度に達することができるとのこと。 2025年以降の実用を目指していますので、オリンピックが終わってしばらくすると、1ペタ(1テラの1000倍)バイトのディスクが登場するかもしれません。

今月の読みものは、「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 文春新書 エマニュエル・トッド著 堀 茂樹 翻訳 Kindle版 ¥849 新書 ¥864

★★☆ 関心のある方は読むべし。

ギリシャ危機のおかげでヨーロッパの情勢に詳しくなりました。 やはり遠いせいで、よく知らなかったと思います。 中国までしょっちゅう来ていたメルケル首相が突然やって来て、何をしにきたのか良く分からないうちに帰って行きましたが、ヨーロッパはドイツ中心で動いているようです。 言われてみれば、最近はフランスの影が薄いです。 本書は、オリジナルがインタビュー記事のせいか翻訳がおかしいのか、少し読みにくく、論旨の流れもバラバラですが、フランスから見たドイツと言う風景が見えてくると思います。 日本とドイツとの類似性とか差とかもあり、少し離れたヨーロッパから見たらこうなるのか、と興味深く読みました。

内容紹介
冷戦終結と欧州統合が生み出した「ドイツ帝国」。EUとユーロは欧州諸国民を閉じ込め、ドイツが一人勝ちするシステムと化している。ウクライナ問題で緊張を高めているのもロシアではなくドイツだ。かつての悪夢が再び甦るのか?

出版社からのコメント
人口動態から、ソ連崩壊と米国衰退をいち早く予見した歴史家の新たな「予言」の書。冷戦終結とEU統合によって生じた「ドイツ帝国」は、当初もっぱら経済的だったのが、今日ではすでに政治的なものになっている、とトッド氏は指摘します。そしてウクライナ問題で緊張を高めているのも、ロシアではなくドイツで、「ドイツ帝国」がこのまま拡大すれば、いずれアメリカとも衝突しうる、と。インタビュー形式で読みやすく、しかも『悪童日記』の名訳者、堀茂樹さんによる素晴らしい翻訳で読める、日本オリジナル版です。



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