今月のひとこと2008年正月号

2008年1月元旦
明けまして、おめでとうございます。

年末から今年にかけて事の他寒くなりました。 以前の本欄を見ていると、2年前の大晦日も雪で大騒ぎだったとのことでした。 しかしいくら寒いと言っても、最近は雪も積もらなくなったし、氷もほとんど張らなくなりしまた。 慶応3(1867)年11月18日夜、新撰組の伊東甲子太郎が七条油小路で襲撃されて、その後に囮として放置されたそうですが、その時には遺体はバリバリに凍ってしまっていたとの事で、以前はもっと寒かったのでしょう。 1970年代には異常気象が連続し、地球の温暖化が加速していることは間違いないでしょう。

先日、この伊東甲子太郎暗殺の場所を歩いてみました。 塩小路通りの堀川の1本東に油小路があります。 昔は堀川通りはこんなに大きくなくて、油小路の方がメインストリートだったようです。 この通りを塩小路から北に上がった最初の通りが木津屋橋通でこの交差点の西側で襲撃されたそうです。 もう少し西に行くと堀川通で、道路を挟んで左向かいに小学校がありますが、この小学校の前の陸橋のあたりに近藤勇の醒ヶ井の休憩所つまりオメカケの家があって「醒ヶ井通木津屋橋下ル御方紺屋町494番地」、ここで酒を飲んでの帰り道に待ち伏せにされました。 当時は大火で焼けた家に仮の板塀があって、その隙間に刺客が潜んでいたそうです。 当時の伊東甲子太郎は新撰組を抜けて御陵衛士になっていましたので、東山の高台寺に戻ろうとしたのでしょう。 ちなみに妾は、大坂織屋の深雪太夫。

襲撃を受けた角は現在散髪屋さんになっています。 そこで深手を追いながらも防戦したが、本光寺の門前の石碑に倒れかかり、「奸賊ばら!」と無念の声を上げ、息絶えたとのこと。 この本光寺がなかなか分からず、しかし分かってみると、すぐそばの小さな門があるだけでした。 石碑はお寺の中に移設されたそうで、お願いすれば見せていただけるそうです。 更に北に100m先行くと七条通になります。御陵衛士をおびき寄せるため、伊東の遺体は新選組によって運ばれたそうです。 結構距離がある。

ちなみに、七条堀川の西南にリーガロイヤルホテルがありますが、そこの陸橋を降りた当りに、近藤勇の和歌が刻まれた碑があり、ここが不動堂村屯所跡です。 近藤勇は、先述の妾宅から、ここに通勤したしたことになりますが、本当に歩いて数分ですね。 元の屯所は西本願寺の太鼓楼にありましたので、そばに引っ越したと言うことです。 太鼓楼の元の案内には、新撰組の言葉は一つもありませんが、最近の案内板には大きく出ています。西本願寺はかねてから新選組には大迷惑していたので、新屯所建築費用まで負担して、移転しました。 敷地は約1万平方メートルで外観は大名屋敷のようだったというが、半年後には撤退して伏見に移っています。

伊藤甲子太郎の話が長くなりましたが、昨年の株価は5年ぶりの安値で終わってしまいましたし、政治は安定しませんし、パキスタンではブットが暗殺されてしまいましたし、イラクの好転を除いては、ロクな事がなかった感じです。 日本も偽装問題が尾を引いて、建築着工が大幅に遅れていますので、アメリカより自分の心配をしないといけない状況になってきました。 決まりと言われていたアメリカ大統領選挙も、一気に不透明感が増して来て、誰が当選するのか混沌としてきました。

ITの世界でも、あんまり大きな動きはありませんでした。 Windows VISTA の評判が予想通り非常に悪くて浸透しませんでした。 高い、遅い、不便の 3拍子でした。 98のサポート打ち切りも大きな話題となりました。 98を使うことの是非はともかく、ビジネスの特に公的な組織での使用率はかなり高いものがあります。 Linuxベースの代替OSもなかなか進まず、当面はマイクロソフトのサポート終了延期でとりあえずは凌げますが、次はどうするのか、大きな問題です。 ついこの間まで、依然としてそうなのかも知れませんが、自衛隊ですら一つのPCを使いまわしている、もしくは私物のPCを持ち込んでいると言うようなセキュリティ議論以前の問題が山積しているのではないかと思います。 ホワイトカラーの生産性アップが叫ばれていますが、未だにPCをベースに仕事をしていない組織が特に行政で多いのは大変問題だと思います。

片や脱PCとも言うべき、デジタル放送が大分進展したような気がします。 従来のアナログTVでデジタル放送を視聴できるデジタルチューナーが1-2万円で入手できるようになって来ましたし、いずれは5000円ほどで入手できるようになるでしょう。 ビデオカメラも、ビデオ録画機もハイビジョン化して、コピー問題は残りますが、大体は出揃ったと言うことでしょう。 最近は、従来のDVDにハイビジョンが録画できる圧縮方式が実用化されて、HD-DVDとブルーレイに加えて、第3の方式ともいうべき圧縮方式が静かに浸透し始めました。 残るはPCの処理能力。 音楽は全く問題なく処理でき、従来の画像もまあまあ処理出来ますが、ハイビジョンとなると少し処理が追いつきません。 CPUチップもマルチコア化し、これを十分活用できるソフトウエアと、PCの低価格化がポイントでしょう。

最近特に所得格差が問題になっていますが、よく考えたら、あのアメリカのクリントン時代の10年以上の大成長、つまりダウ平均が2000ドルから12000ドルに5-6倍になったのですが、この間の平均給与はほとんど伸びていません。 株価が上がっている間は、新しい会社を興して、給与は安いがIPOの株式売却でそれを埋め合わせると言うことが出来たのですが、IPOが有効でなくなってくると給与の安さだけが残ります。

中国も、あれだけの成長をしていても平均給与の伸びはそんなに大きくありません。 農村からの新しい非正規の労働者の流入で労働市場が満たされていると言うことです。 いずれにしても所得格差は世界的な現象で、単に日本だけの問題ではないと言うことですが、他方、アメリカ流の市場原理主義が見直されてきているもの確かです。

今月の読み物は、お正月らしく、少し華やかなものをと、京都花街の経営学 西尾 久美子著 ¥1,680。 読みやすいと言うか、同じ事が何回も出てくると言うか。 お茶屋と置屋の分業体制、地域ぐるみの経営体制、芸妓の教育体制などなど。 特に全くの素人を1年ぐらいでプロの舞妓に育てるのはノウハウの蓄積が欠かせません。
350年以上の歴史をもち、いまだに人々を惹きつける京都花街—-。なぜ350年も続き、なぜいまだに人々を惹きつけ続けるのか?

本書が他の京都花街に関する書籍と一線を画しているのは、著者が「経営学者」である点です。「舞妓はんはかわいいなぁ」「芸妓はんはきれいやなぁ」という感嘆に終わることなく、京都花街を350年以上続く「ビジネス」としてとらえ、その強さの秘密を分析しています。350年間も続き、今なお多くの人を惹きつけ、その売上規模を拡大させている経営の秘訣は、現代の日本企業の経営にも多くの示唆を与えてくれるはずです。

そういった経営学的分析がある一方、他ではあまり知られていない「京都花街・豆知識」も充実しています。舞妓さんの修業内容と日常生活、花街のIT化、「旦那さん」になれる条件、舞妓さんと芸妓さんの見分け方、舞妓さんに会える場所などなど……本書を読めば、京都花街通になれることも請け合いです。 (出版社からのコメント)

今月のひとこと2007年12月号





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12月5日
今月は風邪を引いてしまって、さらになかなか直らず、本ページの更新も遅くなってしまいました。 経済状況もパッとせず、またすぐに改善する気配も無く、構造改革の進展も期待できず、意気の上がらない年末となりました。 アメリカのサンクスギビングのセールスはそれなりだったようですが、今後はクリスマス商戦の結果が気になるところです。

最近は、AV機器に凝っているので、先日また買い込みました。 以前に買って、本欄でも紹介したワンセグTV。 これは結果的には画面の大きさだけが取り柄で、バッテリの持ちも短いし、感度もそんなに高くはなかったように思います。 電車での移動が多いので、その間のTV視聴を想定したのですが、列車内ではそんなにどこでも受信できるわけでもありませんでした。 アナログ受信機の方が、音声だけでノイズも多いのですが、使い物になる感じです。

先日から、某S社がTVコマーシャルを良くやっていたので、いろいろ調べてみました。 要するにポータブル・ワンセグTV受信機+オーディオプレイヤー+ビデオ録画再生機です。 S社のものは流石に音は良くて、音がメイン、TVはサブという感じです。 外部メモリカードは無くて、その代わり重さが79gと極めて軽い。 反面、TV画面は2.5インチと一回り小さい。 ただ音楽コンテンツとかはS社の世界に浸らないといけないので敬遠。

先日、買ったのはT社のもので、以前は絶対に買わないメーカーですが、最近液晶TVを買ったのを切っ掛けに買ってしまいました。 こちらは、TVがメインみたいです。 重さは2倍の150gぐらいですが、画面が3.5インチと大きめ、バッテリの持ちも良い。 また、通勤途中での視聴を快適にする、トギレナイザーと言うワンセグ受信が途切れない技術が使われています。 以前に買ったものは、移動中に見ると途切れ途切れで、アナログと一番違う点で、違和感がありましたが、この機種では、確かに画像や音声は途切れたりするのですが、違和感は大幅に減った気がします。

他に比べて良いのは、外部メモリカードが使える点。 8GbまでのSDカードが使えます。 ワンセグの録画も直接外部メモリに可能です。 ちなみに録画は、タイマー録画で、一昔前のビデオレコーダーと思えば良いでしょう。 下手な自動録画より使えます。 気になる録画時間は、4Gbで約20時間ぐらいですので、通常の使い方では十分だと思います。 外部アンテナも接続可能。 ちなみにバッテリはワンセグ視聴で10時間だそうです。

値段は、4Gb内蔵仕様で2万円ちょっと。 通常の使い方では、オーディオ+ビデオ録画でも十分でしょう。 S社の16Gbは4万円近くすると思います。 T社の最大のネックはいつも言っているように使い勝手。 本機は、かなり洗練されていると言ってもやはりそこはDNAは争えないので、使うときは覚悟が必要。 反面、機能は豊富です。

オーディオの方は、完全にマイクロソフトマシンになっていて、Windows Media Player の外部デバイスとして認識し、コンテンツのやり取りをします。 念のために言うと、PC側から機器は直接には見えません、 かならずMedia Playerを介して通信をします。 従って著作権の問題なのどは、マイクロソフトの方式に依存します。 と割り切れば問題ないのかも知れません。 転送は結構速い。 CD 1枚を試して見ましたが、あっという間という感じで転送されます。 試しに以前に取り込んでおいた、MP3データを入れてみましたが、全部入りませんでした。 理由は不明ですが、単純にファイルを転送しようとしてもダメなようです。 いずれにしてもマイクロソフトの世界に浸ってしまえば、それなりに使い勝手は良いのでしょう。

今月の読み物は、吉村昭が続くのですが、「生麦事件〈上下〉 (新潮文庫)」吉村 昭著 各¥540 (税込)。 生麦事件と言うのは、横浜の当りで、大名行列を横切った外国人が切られて、それが元で外国との紛争になったと言う事は知っていましたが、その詳しい事は知りませんでした。 それもそのはずで、この事件の本格的な研究者は少なくとも、吉村昭が取材した当時は存在していなかったと言うことです。 本書によって、如何に本事件が幕末の政治状況に影響を与えたかが良く分かりました。 戦国時代の類似の話を聞いても現実感はあんまりありませんが、本書で語られる外交交渉は、現在にも通じるところがあって、現実感を持って読むことが出来ました。

出版社/著者からの内容紹介
いかにして薩摩はイギリスを斬ったか?
文久2(1862)年9月14日、横浜郊外の生麦村でその事件は起こった。薩摩藩主島津久光の大名行列に騎馬のイギリス人四人が遭遇し、このうち一名を薩摩藩士が斬殺したのである。イギリス、幕府、薩摩藩三者の思惑が複雑に絡む賠償交渉は難航を窮めた──。幕末に起きた前代未聞の事件を軸に、明治維新に至る激動の六年を、追随を許さぬ圧倒的なダイナミズムで描いた歴史小説の最高峰。




今月のひとこと2007年11月号





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11月4日
やはりサブプライムの問題が尾を引いているようで、すっきりしませんね。 構造改革も何となく元に戻ってきて、また再び「失われた10年」と言う話も出てきています。 先ほどTVの速報で「小沢さん辞意」と言うテロップが出てましたが本当でしょうか。 本当ならなかなか面白くなって来たと思います。 民主党が生まれ変われば、少なくとも新しい構造改革と言うイメージが出てくるのではないでしょうか。

アメリカは、ヒラリー大統領で決まりなんでしょうかね。 他にこれと言った対立候補も出てこないようなのですが、まだまだ時間はありますから、どんでん返しはあるのかもしれません。 お隣の韓国は、時間が無いにも関わらず、なかなか決まりそうにありません。 日本も多少はガタガタしても、政治の変革の時代ですが、結果的に良いところに落ち着いてもらいたいものです。

構造改革といえば、始まった郵政の民営化。 ところが、どうも風向きがおかしいようです。 元々郵政改革の目玉は、130兆円とも言われる、郵便貯金の資金を民間に還流させると言うことがあったと思います。 従って、膨大な郵便貯金はだんだん残高を減らす方向と思っていましたが、どうもそうなっていないようです。 元の三井住友銀行の西川頭取が、新銀行の社長となって、純粋に民間銀行として利益を求め始めていると言うことで、預金残高は減るどころか、増える方向にあるということです。

郵便貯金の運用は、財政投融資がなくなった後は、国債で運用され来ましたが、国債はご存知のように、極めて低い利率で、これと近い預金利率を持ってくるとほとんど利益はないことになります。 小さな池の中に大きな鯨、他の魚は死に絶え、鯨も死に絶えると言われています。 そう言う意味で、この辺で見直しをするのも必要なことでしょう。

最近やっとビデオカメラ買いました。 買おう買おうと思っているうちに、新型が次々と出てくるし、媒体もテープから、ディスク、ミニDVD、メモリカードとめまぐるしく変化しました。 ディスクが良いと、ビクターが出た頃から見ていましたが、どうも評判が良くない。 フォーカスが遅いのと、どうもディスクの立上げ時間がかかると言うことみたいです。 振動にも弱い。 ミニDVDでも良いと思いましたが、大きくて重い。

最近出たのが、SDメモリカードに録画するもの。 ディスクも無いのに偉く高いし、メモリカードにはたいした録画は出来ないのではないか、と思っていましたが結構な人気で、本気で検討してみると、そこそこでしたので買ってみました。 価格は9万円を切る値段。 重さも300g台で、DVDの500gぐらいからはかなり軽い。 SDカードメモリも、8Gbが市販で出ていて、これでMpeg4で1時間20分から2時間近い録画が可能です。 画質はもちろん1920×1080のハイビジョン画質です。

しかし、全体に高くつきます。 まずバッテリも小さいので、予備が必須。 これが小さいのに1万円もします。 SDカードも8gbで1万円近くします。 また、本体がちいさいので、アチコチにコネクタが出ています。 特殊なコネクタはありませんが、HDMI(コード無し)とD端子+音声端子(コード付き)、USBはミニタイプですが、PCとのデータ転送時にはスレーブ、DVDレコーダーやプリンタが繋がるのですが、その場合はマスタになるので、特殊なケーブルが必要な場合も出てくるようです。 DC電源は、バッテリと同じ形のものをバッテリの代わりに入れてそれにケーブルで電源供給とコネクタに苦労しています。

SDカードですので、録画したデータはPCで直接いじれるようですが、説明書では慎重に書いてあって、付属のソフトを介して、USBで外部メモリとしてアクセスするのが基本みたいです。 どうもファイル構造が特殊でファイルを直接触る場合は、つじつまを合わせる必要があるようです。 このソフトで、mpeg2に変換も可能。 リモコンが少し大きいですが付いていて、これで撮影が出来ます。 LCDをこちらに向けておけば、三脚でセットしておけば、一人で旅行した時などに、自分で撮れます。 写真もOK。

今月の読み物は、秋の夜長にじっくりと読む吉村昭。 あほうどりの話が延々と出て来て食傷気味、鳥の嫌いな人には駄目かもしれません。 漂流 (新潮文庫) 620円税込。 江戸・天明年間、シケに遭って黒潮に乗ってしまった男たちは、不気味な沈黙をたもつ絶海の火山島に漂着した。水も湧かず、生活の手段とてない無人の島で、仲間の男たちは次次と倒れて行ったが、土佐の船乗り長平はただひとり生き残って、12年に及ぶ苦闘の末、ついに生還する。 その生存の秘密と、壮絶な生きざまを巨細に描いて圧倒的感動を呼ぶ、話題の長編ドキュメンタリー小説。(本書裏表紙から)

鳥にはうんざり増すが、流木を集めて船を作ってしまうと言うのには、ビックリしました。 それも設計をして、模型を作ってから流木を集めて、それで出来るところから作っていく、最後に流れ着いた錨を溶かして、必須の釘を沢山作っています。 執念と言うか、技は身を助くとか、これが現実にあったことと言うのには、特にものつくりの一翼に携わる人間としては、ひたすら感動します。





今月のひとこと2007年10月号

10月1日

やっと暑い夏も少しはマシになってきて、お盆から始まったサブプライム問題に端を発した株価の下落も、ここで2番底を打ったのではないでしょうか。 あのように大きく下落した後は少しあがり、その後に2番底が来ると言うのが一般的な傾向で、これには3-5ヶ月と言うのが常識。 ところが最近はだんだん早くなってきて、1ヶ月程度になっているとすれば、この9月末がそうだと言うことになります。 過去の例がそのまま通用しないと言うのが面白く、いつまでも本屋で株式チャートや必勝法の本が売れるのでしょう。

最近、江戸時代にハマっているとお伝えしましたが、先日何気なくTVを見ていたら、日本で始めて反射望遠鏡を作った国友一貫斎の話題が放映されていました。 1836年には精密な、現代でも通用するような、月面のスケッチが残されています。 ガリレオガリレイが月面を観測したり、木星の衛星を発見したのは、1600年ぐらいですから、100-200年ぐらいの差で日本でも本格的な天体観測が行われていたことになります。 1700年ごろには国産の望遠鏡が作られています。

数学の問題と回答を描いた算額が各地の神社に残されているように、江戸時代の庶民のレベルは非常に高いものがあるようです。 まあ一種の暇つぶしですが、その暇つぶしを、何とか道とか、高尚な趣味まで持ち上げてしまう量と質の高さがすばらしいと思います。

国友一貫斎の望遠鏡がすごいと思うのは、グレゴリー式と言う、いわゆる望遠鏡の形をしていて、筒の反対側から上を覗くのですが、これが反射鏡を2つ使ったものを言います。 従って、主鏡には真ん中に穴が空いています。 この鏡を金属で作ってあって、ビックリするのは、200年経った今でも光り輝いていることです。 現物は長野県の上田市立博物館に収蔵されているようです。 7cmの直径で40cmの長さがあるそうです。

何故200年も曇りが出ないか、と言うと鏡は銅と錫の合金つまり青銅とかブロンズとか言われるものですが、通常の合金に比べて、錫の含有量が多いそうで、単に多くすると、ひび割れが出て作れないそうです。 これを作ってしまったのは、恐らく日本古来の和鏡の技術であろうと思います。 京都には和鏡の一種の魔鏡を作るところがあって、TVでも紹介されていましたので、ご覧になった方も居られると思います。 鏡には何の模様も無いのですが、光を反射させて、白壁などに映すと像が浮かび上がると言うものです。

国友一寛斎でもっとビックリしたのは、鏡が単に曲面ではなくてキチンと放物面になっていることです。 外国の望遠鏡や文献を参考にしたのでしょうが、放物面が必要と言う事と、それを実現する方法などを自ら工夫して完成させたと言うのは驚くほかはありません。 単なる曲面の鏡でも一応の像は見ることは出来ますので、そこからの試行錯誤なんでしょうが、現代の望遠鏡と同じモノが出来ていると言うのはビックリします。

今月の読み物は、いつかご紹介した、輪違屋の当主が書いた本。 京の花街「輪違屋」物語 (PHP新書 477)高橋 利樹著。 先日TVで2週間に渡って、新田次郎作輪違屋糸里が上戸彩主演で放映されました。 京都守護職の松平容保がひょこひょこ出てきたりするのは、ご愛嬌で全体にお話ですが、輪違屋と八木邸のセットはキチンと出来ていました。 芹沢鴨が暗殺される直前に宴会を開いていた角屋は、何故か登場せずに、蓬莱屋とかなっていて、角屋はもっと立派です。 また、最後の宴会の場面も、角屋の2階の座敷はもっと広大ですし、1階の松の間は松が有名ですが、全く登場しない。 予算がなくなってしまったのか、なんなのか。

本書は、輪違屋当主の本音が出ていてなかなか面白い。 花代が高いと思うのは京都人、東京人は安いと言う、大阪人は何も言わないとか、祝儀が常識以上に多いのは馬鹿にされるとか、渡す時はさり気なく渡すとか、京都お座敷のお約束事もあります。 花街間の芸子のトレードを防止するために踊りの流儀がそれぞれ異なるとか、西陣に近い上七軒の芸子の帯は立派だとか、なるほどと言う話が満載。

出版社/著者からの内容紹介
京都・島原といえば、かつて興隆をきわめた、日本でいちばん古い廓(ルビ:くるわ)。幕末の時代、新選組が闊歩したことでも有名である。その地でたった一軒、現在でも営業を続けるお茶屋が、輪違屋(ルビ:わちがいや)である。芸・教養・容姿のすべてにおいて極上の妓女(ルビ:ぎじよ)、太夫(ルビ:たゆう)を抱え、室町の公家文化に始まる三百年の伝統を脈々と受け継いできた。
古色なたたずまいを残す輪違屋の暖簾をくぐれば、古(ルビ:いにしえ)の美しい女たちの息づかいが聞こえてくる。太夫のくりひろげる絢爛な宴は、多くの客人たちを魅了し続けている。
本書では、輪違屋十代目当主が、幼き日々の思い出、太夫の歴史と文化、お座敷の話、跡継ぎとしての日常と想いを、京ことばを交えてつづる。あでやかでみやびな粋と艶の世界—-これまでは語られることのなかった古都の姿が、ここにある。

今月のひとこと2007年9月号





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9月1日

サブプライムショックにはビックリしました。 自分で前回の本欄で紹介しておきながら、茹で蛙の反対の冷え蛙になっていて、半分寝ていたら、叩き起こされた感じですね。 まあちょうど良い買場になったのではないでしょうか。 少し相場が上がってきたので、ここらで整理して軍資金を用意しておきましょう。 流石にアメリカの対応は素早くて、持ち直しているようですが、少なくとも9月いっぱいは凸凹でしょう。 9月の連休までは何が起きてもおかしくないと思います。



サブプライム問題は、みんなが認識したのでそんなに変動要素にはなりませんが、玉突き式に他の問題が出てくるのではないでしょうか。 アメリカのと言うか世界の景気を支えているアメリカの個人消費は、よく言われているように、綱渡りの自転車操業で、政府も消費者も借金漬けなのです。 日本は政府が大きな借金を背負っていますが、これは家庭内で夫婦で片方からお金を借りていて、それが偉く偏っているだけで、その家庭全体ではプラスマイナスゼロなんです。 日本で言えば、国内の預金や国債を一気にチャラにしたら、それで終わりです。 800兆円の借金があっても、国民一人平均800万払ったら、それで終わりです。 国外に払うのは少ない額です。 もっともあんまり大きくなると利払いだけで一般会計のほとんどを占めてしまうと言うことになります。 他に手をつけていない一般会計の何倍もの特別会計もあるので、それで何とかするのが先決だと思います。



アメリカ消費者の自転車操業の次の問題は、クレジットカードと言う説があります。 アメリカにサラ金はありません。 ヤミ金はあるのでしょうが良く分かりません。 サラ金の代わりにあるのが、クレジットカード。 よく借り換えを勧めるDMが来たことがあります。 サブプライム問題で返済を迫られた消費者は、生活費がなくなるので、クレジットカードを使って、最低限の支払だけして、後は20%近い高利の借金をするわけです。 ちなみにアメリカンエキスプレスはクレジットカードではありません。 使った分は全額期日までに支払う必要があります。



クレジットカード会社もリスクはとりたくないので、一般にクレジットカードの利用限度は、1000ドルぐらいです。 最近の高リスクの人のカードは200ドルとか300ドルとか言います。 勢い、複数のカードをトランプゲームのように出すことになります。 店のほうも心得たもので、このカード駄目だから他のは無い? と平気で聞いて来ます。



サブプライム問題の次はカード問題ではないでしょうか。 この後は、お金を使えなくなった消費者がギリギリまで消費を控える、もしくは極端には破産して債務をチャラにしてしまうこと。 アメリカの経済が冷え込む大きな原因となります。



暗い話はこれくらいにして、最近買ったポータブルデジタルTVのブルードット。 調べるまで全く知りませんでした。 ソニーのものが有名ですが、感度が低いと言う評判なので、これを購入しました。 実勢売価23000円ほど。 4インチの大画面で感度はワンセグケータイの方が少し良いのかも知れません。 3時間の充電で4時間視聴可能。 なにしろ薄いのですが、欠点はケースが無いこと。 やはり自分で用意しないといけないようです。 操作ボタンがセンサ式なので、慣れないとなかなか操作できません。 TVが受信できるポータブルラジオの代わりに買ったのですが、デジタルなので、電波が弱くなるとスパッと見えなくなります。 アナログの場合は雑音があっても受信できたのですが。 画面の表示を消せるので音声だけでも受信できますが、イチイチスイッチを切り替えないといけないので面倒です。



もう一つ買ったのは、ディスクレコーダー。 東芝のデジタルTVの出来が良かったので、以前から嫌いだった東芝を買いました。 しかしこれが失敗。 昔の機能は豊富にあるが使い勝手の極めて悪い性格がモロに出た製品でした。 1ヵ月後もまだ使いこなせていません。 しかしいろんな設定が出来たり、フォルダが使えたり、インターネットを経由して操作できたりします。 もっともネット経由は何故か物凄く遅い。 メールによる録画予約はよさそうに見えるが、チャンネルの設定をチャンネル番号で指定しないといけないので、余程緊急性が高くないと使う気になりません。 前回にご紹介した録画機能付きのデジタルTVは、高機能を少し引いて、ユーザインタフェースを少し改善したので、なかなか良いものに仕上がっていると思います。



今月の読み物は、「破獄 (新潮文庫)」 吉村 昭著 ¥ 580税込 逃亡不可能な網走刑務所を脱走した実在の人物 白鳥由栄 をモデルにした作品。 4回の脱獄を吉村昭らしく淡々と筆を進めていきます。 最後に捕まるシーンが印象的です。 タバコを勧められたから自ら進んで捕まったのですが、これ以上は実際の本をお読みください。 それにしても、日本の監獄のやわな事にはビックリ。 元々逃げることを前提にしていないのではと思えるほどです。 これを読んで、ハンニバル・レクター博士の拘禁の様子を思い出した人は多いと思います。 完全な石垣で作って、入り口は分厚いアクリルの板で、完全透明の監獄でしたね。 それでもハンニバル・レクターは脱獄してしまうのですが、これはお話。 本書は実録です。



昭和11年青森刑務所脱獄。昭和17年秋田刑務所脱獄。昭和19年網走刑務所脱獄。昭和23年札幌刑務所脱獄。犯罪史上未曽有の4度の脱獄を実行した無期刑囚佐久間清太郎。その緻密な計画と大胆な行動力、超人的ともいえる手口を、戦中・戦後の混乱した時代背景に重ねて入念に追跡し、獄房で厳重な監視を受ける彼と、彼を閉じこめた男たちの息詰る闘いを描破した力編。読売文学賞受賞作。 内容(「BOOK」データベースより)












今月のひとこと2007年8月号





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8月4日

先週の参議院選挙は劇的でしたね。 また、参議院と言えどもいろいろ権力の発揮が出来るものやっと分かりました。 法律の抜け穴だと思いますが、日銀の総裁などを決めるのは結果的に参議院の承認が必要とのこと。 一般の法律も衆議院差し戻しの上3分の2で可決できるようですが、これも参議院で明確に否決した場合で、審議そのものを遅らせたりすれば、差し戻しも出来ません。 アメリカの大統領は議会で否決されても、拒否権がありますので、前に進めることが出来ますが、日本の場合は、前進も後退も出来なくなる恐れがあります。



それにつられたのか、株価も大幅ダウン。 尤もこちらはアメリカのサブプライム問題の深刻化につられての大幅ダウンですが、一時の日本の住専に似ています。 当時の住専に公的資金を注入するのに、全国民が反対して、その後の不良債権の処理が大幅に遅れた一因になりました。 この時は数千億円の規模だったのですが、その後の銀行の処理に2桁兆円の公的資金が注入された事は記憶に新しいところです。 まあパーナンキFRB議長の手腕に期待しましょう。 日本では、日銀が0.5%から0.75%への利上げに動くようですが、もしこのアメリカの問題の影響が大きいようであれば、見送りになるでしょう。 従って今回は利上げが無ければ、売りになるんではないでしょうか。 来年以降は中国の動きも重要で、当面は世界的に景気が安定することは無いのではないでしょうか。



最近のIT分野の最大の話題は、iPhone ではないでしょうか。 日本での発売はまだまだ先だそうですが、発売日だった6月29日の前夜には、徹夜組が出るほどの社会現象となりました。 スティーブジョブズには、アップルを追い出された後の、1990年ごろに、Redwood City の NEXT Computer で会った事がありますが、端末としてのハードウエアと、それに付随するネット上のサービスと言うビジネスモデルの考え方は同じなので、共感しました。



NTTドコモに代表されるいわゆる通信会社の製品文化に制約された日本のケータイに比べて、ゼロから積み上げた製品がどれだけ魅力的か改めてビックリさせられます。 もっともジョブズのアイデアの豊富さが第一ですが、制約がないと言うことがどれだけ製品を魅力的にするのか、目からウロコの感が強いですね。



音楽管理ソフト iTunes との連携は当然としても、今回の iPhone には四つの基本機能(電話、メール、iPod、ウェブ閲覧)が搭載され、それ以外に11の付属機能(カメラ、カレンダー、ユーチューブ閲覧など)があるそうです。 電話は、最大5人まで同時に会話が可能。 電子メールは、ワードやエクセルの文書も開けるとのこと。 日本のケータイでも同じような機能はあるようですが。 iPod 機能は、ケータイでも入ってきていますが、本家の iPod と言うのが売りでしょう。 ウェブ閲覧は、アップルの標準ブラウザ サファリ を使っており、他社のはるか先を行く。 その他には、ユーチューブ閲覧、グーグル・マップが電話機能や電話帳と連携しているとのこと。 iPhone用にデータ変換したユーチューブの働画も、Wi-Fiを使って快適に見られるらしいが、どの地域でWi-Fiのサービスをしているのか、は分かりません。



前々回に本欄で紹介した、薄型テレビの続報です。 前々回で、プラズマ不利と報告したのですが、最近の情報によると10%ぐらいの売上げダウンが報告されているようです。 本家の松下の売上げがわずか1%ですが低下したとのこと。 今日の朝刊の折込チラシでも、プラズマはワンランクかツーランク小型の液晶と同レベルの価格帯になっていました。 まあ60インチとか、100インチとかの超大型のもの以外は、液晶になってしまったのではないでしょうか。 特に小型が多い日本では液晶がメインになって来ています。



最近買った薄型TVはやはり、東芝 Regza の H3000シリーズ。 300Gbのディスクが搭載されていて、追っかけ再生とかいろいろな機能が、最低限ですが付いていて、TVとの連携も良くて、TVとHDレコーダーを別々に買うよりは5万円以上もお得です。 使用した印象は、BS/CSチューナーは流石に一つしかありませんが、地デジはチューナーを2台搭載していて、TVを見ながら録画できます。 おまかせ録画は、連ドラ録画しかないので少し使いにくいですが、まあまあ使えます。 チャンネルの切り替えは、シャープなんかに比べて少し速いです。 一方、電子番組表の表示は遅め。 再生は、スキップが付いているので、CM飛ばしがやりやすい。 などなど。



今週の読み物は、先月の本欄で紹介した「超リタイア術」で引用されていた、元禄御畳奉行の日記―尾張藩士の見た浮世 (中公新書 (740))神坂 次郎 著¥693税込。最近、江戸時代にハマっていて、いろいろ読んでいますが、本書はまあまあ読みやすくて、実質的な失業者である江戸時代後期の武士の生活をなまなましく紹介します。 仕事らしい仕事も無く月3日出勤、出張すれば接待の嵐、ヒマを持て余す現代にも通じる内容です。



朝日文左衛門重早という愛すべき侍にめぐりあってから、もう二十年ちかくになる。文左衛門、芝居を好み詩文に傾倒し博突と酒色に耽溺し、ヒステリックな二人の妻に悩まされ、武芸十八般にあこがれ片っ端から入門するが、気力、体力ともになく終生ヒョボクレ。尾張方言でいうその気の弱い〝兵法暗れ″文左衛門が、暮夜ひそかに天神机を引き寄せ筆を走らせつづけて二十六年八ヵ月、三十七冊、およそ二百万字。稀有としかいいようのないこの彪大な日記『鸚鵡寵中記』を通して、文左衛門の生涯を追いながら、元禄の名古屋城下に生きた下級武士や庶民男女の表情を、体臭を、哀歓を泛びあがらせてみたいと、ながいあいだ思っていた。(本書あとがきより)