今月のひとこと2006年4月号





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4月1日
やっと株価も17000円を超えて、年明けからの低迷を脱したようです。 しかしハイテク関連はミニバブルの後遺症か、まだ低迷している銘柄も多くあります。 物価も4ヶ月連続のアップですが、市場にはまだまだ慎重な見方が根強い様子です。 日銀の量的緩和策の縮小にもあんまり影響は受けなかったようで、この調子ですと秋口には公定歩合の0%政策も変更になるでしょう。 アメリカにはインフレ懸念が出てきて、利上げになっていますし、そのために円レートはまた下げに転じました。 これも株価に好影響を与えています。

政局は迷走に迷走を重ねて、民主党の一人相撲と自責点で勝手に倒れてしまいました。 前回の本欄でも紹介しましたが、あまりにも情けない結果です。 危機管理能力と言うより、議員としての資質、日本の政治を任せるための資質に大いに欠けると言って良いでしょう。 若いから、と言う話もありますが、ケネディは43歳で大統領になって、あのキューバ危機を乗り切ったというか、フルシチョフに勝ったのです。 単なる比較は出来ないと思いますが、あまりにも頼りない。 ちなみに、ケネディの暗殺に使われた教科書ビルが取り壊しと言う話があったが、結局取り壊しになったそうです。

以前の本欄でも取り上げたことがありますが、ケネディ暗殺の場所は今でも当時のままで、以前に行った事がありますが、本当にあの報道で流される風景がそのまま残っている感じです。 発砲があったと噂されるグラシノールの上の木の塀までそのまま残っていました。 また、映像で見るよりも意外に狭くて、グラシノールの上から、パレードの車までは目の前と言う感じです。 オズワルドが撃ったとされる教科書ビルからケネディまでも80mしかありません。 また、ちょうど坂になっているので教科書ビルから狙うと目標はほとんど動かないような位置になります。 かといってほとんどの人が信じているように種々の状況から、犯人は複数で、オズワルドは身代わりにされたと言う事でしょう。

最近のWinny騒ぎは大変なものですね。 それも機密が最重要視される警察とか自衛隊とかから情報が漏れていると言うことは大問題です。 特にそう言う組織からの情報は興味を引くので情報漏洩が問題となるのでしょうが、それにしても多すぎます。 特に、実質的な軍隊である自衛隊からの情報漏洩は大問題でしょう。 海上自衛隊からは暗号表まで流失したと言うことです。 未だに暗号表を使っていることも問題ですが、自衛隊全体の情報管理が杜撰なのでしょう。 少なくとも私物のPCを持ち込ませることは厳に禁止しないといけません。 また、最近では大容量のUSBメモリが入手できますので、これにコピーして持ち出せばいくらでも持ち出せます。

もっと基本的な問題は、情報の詰まったPCの持ち出しや盗難です。 日本の企業などの組織は何でノートPCが好きなんでしょう? 元々書き物をするための高さに作ってある机の上にさらにノートブックを置いて、高さの高くなったキーボードを不自然な姿勢で使っているのでしょう。 画面も小さい。 価格も相対的に高い。 問題はデスクトップと異なり、いつでもカバンに入れてでも持ち出せると言うことです。 デスクトップはいくら小型のものでも人目に触れずに持ち出しは出来ないでしょう。 安いデスクトップのUSB機能を殺したものを推薦します。 導入コストも安くなります。

さらにもっと基本的な問題は、私物のPCを業務で使っていると言うことです。 予算が無いとかいろんな理由があるのでしょうが、マネジメント不足と言うか放棄に近いと思います。 ノートブックにこだわらなければ、5万円以下、3万円ぐらいで立派なPCがありますので、それを導入すべきでしょう。 こうなってくると問題はソフトのコストです。 OSはともかく、マイクロソフトのOffice一式が高すぎます。 ここは組織で統一して、フリーのOpen Officeなどを導入すべきでしょう。 また政府もこう言う取り組みを支援すべきです。 OSも高いXPはやめてLinuxを使えば最近はほとんどWindowsと変わらないGUIになっています。

それともっと重要なのは、管理職です。 私は何年も前から、管理職のIT能力が必須と言い続けてきました。 ITやPCは強力なツールです。 強力であればあるほど使い方によって副作用が多く出てきます。 少なくとも小さくとも組織の長であれば、その知識は専門家はだしであるべきです。 労務管理の知識の無い人は管理職になれません。 管理職登用の段階で何らかの試験があって、フィルタリングされます。 しかし現在ではITの知識が無くても管理職になれます。 むしろ誇らしげに私はITオンチですから、と言って憚らない人が多すぎると思います。 少なくとも一定の数の部下を持つ組織の責任者は、ある程度のIT知識の試験や資格を課すべきでしょう。 IT環境がどんどん高度化する中で、組織の責任者の、何の責任があるのか分かりませんが、責任を果たすためにも、必須であると思います。 このような時代では、少なくともITオンチの人は責任者になる資格はありませんし、勉強も必要です。

どこかの県警の捜査課長のPCから捜査資料がWinnyを介して流失したと言う報道がありましたが、知らない間にWinnyがウイスルの如く入り込んだような印象をもたれている方が多いと思いますが、Winnyは、ある程度のIT知識が無いとインストールできません。 ワンクリックでインストール出来るものではありません。ネットワークの設定もそれなりにいじらないといけないので結構大変です。

ここからは推定ですが、この課長さんは何をしたかったかと言うと、AV見たかったのです。 仕事ではITオンチなんでしょうが、こう言う話になると俄然元気が出てくる人も多くて、Winnyを勉強して、一応のネットワーク設定を行ったのです。 そうでないとWinnyには接続できません。 さらにこのWinnyにウイルスが感染して、他のPCから丸見えになり、それで誰かがコピーしたのです。 流出と言うと勝手に情報がどこかに出たのか、と言う感じがありますが、そう言うウイルスやスパイウエアはありますが、Winnyの場合は誰かがコピーしないと流失しません。 そう言う意味では、非常に話題性のある、警察や自衛隊関連の情報が狙われたのでしょう。 普通の人のファイルの中身が見えていても、それをコピーしてどこかの掲示板にアップするようなことはしないでしょう。

最近はスパムメールが物凄く多いです。 スパムを削除するのは良いのですが、ついでに正規のメールまで削除されてしまう場合があります。 スパムの疑いのあるメールは削除せずに一つのフォルダに集めておいて、時間のあるときに一応見てみるのですが、この時に正規のメールを見つけることが多くなりました。 要するにメールは確実に届くと言う確率が減ってきたと言うことです。 ネットワークやシステムが貧弱な時代にはメールは必ず届くものではありませんでしたが、最近はこのSpamによってメールの配送確率が落ちてきています。 やはり受け取ったメールには返事を出すようにしましょう。 返事がなけれがもう一度出します。 メールをもらったら変事を返すのは、こう言うSpam対策ではなくて礼儀の問題でもあるのではないでしょうか。

今月の読み物は、ITの話題が多かったので、私の知り合いが書いていた本を紹介します。ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる ちくま新書 梅田 望夫 (著) ¥777(税込)。 まあ少し見方が一面的かな、とは思いますが、これからの5年を考える点では面白いと思います。 バラバラとある情報を少しまとめたと言う感じ。 筆者が元居たコンサルタント会社を辞めてアメリカのスタンフォードに事務所を構えた時に一度行った事があります。 またコンサルタント時代にはいろいろやりあった仲でした。

確かに、決着が付いたと思っていた検索エンジンの分野でこのようなやり方があったのかと、Googleが出てきた時には思いました。 30万台のPCを繋いで処理していると言うことは下手なグリッドコンピューティング顔負けです。 自前でサーバーを持つのはダサい、みたいな雰囲気がありますが、Googleを見ていると自前で持つことの重要性が良く分かります。 私も人には、レンタルサーバーにしろと助言しますが、自分ではこっそりサーバーを自前で持っていました。 何か心苦しかったのですが、これで心が晴れました。

5年前に、現状のIP電話やFTTHの隆盛やGoogleを予言した人は居たでしょうか? これからの5年はどうなるのでしょう? ちょうど5年後にはアナログTV放送が停止します。 しかしそれまでにはいろんなことが起きるでしょう。 5年後にはまた世の中が変わっているのではないでしょうか。

序章 ウェブ社会―本当の大変化はこれから始まる
第1章 「革命」であることの真の意味
第2章 グーグル―知の世界を再編成する
第3章 ロングテールとWeb2.0
第4章 ブログと総表現社会
第5章 オープンソース現象とマス・コラボレーション
第6章 ウェブ進化は世代交代によって
終章 脱エスタブリッシュメントへの旅立ち

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる
誰もがパソコンを自由に使えるようになり、ブログなど情報発信を容易にする手段が普及、Googleの検索エンジンなど情報を取捨選択する方法が広まったことで、Webの世界が変わりつつある。いわゆる「Web2.0」だ。

著者は、ネットの「あちら側」と「こちら側」というユニークな視点で、Webの進化がもたらす影響を解説する。あちら側とはGoogle、Amazonなどがネット上でサービスを展開する世界。こちら側とは、企業内で閉じた情報システムなどのローカル環境を指す。

「あちら側」では、Googleなどの圧倒的な資金力と知の集積により、高品質なサービスが無料で提供されるようになった。一方の「こちら側」は、依然として高いコストを投じて、閉じたシステムを開発し続けている。著者は今後10年間で、システムや情報をこちら側に持つ時代から、あちら側のサービス、情報を利用する時代へシフトすると予想する。

実際、Googleのサービスを利用して、従来なら開発に数億円かかったシステムを、数十万円で作った企業も出てきた。この流れは企業のIT環境に大きなインパクトを与えるものだ。ITにかかわる人なら必読の一冊と言える。
(日経コンピュータ 2006/03/20 Copyrightc2001 日経BP企画..All rights reserved.)



今月の一言 2006年3年号





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3月4日
今月はあまりにもばかばかしい話だったので、触れないでおこうと思ったのですが、やはりひとこと言っておかないと気がすまなくなりました。 民主党にはそれなりに期待していたのですが内情がバレバレでがっかりしました。 前原代表も京都なので、党首になる前は集まりで見かけたことがありますので親近感もありました。 問題のメールは、もしあれが単なる文書だったら怪文書で片付いてしまったと思うのですが、メールの形式を取っていたので信用したのでしょう。 またあれを持ち込んだ西澤フリー記者は周辺の話をちりばめて信用性を増したようですが、これはまったくの騙しの手口そのものでしょう。

今回の事件で嫌な感じは、政治の側面を外すと、ITの雰囲気をちりばめた詐欺事件と同じです。 なんで文書なら信用しないでメールなら信用するのか。 若い民主党でも、ITオンチであることを暴露してしまいました。 メールなんていくらでも作れるし、またそれを印刷したものと言うのはどんなもので作れます。ワープロかエディタで修正もしくは最初から作っても問題なく作れます。 また今回の件でもっと稚拙なのは、ToとFromが同じアドレスであったと言うこと。 こんなのは簡単に直せるので、ホリエモンのメールをどこかから入手してきて、そのデータを適当に入れ込めば、もっと信憑性が高く見えるものを作ることは容易です。

これのみならず、ITの世界では本欄でも、よく紹介しますが、とんでもなく複雑な騙しのテクニックがあって、これに比べたら今回のメールはあまりにも稚拙な冗談としか思えません。 日本国の第1野党の党首もしくは国会対策委員長が、これに騙されると言うのは、これから政権党になって、その中でIT政策を担っていくとしたら、あまりにも寂しい対応でした。 もっと巧妙に作られた偽メールならどうするんでしょう。 まあ、そこまで行ったら与党の妨害があったとか何とかで、うやむやになっていくんでしょうが、本来の姿ではありません。 圧倒的与党の中で、4点セットも予算もにも抵抗できないとして、堀江メールで逆転を狙ったのかもしれませんが、もしそれが嘘だったら、と言う観点が見えてきません。

よく情報は官僚や与党が握っていて、野党には調査能力が無く不利であると言うことをよく言いますが、今回の事件で本当に調査する気が無いのだと言うことが良く分かりました。 言い訳にしているんですね。 議員には税金からお金をつぎ込んで、片手間でやるんではないのですから、これくらいの調査はしないと話にならないと思います。

少々ナーバスになっていたところに、今月の読み物でご紹介する素数を思い出しました。 本欄でも過去に取り上げたことがありますが、昨年末にまた新しい素数が発見され、それも分散コンピューティングで行った結果と言うことを思い出して、今回ご紹介します。 昨年の12月15日に ミズーリ州立大学のDr. Curtis Cooper と Dr. Steven Boone が43番目のメルセンヌ素数を発見しました。 その 発見された素数は 230,402,457-1 で、 9,152,052 桁となり、Electronic Frontier Foundationの $100,000 賞金が出るとの事です。 ちなみtに上記のリンクをクリックすると、約9Mバイトの数字を見ることが出来ます。 しかし9Mバイトがほんの一瞬で見えるということはすごいな、と改めてITの進歩を時間した次第。 前回に紹介した時はなかなかそうなっていませんでした。

また、面白いのは、インターネットを介した分散コンピューティングによって素数を探すプロジェクト「Great Internet Mersenne Prime Search (GIMPS)」によって発見されたと言うことです。 皆さんも簡単に参加出来ますので、GIPMSのサイトに行って処理ソフトをダウンロードするだけで、PCの空き時間に計算してくれます。 GIMPSは1996年から、これまでに9個の素数を発見しているそうです。 運がよければすぐに発見できて、発見者の名誉と賞金を手に入れることが出来ます。 素数がどのようなパターンで現れてくるかは未だに数学上の未解決の謎とされています。

今月の読み物は、「博士の愛した数式」新潮文庫、小川 洋子著 ¥460税込。 書評で先に知っていたのですが、どうと言うこともない小説ですが、ほんわかして心が温かくなる不思議な読み物です。 今年は初めからライブドアとか4点セットとか偽メールとか、メダルの取れないオリンピックとか、いろいろありましたが、それに対する清涼剤的にも余計に印象に残りました。 80分しか記憶が持たない数学者とお手伝いさんとその子供、数学となぜか阪神タイガースと江夏。 そこらに数論の話が出てきます。友愛数とか完全数とか忘れていた懐かしい数字が出てきます。

ちなみに友愛数の一番小さいのが小説に出てくる220と284で特別の関係を示しています。現在でも550組も発見されています。 完全数は、流石に23個しか発見されていなくて、その2番目の数字が28で、これが江夏の背番号と言うわけです。 この他にも、突然にオイラーの等式が出てきます。 著者は不恰好と言ってますが、確かに綺麗。 パイと虚数とeがこんなに綺麗に収まるとは、自然の不思議さをつくづく感じます。 オイラーの等式や公式をについて知りたい方は、吉田武 著の大ベストセラー『オイラーの贈物』(海鳴社, 1993 ¥3,150税込)をご覧ください。 教科書なのでパラパラとは読めませんが。 オイラーの等式は「人類の至宝」,「人類史に残る不朽の名作」。

「BOOK」データベースより
代数、幾何、解析。数学の多くの分野は唯一つの式に合流し、そしてそれを起点に再び奔流となって迸る。ネイピア数、円周率、虚数、指数関数、三角関数が織りなす不思議の環:オイラーの公式。ファインマンは「これは我々の至宝である」と嘆じた。本書は、この公式の理解を目標に、数学の基礎を徹底的に解説して、三万部を越えるベストセラーとなった独習書『オイラーの贈物』の完全文庫化であり、増補改訂版である。記述は極めて丁寧かつ平明であるため、意欲溢れる中高生の副読本としても好適である





今月の一言 2006年2年号





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2月4日
2006年が空けた途端に株式市場は証券市場のみならず政界も巻き込む、大騒ぎになりました。 このまま現在の市況が続くとは考えられずに、どこかで調整局面があると、みんな思っていましたが、こんなに早くやってくるとは思ってみなかったでしょう。 日経平均はほぼ元に戻ったのですが、値動きの大きな小型株はまだ完全に復活してる訳ではありません。 特にライブドアが取引の大半を占めているマザーズは大打撃です。 元々東証1部を中心とした大型株に注目が集まっていましたので、それが今回の事件で加速された面があります。

政界では竹中元金融担当大臣の責任が大きいと思います。 銀行にあれだけうるさかった竹中さんが一種お墨付きを与えたことになる事の重大性を認識していなかったのは問題と思います。 それに他にも、きな臭い話が多い。 俗にMHKと言われていて、もちろん村上、堀江、木村のことですが、特に問題は木村剛氏。 竹中大臣の経済政策の最大のブレーンとして改革に大きな影響を持った人ですが、中小企業を支援するために設立した日本振興銀行を巡って以前からごたごたが続いていて、しかも木村氏の親族を使った資金流用が疑われています。 まあ金額も数億円だから良いと言うのでしょうが、あれだけ正論をぶった人ですからその失望も激しい。 これから更に何か出てくるのかもしれません。

竹中さんは経済学者として、また行政の責任者として、ライブドアに関して何も疑いを持たなかった、と言うのは資質が疑われます。 それこそ免許証を持たずに運転していると言われても仕方が無いでしょう。 150兆円とも言われる個人資産を直接投資に回すというなら安心して投資出来るように、しっかりと説明する責任があります。

村上氏はまだ尻尾を出していませんが、叩けば埃が出るでしょう。 今日の新聞ではライブドアを批判していました。 ライブドアはこの後に説明する粉飾決算やMSCBとインサイダー取引で株価を上昇させ、更には政界とのパイプも作り、これから更に大きくしようとしていた矢先に検察が叩いたと言うことでしょう。 このまま議員になり、格付けも得て、本格的な上場企業となっていたら、恐らく政界を大きく巻き込んだリクルート事件のようなものになったのではないでしょうか。

ライブドアは最初から、かなり胡散臭かった。 楽天やヤフーでも少しおかしいところがあったんですが、ライブドアはもっとも胡散臭い。 楽天より利益が大きいとホリエモンが見栄を切っていた時もありますが、この利益の源泉がなににあったのか、すぐに言える人はいなかったでしょう。 ルールいっぱいに発想を豊かにチャレンジして、良い意味の拝金主義も多少は入れて、新時代のアメリカ型の経営を目指しているのか、と思っていました。 常々その方向は大体良いが、ホリエモンは好きにはなれないと言っていましたので、その直感が当った感じです。

ライブドア事件の本質は、そんな格好の良いものではなくて、旧態然とした粉飾決算です。 匿名投資組合やMSCB(転換価格(下方)修正条項付き転換社債)を使って、自社株の売却を自社の利益に付け替えたと言う構図です。 この間に海外の口座使ったり、いろいろな目くらましを使っているらしいので、その違法性を認識していたのは間違いないでしょう。
このスキームに違法性が無いとなると、株価が付いている限り、自社株を発行して、それをお金に変えて、自社の利益に計上することが(理論的には)無限に出来ることになり、いくらでも利益が上がることになります。 その資金も自社から融資の形で提供すれば、お金がぐるぐる回って、その回る度に利益に計上されて、利益が上がると株価は上がって、更にこの仕組みの効率が良くなると言う、いわゆる錬金術と言うことになります。

MSCBと言う言葉に覚えはありませんか? そうです、あのニッポン放送とフジテレビの買収騒ぎの時に、リーマンブラザーズから800億円の買収資金をMSCBを使って調達しました。 この結果、リーマンブラザーズはほとんどリスクなしに、短期間に10%の80億の利益を上げたのです。 おそらく、これを間近で見たホリエモンは新たなマジックのネタを発見したのでしょう。 その後の買収ではこの手法が多用されています。 しかしこのMSCBと言う仕組みは究極のインサイダー取引ではないのでしょうかね。 MSCBが発行されたら株価が暴落するのは常識です。 まあこの場合は暴騰するんですから、株価がどうなるか分からんと言えばそうなんですが、MSCBの仕組みそのものはライブドアとは関係ないですから。

元々MSCBみたいなややこしいものが何故あるかと言うと、業績の落ちた企業の資金確保はなかな難しく、社債の発行もままなりません。 出資側のリスクを軽減するために、MSCBがあります。 まあ発行する側から言うと、最低でも10%の利息をを保障する借金だと思えば良いでしょう。 一般にMSCBは株価が下がった方が良い様にスキームが作られている場合が多いのですが、それは業績の悪い企業の株価が落ちた時のリスクヘッジとしてあるわけで、逆に上がった時には下がった時より大きな利益が得られるのです。

こう言う仕組みをよく勉強したホリエモンは、価値の無い企業を買収してMSCBを発行させ、それをネタに利益を獲得すると言うスキームを考え出したのでしょう。 これ自身の違法性はあんまり無いと思いますが、この過程で株価操作が行われて株価高値が演出されて、インサイダー情報によりMSCBの利益がほっとくと10%であるのを更に大きくしました。

それにしても、かわいそうなのはヘソクリをはたいてライブドアを買った人たち。 TVで出ていましたが、赤ん坊を抱えた若い奥さんが、いくら買ったのですか? と聞かれて、「100株・・・」と答えていたのが印象的。 このようなお金が関連の株式を含んで1兆円ほど消えてしまったことになります。 大きなお金ですね。 元は1万、2万の財布の現金ですから。

ライブドアの単元株も1株と言うのはビックリです。 最初にライブドアの取引を見たときに、取引高にやたらと端数が多いので、えっと思って見てみたら1株が単元株。 これが10億株あって、1株から取引出来る。 これだけでも東証の単元株式の半分を占めるそうです。 これが原因で東証は取引を途中で中断しないといけないことになりました。 個人株を増やす、取引を活発にする、と言う目的はあったはずで、それが達成されたらシステムがダウンと言うのでは、まともにモノを考えているのか、と言いたくなります。 どこか機能不全を起こしています。

今月の読み物は、「中国農民調査」陳 桂棣 (著), 春桃 (著), 納村 公子 (翻訳), 椙田 雅美 (翻訳) 文藝春秋 ¥2,900(税込)。 訳者としてのコメントから。納村・椙田共訳の本書は、中国で昨年2月、発禁となった問題の書。著者夫妻は3年の年月をかけ、中国でも有数の貧困省・安徽省を踏破して農村問題の発生地を取材。1990年代からいまに至るまでの農村事情をつぶさにレポートした。全体は農民暴動事件の実態、農村問題の本質、農村税制改革のプロセスに分かれている。書かれている人物は、農民から党の最高指導者まですべて実名。04年1月、原著出版後、中国では全国的に注目される話題の書となったが、発禁処分を受け、海賊版が出回ることに。その数、昨年の推定で700万部を超える。いわば「幻の超ベストセラー」。社会保障も教育の保障もないまま、50年あまりひたすら食糧生産の道具として使われてきた。その現実は本書を見ればよくわかるだろう。

題名は毛沢東が実際にやった調査報告と同じタイトルですが、こちらは農民問題ルポ。農民農村農業の三農問題を正面から捉えています。最近では農民の暴動が増えているとの報道がありますが、その規模は不明です。 政府でも数千件の暴動を認めていますので、実際は7万件/年の暴動があるとの情報もあります。中国の農民問題は、日本ではほとんど知られていませんが、これを読むと良く分かります。 300ページもあって、2段組で細かい活字で、中国人の名前が実名でどんどん出てくるので読みにくいな、と思いましたが、ややこしい人名などは読み飛ばしていくと、基本的にルポなのでワリと早く読めます。

結局中国の9億の農民は、この時代においても共産党支配以前の地主支配の構図から抜け出ていないのではないかと思われます。 村の村長の裁量で税金や費用が徴収されると言うのは過去から全く構造として変わっていないのではないかと思われます。

これに対して、中央政府は、温家宝や朱鎔基はそれなりに頑張って実情を知ろうとするのですが、回りがそうさせない。 またあまりにも中国は大きくて、1人や2人がいくら権力を持っていてもどうしようもない、と言う感じがします。 更には、中国には戸籍が農村と都会の2つがあって、その間は完全に切り離されて、差別が起きていると言う矛盾もあるようです。 恐らく最初は農民を守る趣旨で作られたのでしょうが、現在では都会に出てきた農民の差別に繋がっているようです。 中国を正しく理解するための書としては最適。






今月の一言 2006年新年号


1月1日
2006年 あけましておめでとうございます。

昨年は特にIT分野での話題が多く、株式資本主義の問題とか、テレビとインターネットの融合とか、はたまたシステムの問題とか、構造設計の偽造とか、ITの本格的な幕開けにふさわしく、いろんな事が起きました。

特に話題の大きかった株式の世界では、何と1年で40%も株価がアップすると言う、バブル時代を髣髴とさせるような状況になってきました。 アナリストの昨年の予測では、昨年の株価は12000円から12500円の予測、最もアグレッシブな人でも13500円だったそうです。 プロと言えども、こう言う状況では予測が出来ないということでしょう。 来年の予測では、2万円から3.5万円と言う人が居ましたので、さて来年の正月はどのようなコメントになっているんでしょう。

この中でもIT関連の最大の話題は、みずほ証券の誤発注問題でしょう。 誤発注と言うのは良くあることだと思います。 ちょっとしたキーの打ち間違いで起きます。 我々が使うインターネットのシステムでは、チェックがかかっていますので、上下値幅制限外ではエラーになります。 またあんまり大きな取引もエラーになります。 以前に1株と1000株を間違えて入れてしまったことがありますが、これはエラーになりました。 これがノーチェックでしかも成行だと取り消しができませんね。 時々どえらく高い買いがありますが、あれもなんかの間違いないしは勘違いでしょう。

個人で20億 儲けたとか、100億以上の利益を上げた証券会社が自発的に儲けを出して基金に入れると言うような事が報道されています。 中には61万円の株を本当に1円で買ったと思っている人がいるようですが、取引は10万円の制限幅の下限で取引されますので、このようなことはありません。 従って、20億儲けた人は50億を突っ込んでるんですから、それだけでも儲ける価値はあるでしょう。 逆にその後の値上がりで、本来はもっと儲かったはずが、90万で手放さないといけなくなってしまいました。

ちなみに問題のジェイコム株はその後220万を付け、現状でも160万ですので、あの時90万で買って220万で売り抜けた人の方が、率では上です。 むしろあのような状況の中で、瞬間的に50億円もリスクにさらしたのは賞賛に値します。 もっとも、あれはみずほの社員と結託したものであったと言う噂もあるくらいです。 まあ1日では無理でしょうが、数日のうちに利益が50%でるのは珍しくないはずですので、一概に汚い儲けでは無いと思います。 少なくとも、利害関係の無い人の利益が遺失した訳ではなく、極めて日本的な解決であったわけです。 当のジェイコムは突然有名になってホクホクでは?

技術者の片割れとして、気になったのはビルの構造設計偽造問題。 偽造できないソフトを作るとかいう話がありますが、ナンセンスな話で、これも日本的なノー天気な話です。北朝鮮の偽札作りでも分かるように、存在するものは動機さえあれば必ず偽造はされます。 偽造を前提にシステムを作るべきでしょう。

例えばクレジットカードやバンクカード。初期のバンクカードの磁気ストライプには、何と暗証番号が入っていたのです。 これには唖然としますが、技術的には分かっていたことで、原因は特許が外国の会社に取られていて、おそらく特許料の支払いをケチったのでしょう。 この特許が切れてやっと、暗証番号はセンターで管理されて、磁気ストライプからはなくなりました。

しかし、後日談があって、実は古いカードがまだ残っていて、そのカードを入れるとそのカードの暗証番号が優先されると言うとんでもない事に最近までなっていたそうです。 テレビの番組でやってました。 実際この問題で被害にあった人がいるそうです。 日本人の平和ボケが露呈された一件でした。 本来、特許料を払っても何をしても、暗証番号をカードに入れない、また新しいカードが出来た段階で、古いカードは回収してシステム的にも使えないようにすべきでしたが、変な顧客志向のおかげで問題となりました。

構造設計偽造問題でも、応力係数が簡単に変更出来るのが問題で、通常は1.0のところを0.5とかやったわけで、TVで画面を見ていてもごく簡単な係数の入力でした。 少なくともこれが1.0以下にはできないようになっている、もしくは1.0以下にした場合はかなり特殊な場合なので、全ページのフッタにその旨を表示するくらいの対策が必要でしょう。 最終的にはこのようなソフトを認定した省庁の責任でしょう 『Super Build/SS2』。

また、設計問題ばかりに焦点が当っていますが、構造設計、施工設計、施工のいずれの段階でも偽造と言うか手抜きはあり得るので、監視が必要です。 少しでも安く上げて利益を得るというのは、人類の根源的な欲望だと思います。 この欲望に反するものは全て監視の対象です。 コストがいくらかかろうとも基本的には関係ない話だと思うべきです。

建築確認の手数料は15万円だそうです。 これではほとんどチェックは出来ないでしょう。 検査会社の社長が言っていたように、監督官庁に指導された手順に従って、適切に淡々と検査したと言うことです。 この手順の中にこのような大規模な偽造が想定されていなかっただけでしょう。

恒例の2006年予測ですが、まず経済分野の代表の株価は、何度かヒヤッとすることはあるでしょうが、2万円は超え3万円に近づくのではないでしょうか。 IT分野では、TVとインターネットの融合の論議がさらに深まるでしょう。 良くAOLとワーナーの合併の失敗が話題になりますが、その時と今ではブロードバンドの状況は全く異なります。 少なくとも現時点では、インターネットでの番組配信のインフラとしては十分なものがあります。サーバーの強化が必要でしょうが、最も時間のかかかるファイバーの敷設は完全に定着しました。

地上デジタルも本格化して、ファイバーや衛星放送、CATVとのせめぎあいも盛んになり、これから数年は混沌とした時代を迎えることでしょう。 地上デジタルは、その同報性を利用して、ニュース特に災害報道に威力を発揮するでしょう。 ケータイでの受信も出来るようになりますので、政府やメーカーが期待するような、双方向の特性はあまり生きてこないと思います。 ハイビジョンは、インターネットやCATVとの住み分けになるのでは無いでしょうか? 映画はファイバーを利用したオンデマンドが盛んになるでしょう。 ビデオレンタルとの価格競争になるでしょう。

デジタル放送の売り込みは最近激しいですね。 先につばを付けておこうかと言うことでしょうが、特に新しい番組をやっているわけでもないので、バタバタせずにしばらく様子を見るのが良いと思います。 従来のTVを使うためにはSTBと言うものが必要で、現状では5万円ほどします。 5万円あれば大きなブラウン管式のTVセットを買うことが出来ます。 1万以下のものの販売が期待されていますし、いずれはそうなるでしょう。 ETCの前例に倣って、いずれは国が補助金を出すと言う見方もあります。 いずれにしても、放送や通信は全体的な戦国時代になってきましたので、じっくり様子を見ることが大切です。

今月の読み物は、紹介するような本には出会わなくて、音楽と行きましょう。 ジャンルは好みがあるのでしょうが、ここはジャズです。 TVで聞いて良いなと思ったのでCDを買ってみました。 矢野 沙織、アルトサックス。 録音時には、1986年10月生まれの16歳だったわけで、ぱっと聞くとそういう感じはしません。 しかし良く聴くと少し弱い。 この辺がフュージョン好みのアメリカで受ける原因かも。 コルトレーンは良いのだが少ししんどい。 マイルスになると、しんどくて付いていけない。 かと言ってフュージョンではモノ足らんと言う人にぴったり。 しかし歳とると、だんだん演歌風になっていきますね。 ド演歌は論外としても、ポップス歌謡の中でも良いものがあります。 日本人やなと自覚します。


今月のひとこと 2005年7-12月号

12月3日

う~~む、日経平均がアッサリと15000円を抜きましたね。 今年の5月で11000円だったのが夢のようです。 5月にETFを買っておけば、そのまま36%、もし竹中さんの言ったように7000円の時に買っておけば2倍以上。 並みのトレーダーのパフォーマンス顔負けではないでしょうか。 投資信託なんか全くかないませんね。 じたばたして果ては手数料を取られて、しかもパフォーマンスが悪いとは踏んだり蹴ったり。 日経平均はいずれ2万円の大台には乗るので、それに備えて今のうちに買っておきますか。15000円が2万円になっても33%ですが。

各種のリモコンが、リビングにごろごろしてるのではないかと思います。 最近は何を買ってもリモコンが付いてきます。 DVDやTVを見る度に、リモコンをとっかえひっかえしているのではないでしょうか? 私も以前からこの状況に悩まされていまして、いろいろ試してみました。 その結果、どうもこれが良さそうとなったのが、この写真のリモコンです。

USBが付いていて、それでPCとデータのやり取りが出来ます。 操作面がLCDになっていて、LCDの画面のデザインをPCで変更できるのです。 ボタンの大きさもいろいろ変更できますので、自由度は結構高いです。 PCの上でボタンの配置などを決められるところが、もっとも面白い所です。 データもキチンと保存できるので、再設定しないといけないということもありません。 バッテリとの関係からか、画面の照明時間が少し短いですが、それも問題ないでしょう。 バッテリの持ちもまあまあで、短いという感じはしません。 バッテリがなくなってくると、赤外線が届きにくくなるみたいですが。

温度計が付いているのですが、この使い方が不明で、単に表示をするだけです。 一連のキー操作をまとめて行えるマクロ機能も充実。 設定も素直に出来ます。 他のメーカーのマクロ機能は全部リモコン側でやるのですが、物凄く難しくて、マニュアルと首っぴきでやらないといけませんでした。 欠点といえば、スリープ状態からの起動が少しかったるい。 画面を強く押すか、独立ボタンを押さないといけません。

最近のPCにはPC専用のリモコンが付いているみたいですが、AV用ではないか、少し前のPCには付属していません。 最近、インターネットやディスクに入った映画を見ることが多くなったので、動画再生はもっぱらPCを使っているので、リモコンが欲しくなりました。 それでいろいろ見てみましたが、一応合格点をだせるのがコレ。 製品の付属品的な扱い見たいですが、一応独立して使うことが出来ます。 値段もそこそこでオススメ。

インストールした最初は動かなかったので、駄目かと思っていましたが、リモコンの機能で、アプリを立ち上げると動きます。 先に別に立ち上がっているアプリとは連携しません。 キーボードのキー単位で割り当てが出来ます。 あらかじめWinDVDのキー配列が設定してあるようですが、私の場合は動きませんでした。 マニュアルにキー配列が載っていますので、それを参照しながら設定するとそんなに手間はかかりません。 まあいつも使うのは、早送りと再生・停止ボタンぐらいでしょう。

昨年の今頃から言われ出しているものに、ボットネットがあります。 総務省も今年4月に注意を促しています。 名称は「ロボット(robot)」のボットに由来しているんですが、ボットネットは、パソコンを所有者に気づかれずに悪用することを目的に作られたプログラムで、これに感染すると知らない間に自分のPCが、知らぬ間にスパムメールやDOS攻撃などの“加害者”になってしまう恐れがありあます。 代表的なボットには、SdbotやAgobot(Gaobot)、Spybotなどがあり、インターネット上でプログラム・ソースが公開されているものもあるそうです。 基本的にウイルスと同じですが、最も異なるのは、ウイルスがファイルを消したりすることを目的にしているのと異なり、ボットは感染しただけでは、何の症状もでません。 最近ではウイルスソフトをみんな入れているので、発症するとすぐに対策をされてしまうので、何もしないわけです。 このためにどの程度のPCがボットに感染しているか、分かっていないと言う基本的な心配があるわけです。 ウイルスソフトでも発見が出来ないケースが多くあります。

悪意のあるボットネット所有者は、この感染したPCを使って、いろいろな犯罪を行う訳で、最近はウイルスの発生がそんなに増加していないのは、ウイルス対策が効果を上げているのと同時に、このような発見されないボットのようなものが増えているのではないかと言う話まであります。 更にはボットネットの売買も行われているとの事で、自分のPCが知らない間にどんどん売買されていると言う事も、高い確率で可能性があり、ちなみに報道では1時間あたり200~300米ドルで貸し出している例があったそうです。 PCがその使用に関係なく処理が重くなったら、ボットの可能性はあるという事です。 そのためには、こんな小さなCPU負荷メーターはどうでしょうか? XPにもタスクマネージャーに付属していますが、サイズが大きいので、邪魔になります。

今月の読み物は、少し趣向を変えて、楽に読めるものにしました。 「国語入試問題必勝法」 講談社文庫 清水 義範 (著) ¥470 (税込)。

清水氏の作品の特徴は「パスティーシュ」。 要するにパロディであるが、それを少しも感じさせないのは流石。 私も国語の試験は苦手中の苦手で、本欄をお読みの方は理科系が多いと思いますが、その心境をものの見事に捕らえています。 書店に寄っては、入試問題のコーナーに置かれているそうです。 だけどタイトルにもなっている作品の内容は、半分は当るかも知れませんね。 「吉川英治文学新人賞」を受賞した作品でもあります。

内容は短編集で、「猿蟹合戦とは何か」は、あんまり面白くなかった。 旧仮名遣いも何かたどたどしくてイマイチ。 「時代食堂の特別料理」は、よく出来てるけどわざとらしくて平均。 「靄の中の終章」は、ボケ老人が主人公のボケを本人が語っている。 最後には意識が混濁して薄暗いもやの中で終焉を迎え、余韻が残ります。 自分がこうなったらどうしよう・・・

「ブガロンチョのルノワール風マルケロ酒煮」は秀逸。 最初は本気にして、マルケロ酒を真剣にインターネットで検索しました。 1本足の鳥なんておかしいと思いましたが。 また目黒のさんまのパロディが出てくるのもご愛嬌。

「いわゆるひとつのトータル的長嶋節」は、著者のパスティーシュ作家としてのテクニックを並べたという感じ。 「人間の風景」も同じようなもので、無理に4人で一つの小説を書くという設定を作ってしまっています。 その中の一人は元刑事で供述調書風になっているのは面白い。

「国語入試問題必勝法」は、まあ読んでみてください。 国語辞書だけで水素製造法の答案を書いてしまう、かんべむさしの「水素製造法」と並ぶ名作。 ピントが外れている文章こそ正解!問題を読まないでも答はわかる!?国語が苦手な受験生に家庭教師が伝授する解答術は意表を突く秘技。国語教育と受験技術に対する鋭い諷刺を優しい心で包み、知的な爆笑を引き起こすアイデアにあふれたとてつもない小説集。


11月3日

株価はやっと小型株に順番が回ってきて、突然上昇する銘柄が増えてきました。 日経平均も14000円が目前になってきました。 しかし考えたら、小泉内閣がスタートしたときが、14000円だったのですよね。 まあ、これからやっとスタートと言うところでしょうか。 原油の高騰も少々のことでは収まらないし、頼みのアメリカは土地バブルでインフレ懸念が収まらず、利上げをしました。 これでさらに円高になるのかしら。 それにしても為替は分かりませんね。 上がると思えば下がるし、下がると思えば上がる。 いっそ超短期の投機を信用取引でやったら良いのか。

今年の初めのライブドア騒ぎに代わって今度は楽天/TBS騒ぎです。 慎重な三木谷氏に似合わず迷走している感じですね。 楽天も大きくなってきて、今での成長を維持するのは、大変と言うことでしょう。 IPOしたときは、400億円ほど入ってきて、使い道が無くて、20億ほどITシステムに使って後は銀行預金と聞いた事がありますが、隔世の感です。 フジでも、TBSでも、阪神でも、買われるのが嫌なら公開しなければ良いので、現実に株式上場を取りやめた会社があります。 アメリカでもプライベートな上場していない会社は沢山あります。 バブルの頃、中堅のベンチャーでしたが、上場していない会社がありました。 社長曰く何で上場しないといけないの? 資金が必要でもないし、と言うことでした。 もっとも付き合いの銀行や証券会社からは、やいのやいのと勧誘があるとの事でした。

TBS・楽天でも問題になっている、テレビとネットの融合は着実に進展していると思います。 アメリカではAOLとワーナーの合併が失敗しましたが、当時のアメリカのブロードバンドの状況と日本の状況は大きく異なります。 日本のFTTHの進展がすばらしいと言うことでしょう。 10年ほど前にFTTHを実現するためには数10兆円のお金がかかると、NTTが主張していましたが、現実には着実に進展しています。

ディスクにビデオを記録する方式が浸透してきて、TVを放送と言う形で時間を合わせて見る必要性がなくなってきた、コマーシャルを飛ばして見る事が一般的になってきた、最低限2Mbps、通常でも6Mbpsあれば現在のNTSCレベルのテレビ画像を見ることが出来るようになった事、などが大きな理由でしょう。 現時点ではどうしてもテレビ放送でタイミング良く見る価値があるのはニュースだけでしょう。 劇映画は、録画しておいて自分の都合の良いときに見たら良いのではないでしょうか。 また、テレビのコンテンツと言っても、あの時間つぶし的なバラエティ番組がコンテンツと言われても、今ひとつです。

PCとビデオキャプチャーがあれば、番組表はEPGと言う電子化されていなすので、例えば気になるキーワードを入れておけば、自動で録画することが出来ます。 PCの電源の入り切りが問題となります。 自動でやる方法はありますが、ノートブックなら入れっぱなしでも問題ないでしょう。 私は古いノートPCとUSBのビデオキャプチャーと最近は1万円で売っている250Gバイトのディスク、それを入れるUSBのケースは2000円程度で入手出来、これらを組み合わせて録画しています。 古いPCにはUSBがありませんが、カードタイプのものを追加して使用します。もっとも古いPCはWindows98の場合がありますので、これをXPに上げる必要があるかもしれません。 新しいPCがあればそれに越したことはありませんが。

ネットの世界にも、テレビの民放みたいなビジネスモデルで、コマーシャルを視聴する代わりに無料の番組を見ることが出来るものがあります。 しかし、ネットの番組を見るのは現状では大変です。 まず、PCで番組をダウンロードする、もしくはストリーミングでダウンロードしながら見る。 このままではPCの画面でしか見れないので、ダウンスキャンコンバータでテレビの画面に写します。 ダウンロードするにはPCのしかもCドライブに数Gバイトの空きがないと駄目ですし、コンバータもたいしたものが無くて画質が極めて貧弱。従って、一般の人がネットで番組を視聴するのは至難の業です。 しかしながら、この状況も少しずつ改善されて来ていますので、その内には、簡単にワンタッチでネットの番組を視聴できるようになると思います。

現状のネット番組は、このような背景もあるのか、AVとかアニメばかりで、まともな映画はあんまりありません。 テレビの金土日にやっている映画のほうがレベルは高いです。 マニア向けのB級映画は沢山ありますが、一般的ではないでしょう。

このような状況の中での地上波デジタルはどう言う意味があるのでしょう。 これから売られるTV関連の機器には2011年(平成23年7月24日)に現状のアナログ放送がストップすると言うことを明記するとの事。 いかにもテレビを買い替えろと言わんばかりです。 無理に買い替えを強要すると、ネットに逃げてしまうのでは無いかと他人事ながら心配します。 まだ5年以上もあって、ITの世界で5年もあると様変わりしますので、2011年にはどのような姿になっているのか見物です。 すくなくとも私は、同じように視聴料を支払うのであれば、ネットで必要なときに必要な番組をその分だけ支払って見ていると思います。

今月の読み物は、鈴木宗男事件で有名になった、外務省の佐藤優氏の「国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて」¥1,680 (税込)。 なかなか文章がうまい。 下手な物書きよりうまいのではなかろうか。 独房生活の細かいところとか、ロシア人との付き合い方とかは、非常に興味がある。 これをノンフィクションと見るかどうか。 情報のプロと自認するだけあって、肝心のいわゆる機微な事柄については一切触れていない。 検察官との会話もどこまでが本当でどこまでがフィクションなのかは良く分からない。 しかし、それを差し引いて、完全な小説として読んでもなかなか面白い。 この人は外交官を辞めても物書きで食べていけるのではないかと思いました。

著者はロシア外交のプロとして鳴らした外交官であったが、2002年、いわゆる「鈴木宗男事件」で背任と偽計業務妨害の容疑により逮捕された。512日間に及ぶ拘置、独房生活の末、今年2月の第1審で下された判決は「懲役2年6カ月、執行猶予4年」。著者は即日控訴の手続きを取った。

本書は、著者の目が捉えた事件の内幕を赤裸々に綴った手記である。逮捕前夜に渦巻いていた外務省内部の権力闘争や自民党の内部抗争、さらには本件を「国策捜査」であると明言したという検事とのやり取りを、冷静に再現していく。また、政治家・鈴木宗男を著者は極めて高く評価している。バッシングにさらされた“腹黒い政治家”というイメージとは対極にあるような意外な人物像が浮かび上がってくる。(書評から)

出版社/著者からの内容紹介: 外務省、検察庁、永田町を震撼させる衝撃の告白手記! 外務省元主任分析官は、政治と外交の最前線で何を見たのか? 有能な外交官にして傑出した情報マン──。国を愛し、国のために尽くしたにもかかわらず、すべてを奪われた男が、沈黙を破り、「鈴木宗男事件」の真実と、「国策捜査」の実態を明らかにする。


10月1日

予想を超える株価の上昇で戸惑っている方が多いのでは無いでしょうか。あれよあれよと言う間に日経平均13000円を超えて、今や14000円を狙おうとしている状況です。 反面、小型株が多いジャスダック指数などは上がりはしているものの、そんなに上り方は急激ではありません。 最近は日経の後追いで上がることが多いようです。 上半期も何とか乗り越えて、下半期に注目が集まります。 10月3日が注目のしどころでしょう。

アメリカのハリケーンの被害も中期的に見ればプラスに働くと言っても良いでしょう。 原油の価格は高止まりですが、以前の石油ショックの時と比べて、その間の物価上昇を加味したら、そんなに高くないと言う話もあります。しかし、アメリカのガソリンがガロン当り3ドルを超えるのは異常でしょうね。 満タンで 20ガロン入れるとそれだけで60ドル。 100ドルに近づくというのは、金額的にはたいしたことはなくても、心理的に影響は大きいと思います。 10年前は、20ドル入れたらよく入ったなと言う感じでしたから。

ハリケーン被害のルイジアナ特に今問題になっているニューオールリンズはジャズの町で、一度行った時は、たまたまジャズフェスティバルの最中でホテルを確保するのが大変でした。 ノースカロライナから行ったので、直行便は無くて、乗り継ぎ乗り継ぎで丸一日かかりました。 フレンチクオーターでジャズを聴いて、次の日はミシシッピー川のクルーズで船に乗りました。

ニューオーリンズに代表されるルイジアナやその隣のミシシッピ、アラバマ、ジョージアさらに南のフロリダなどはアメリカの中でも変わったところで、元々カナダに移住したフランス人がずーっと南下して来て、メキシコ湾でとまったところです。 ケイジアン料理と言う言葉を聞いた事があると思いますが、これはカナダと語源は同じとの事。 その文化と、南部の黒人奴隷の文化が入り混じって特有の文化を形成しています。 英語でNew Orleans、フランス語でNouvelle-Orleans。 要するにヌーベル・オルレアンは、ニューオルレアンと言うことです。市内のフレンチ・クォーターには今なおフランス植民地時代のテラスが残っていて、郊外にはプランテーションの名残の大きな屋敷があります。 風とともに去りぬの世界です。 ちなみに、風とともにの舞台は隣のジョージアのアトランタです。

アトランタは日本人の多いところで、今では分かりませんが、JALが日本から直行便を飛ばしていました。 また気候も日本と似ていて、高温多湿です。 CNNやコカコーラやアディダスなんかが有名です。 また大きなコンベンションセンターがあって展示会が良く行われています。

話は戻って、ジャズは黒人が持ち込んだもので、ニューオーリンズのものは初期のビーバップまで。 プリザベーションセンターと言う単に古い建物があって、そこで観光客用に古いスタイルで、古い人が演奏しています。 ちゃんと聞いていないと怒られます。 まあその辺に昼寝しているようなおじいさんがやっているので、なかなか親しみがもてます。

ジャズのほかには、先ほど言ったケイジアン料理。 私はあんまりおいしいとは思いませんが、辛いのが好きな人には良いかもしれません。 アメリカザリガニを山と茹でてそれを片端から剥いて尻尾の方を食べるのです。 もっともおいしいのは生牡蠣。 大きいぷりぷりしたのが、大体1個1ドルで食べれます。 気候が暑いのですが、どうして牡蠣がおいしいのか良く分かりません。

またこの町は、有名なJFKの暗殺の取っ掛かりの町でもあります。 ジム・ギャリソンの本で有名になり、映画にもなりましたが、最初の切っ掛けはこの町です。 売名行為だとか言われながら地方検事であるジム・ギャリソンは容疑者を起訴しますが、大きな手抜かりで敗訴してしまいます。 後になってギャリソンの主張は正しかった事が分かってきましたが、関係者はみんな死亡してしまいました。

原因は亡命キューバ人がキューバのピッグス湾に進攻したのですが、最後の土壇場でケネディは支援を中止し、その結果進攻は失敗に終わりました。 その時の恨みで亡命キューバ人と心情的に同意したCIAなどの政府関係者が起こしたものと言われています。 つまり、キューバの目と鼻の先のフロリダとその近くのルイジアナは切っても切れない関係にあるのです。 また現地に行くと本当に実感できますが、ワシントンとは本当に近い。 一種独特の地域だと思います。

ニューオーリンズで知る人ぞ知るはポンチャートレイン湖です。 ちょうど真北にあって、先日のハリケーンで堤防が決壊して水が市内に流れ込みました。 大きな湖で、横長の楕円形ですが、真ん中に真っ二つに橋が架かっていて、これが20マイルあります。世界最長だそうです。 この橋を渡ると、下手なキーウエストの橋より、無限に伸びる橋の気分が味わえます。 ちょうど真ん中で船が通れるように一段と高くなっているところがあり、ここから眺めると、橋がずーっと伸びていることが実感できます。 私が行った時は晴れでしたが、雨の時は霧の中に吸い込まれていくようでなかなかのものと聞いた事があります。 一度行かれた時は、レンタカーを借りてお試しあれ。 片道通行料は1ドルでした。

キーウエストの話題が出たところで、今日の夜の映画の放送は、シュワルツネッガー主演のツルーライズで、これにキーウエストの橋が出てきます。 実写と実写出ないものがうまく組み合わさっているので、よく分かりませんが、概ねああいうものです。 最後のクライマックスに出てくるところは古い橋と新しいのが平行しているので、それも見ものです。 垂直離発着のハリアーが着陸する駐車場には車を止めた事があります。 そこの駐車場の地面の補強だけで5000万円かかったそうです。 ハリアーはジェット噴射を下向きにしますので、通常のアスファルトでは解けてしまうそうです。 ハリアーの実際の離発着はここだけで、これ以降の場面ではセットが用いられているようです。

ちなみにキーウエストの、一番長いところは17マイルだそうで、ポンチャートレイン湖の方が長いと思います。 いずれにしても道路を走っている限り、航空機から撮ったような、場面は見えず、普通の道路を走っているのと変わりません。 念のため。

今月の読み物は、少し難しくて「量子コンピュータ」ブルーバックス 竹内 繁樹 著 ¥987 (税込)です。 現在のコンピュータの限界はどこにあるのか、それを打ち破るにはどうしたらよいのか、を教えてくれます。 量子の話もあり、多少難しいです。 しかし、理解できないと言う量子物理学も、単なる電子の動きだけでなく、量子の本質を突いたところで現実に動作していると言うのが驚きです。 量子物理学は要するに、結果オーライの科学で、本質的に、物質はどうなっているのか、究極の粒子はナンなのか、は数学的な概念では分かっていても、現実にはどうなっているのかは突き詰めずに、結果オーライとなっていると思います。 一番良い例は、朝永さんがノーベル賞をもらった、くりこみ理論は、例えば電子の裸の電荷の測定は諦めて、外から見た電荷を計算すると言うだけで、結果が実際と物凄い精度で合致する、その理屈で作ったマイクロチップがちゃんと動いている、と言うだけの事です。 100回やって100回同じ結果だったから、101回目も同じ結果になるであろうと言う事で成り立っています。

「重ね合わせ状態」が可能にする、まったく新しい計算のしくみ。 「量子ビット」を使うと、なぜ「超並列計算」ができる? 莫大な計算結果の重ね合わせ状態から、答えを1つに確定できるのはなぜ? まったく新しいしくみによって、現在のスーパーコンピュータをはるかに凌ぐ力を発揮する量子コンピュータ。 研究の最前線にいる著者が、従来のコンピュータのしくみと対比させながら、その基礎と実現にむけた試みを平易に解説。 (出版社/著者からの内容紹介)


9月5日

とうとう選挙になりましたね。 先月の「一言」を書いたとたんに解散でした。 大方の見方でしょうが、まさか解散が本当になると思っていた人は少なかったのではないでしょうか。 現職の議員ですら解散が無いと思っていたのですから。 今日の新聞記事では、自民党優勢と出ていましたが、結構有権者はバランス感覚がありますから、自民党と民主党はまあまあ互角になるのではないでしょうか。

民主党も自民党みたいにガラポンをしないといけませんね。 岡田さんはまじめに頑張っているのが良く分かりますが、本当に政策を実行しようとすると、官僚はともかく自党の中での足の引っ張り合いで躓くのではないでしょうか。 だけど経済が低迷して10年、やっと政治の時代に入ってきたのではないでしょうか。 今まであまりにも無関心でありすぎたと思います。

我々が直面している財政問題とか年金問題とか、は結局根が同じなので、どこから手をつけても良いので、郵政なら郵政を徹底的にやったら良いのですが、外交問題はそうではありません。 政治改革と見れば多少は前進するのかもしれませんが、いくら何でも外交問題と郵政問題は直接関連しません。 流石の小泉首相もそこまでは言ったことが無いでしょう。 北朝鮮は論外としても、中国や韓国問題、一番大きな安保理への参加失敗、などろくな成果がありません。 首相は政局は得意でも外交はそんな永田町の論理は通用しないのでしょう。

それにしても株価はあんまり冴えませんね。 日経平均は大幅に上がっているのですが、私の関心のある株価だけなのか、3月の段階には程遠い状況です。 経済評論家ではないので、全体を見ているわけでは無いのでなんとも言えませんが、一部の銀行などは大幅に上がっているのですが、小型や中位の株価は冴えません。 いつもニュースの報道との違和感を覚えます。

さて、この休みは信州へ行ってきました。 ウン十年前には冬場にせっせと通ったものでしたが、初めて夏場に行きました。 東京から行ったのですが、まず行き方が分からない。適当に調べて、時間が無かったので最短で長野まで新幹線、そこから松本まで特急、その後は鈍行と行ったのですが、乗換えがほとんど3分とか4分とかでギリギリだったにも関わらず、5時間近くかかってしまいました。

地図をほとんど見ずに行ったのが失敗。 よく見たら長野と白馬は山を挟んで反対側ではありませんか。 以前ならここはなかなか越えられないのですが、なんと長野オリンピックで直通の高速が出来てバスが走っています。 本数はそんなに多くは無いですが、これが最短。 長野まで2時間、そこからバスで1時間でありました。 新宿からの直通の特急もあるのですが、本数が少ない。 一日当り1-2本でした。 ちなみに松本乗換えだと、大阪にも行けます。 これも大阪直通は1日1本でした。 名古屋で新幹線に乗り換えるからでしょう。

スキー場はだんだんと思い出して、北から、コルチナ、蕨平(現在は白馬乗鞍)、栂池、岩岳、八方、五竜とおみ、佐野坂、青木湖、鹿島槍と確かあったと思い出しました。 八方の黒菱までゴンドラで行って夏場の八方を眺めて雪の降ったところを想像しておりました。さらにここから上に登って八方大池までいけるとの事で、次回は是非行ってみたいものと思いました。冬場はまあ行けるものではありませんでした。

栂池は家族連れと言うイメージが強くて、だだぴろい所にリフトが何本もあるというイメージでしたが、上から見ると案外に狭くて、拍子抜けするほどでした。 ゴンドラで栂の森まで上がれます。 20分以上かかる長丁場です。 この栂の森のゲレンデは短いですが、栂池ではなかなか面白いところでした。 いつか行ったときに猛烈に寒くて、嵌めている手袋がそのまま凍ってしまった事を思い出しました。 ここからの帰りにに降りていくと遥か彼方に麓の村が見えて、帰れるのかしらと不安になりましたが、実際はあっという間に到着してしまいました。

栂の森からさらに上にロープウエイが出来ていて、これで上がると湿原に行けるとの事。 時間が無くて栂の森のゲレンデの下で小さな湿原があって水芭蕉が群生しているところをうろうろしていました。 ここまで来ると結構涼しくてなかなかのものでした。

今月の読み物は、東條英機宣誓供述書と南京事件です。 どうも太平洋戦争だけが単独で取り上げられて、大和とかゼロ戦とかミッドウェーとかが有名で、この宣誓供述書でも、あの戦争は自衛の戦争だったと主張していますが、これは天皇に責任が行かないように東條がかばった結果であって、その前の中国戦争やさらにはノモンハン事件で示されるように、要するに企業で言うところのマネジメント、今で言うとシビリアンコントロールが出来ていなかったことが原因です。 あの当時は侵略することは世界が認めていたわけで、アジアには植民地が沢山あったのです。 ただそれを出遅れた日本が拙速でやったので、米英から圧力をかけられて、しかも国際連盟と脱退して、対話の機会を失ってしまった事が大きいでしょう。 慌てて外務大臣をクビにしたものの、状況は引き返すことが出来なくなってしまったところまで来てしまったのでしょう。 確かに東條が首相になった時点では、もうどうしようもなくなって、戦争しか選択枝がなくなっていたのでしょう。

ノモンハンは大失敗だったので、それはそれである意味で良かったのでしょうが、日中戦争の上海事件から南京事件に至る状況は現地軍の独走で、しかも日本の国民がこぞって支持したわけで、政府が悪者で国民が被害者であると言う視点は中国の良く使う手であって、実際は良い悪いは別にして、国民みんなに責任はあるのだと思います。

大東亜戦争の真実―東条英機宣誓供述書 東条 英機, 東条 由布子 ¥1,470税込 は、原資料としてはなかなか面白い。ところどころに弁護士が入れたと思われる、責任回避の文章が取って付けた様に入っているのは面白い。 これを読んでも東條は極めて真面目な人で、極めて真面目に戦争に突入して行ったんですね。

南京事件関連は、2冊。 ひとつは「南京事件の探求」、いわゆる「まぼろし派」に近いもので、資料を選んでいるとは言いながら、南京事件は無かった派です。 もうひとつは「南京事件」で家永裁判の資料を作った人で、「あった派」です。 アウシュビッツですら無かったと主張する人も居るくらいなので、何とでも言えるのですが、当時の軍隊の編成を見ても、なんらかの事件はあったものと思います。 ただ30万人もの虐殺が、計画的に行われたか、と言うと疑問だと思います。 ドイツ人と違って日本人はそこまで徹底した行動を取れと言われても出来ないと思います。

「南京事件」の探究―その実像をもとめて

文春新書 北村 稔 (著) ¥714税込

南京事件

岩波新書 笠原 十九司 (著) ¥819税込

太平洋戦争だけでなく、その原因となった中国戦争を理解する事で、外国からごちゃごちゃ言われること無く、毅然とした歴史観を持ちたいものです。


8月1日

今年もものすごく暑くなってきました。 最近、便利に使っているのは、Google Desktop です。 Webの検索で有名な Google は最終的には全世界全ての情報を検索と言うか、組織化しようとしているとの事です。 まず最初に始めたのが、PCの内部にファイルとして保管されている情報を一発で検索するものが DeskTop です。 従来からこう言うものはあって、自分でも作ろうと思ったことがありますが、あんまり出来が良くなかったので、今回の Google DeskTop も諦めていたのですが。 しかし使ってみるとその威力は十分。 過去のメールでも一発に検索できます。

私は、1989年ぐらいからメールで連絡を取るようにしていました。 それも今で言うモーバイルでやろうとしていましたので、ひどく苦労をした覚えがあります。 初期のうちは今では当たり前のPOPやSMTPをアクセスできるプロバイダが無かったので、アメリカからでも国際電話をかけて、日本の事務所のサーバーに Telnet で繋ぎこんで、UNIXの Sendmail コマンドを直に使っていました。 流石に国際電話で Telnet で繋ぎこんで延々とメールを見たり書いたりは、料金が天文学的になってしまって現実的ではないので、一度メールをダウンロードして、ひとつの大きなファイルにします。 そのファイルをエディタを使って、 Sendmailのコマンド形式にして、その時に引用とか返事とかに書き換えて、その後にまた繋ぎこんで一気にアップロードする、と言うようなトンでもないことをしていました。 流石にこれは長続きしませんでした。

当時のモーバイルのPCは、オムロンのマシフが自社製品でもあり、面白いので使っていました。 モデムも内蔵していて、表向きはPDAなのですが、隠しコマンドで DOSマシンに化けました。 単3の電池で動くこともあって、充電可能な単3電池を沢山持って飛行機に乗り込んだものです。

この時代はいろいろなPCを試したのですが、一番印象に残っているのは、PC-286 NOTE executive です。 値段が確か40万円以上して、個人ではとてもではないが変えない代物でした。 しかし当時としてはものすごく薄くて、高機能でした。 98互換と言うのも時代を感じさせます。 実装はものすごく凝っていて、1台参考のためにティアダウンしたのですが、元通りに戻せませんでした。 びっくりしたのは、この機種を検索すると国立科学博物館に登録されているとの事で、まあこのPCは記念で残しておくべきものでしょう。

話が飛んでしまいましたが、この時代からのメールが残っている訳で、整理をしても毎月数百件のメールが残っていきます。 有難いことにディスクの容量がどんどん大きくなるので、メールが増えてもそれをどんどん格納できます。 しかし、問題はそのメールの検索でした。 メールを残してあるのは、記録として残してある訳で、内容の検索が出来ないと意味が無いわけです。 メーラーの検索機能を使っても良いのですが、時間が結構かかるので、気軽に検索と言うわけにも行きませんでした。

ところが、この Google Desktop を使うと、検索がほとんど一瞬で終わります。 流石は全世界のWebサイトの検索を行っているため、個人のPCのディスクの内容などは、如何にディスク容量が大きくても、軽い仕事なのでしょう。 ただし、最初の段階でディスクの内容のインデックスを作成しないといけないので、これに結構時間がかかります。 それでも一晩ぐらいでインデックスの作成は終わりました。 その後は、ファイルが追加されるたびにインデックスが作られるので、使用上は分からないレベルで処理が行われます。 このインデックスの作成は一気に行われなくて、最初は大体出来てきますが、その後もだんだんと作られるようなので、だんだん賢くなっていく感じです。

メールはもとより、通常のテキストファイル、エクセルなどのオフィス関連のファイル、PDFなども検索対象になります。 英語の場合は単語と単語の間はスペースで区切られていますが、日本語の場合は、単語を抜き出す処理が必要になります。 これを形態素解析と言って、スペースによって分かち書きがされていない、特にアジアの言語に特有の処理が必要となります。 この処理は100%完全ではないので、検索にかからないものが出る可能性はゼロではありません。 使ってみた感じでは抜けは無いようですが、確かに存在するファイルが検索されない場合はこれが原因かも知れません。

最近といっても半年は経過していますが、Google Maps も話題です。 これは従来の地図検索に似ているのですが、リアルタイムでズームしている(ように見える)事がポイントです。 さらに地図だけでなく、衛星写真にも瞬時で切り替えられるので、これが面白い。 日本の地方などは細かい写真が無いらしくて、出てきませんが、東京などは一番細かい写真まで表示されます。 Enemy of America の世界ですね。 技術的にもこのような処理が、通常のHTMLとJAVAで出来ると言う事を示した事は非常に意義深いと思います。 みんなそんな事は出来ないと言う思い込みがあったので、これをやろうとすると別のプラットフォームが必要であると言うのが、共通認識であったところに、従来の技術で出来るよ、と言われてみんなびっくりと言うところでしょう。 この技術は Ajaxと呼ばれて(何も新しい技術はないのですが)、最近最も注目を浴びている話題のひとつです。

Ajaxを利用したメールシステムが、Gmail としてベータ版が一部に公開されています。 メールを削除せずに残しておいて、いつでも検索できるようにすることがポイントのようです。 まあ、私のメールの使い方と同じようなものです。 しかし自分に関する情報が、他人のサーバーに溜まって行くことは、あんまり気持ちの良いものでは無いですね。 さる金融機関では、自分の財産を一括して管理できるようなサービスを行うサイトがありますが、イマイチ気持ちの良いものではありません。 確かに一覧性や管理は楽になるのですが、何かの拍子にその情報が漏れた、もしくはそのサービスを行っている会社に知れたら、情報が一元化されているだけに問題でしょう。

経済の分野では、またぞろ増税の話が出てきたようです。 サラリーマンの所得税を狙い撃ちにしたものと言うのがもっぱらの評判ですが、一部にはあれは陽動作戦で、所得税に話題を集めておいて、本音は消費税と言うのが狙いという話まであります。

そもそも、社会的な負担という点では、年収の額によりますが、年金がダントツで、次は健康保険、市民税、最後に所得税となるのであって、年金はいずれは自分に戻ってくるとしても、所得税はものすごく小さな額になっており、1000万の年収でも収入で計算しても10%ぐらいでしかないでしょう。 社会的な負担は最終的に収入の50%にすると言うのは少し前の年金の掛け金アップの時の議論だったとおもいますが、これに比べても、小さな水準になっています。 さらに低所得では、所得税は払わなくても良くて、これが全給与所得者の30%にもなると言う話もあります。

問題は、給与所得者の控除が大きすぎることが、いろんな税体系のひずみを引き起こしているのです。 この原因は、以前にトーゴーサンピン(10-5-3-1それぞれ、サラリーマン10割、自営業者5割、農林水産業3割、政治家1割)と言われた、所得の補足率がサラリーマンが高いので、その反対給付で、控除を大きくしていったので、この歪が出てきています。 さらにはこの控除は、サラリーマンだけでなく自営業者にも適用されていますので、単にサラリーマンだけが有利なわけではありません。

テレビの報道番組でも、今回の控除縮小はサラリーマンを狙い撃ちで、自営業者は対象ではない、見たいな論調ですが、自営業者といっても個人の収入は給与所得として受け取っているので、同じように控除は有効なのです。 このような話はテレビでは聞いた事がありませんが、現状の高い控除率はサラリーマンだけの特権ではなくて、自営業者も同じなのです。 ここに大きな税体系の歪があります。 これを無くさない限り、いくら小手先で税の仕組みをいじっても根本原因は解決されません。

事業者(会社)が支払う所得税とそれを給与として支払った場合の給与所得税にあまりにも大きな差が出てくるような税体系はおかしいと思います。 つまりこの原因は給与所得控除にあります。 この控除が大きすぎるために、サラリーマンは確定申告が出来ないのであって、全国で5-10人しか必要経費の確定申告をしていないと言う実体があります。

郵政改革も必要ですが、もっとやらないといけないのは、まず徹底した歳出カット。 次に控除の引き下げで税体系を見直す。 これで負担が増える層や少子化対策が必要であれば、手当てを至急することで対応する。源泉徴収は良いが、サラリーマンにも確定申告を認める。 また控除が小さくなれば、確定申告の必要が出てきます。 この上で消費税を決め、年金を決める。

確定申告をすることで、自分の税金の仕組みを知り、使い方に関心が出てきて、ひいては政治への関心も高くなる、と良い方向に回転を始めます。 日本で年末に売れるソフトは年賀状ソフト。 アメリカでは税金申告ソフト。 これを長期間やると、国の力が違ってくるのは当然でしょう。

今月の読み物は、そう言うことで、税金の話です。 寅さんの話を例に自営業とサラリーマンの話を分かりやすく述べています。 結論のサラリーマンの自営業者化は議論のあるところですが、一般論としては難しくても、一部でそういう動きも出ている分野もあるようです。 続編の「超」税金学 も面白そうです。 まだ読んではいませんが。

「超」納税法 新潮文庫 野口 悠紀雄 (著) ¥540(税込)

ついでに「超」税金学 野口 悠紀雄 (著) ¥1,365(税込)ちと高いです。


7月2日

今日はやっと梅雨らしくなって雨がジトジト降っています。 先日などは熱帯地方のスコールを思わせる雨で、日本もだんだん熱帯に近くなっているような感じで、地球の環境も変化しているのでしょう。 地質的な過去には地球全体が雪で覆われたスノーボールアース時代が何回かあったそうで、それに比べたら地球温暖化と言ってもほんのわずかな変化でしょう。

そのわずかな変化に生物相は大きく影響を受けます。 人間は自分の生活環境を自分でコントロール出来る様になって来たので、ひと昔前なら生活不可能だったマンションのような集合住宅に居住可能になってきています。 現在の集合住宅はエアコンの発明で成り立っていると言っても過言ではないと思います。

現在存在する生物はさまざまな要因で、現在存在している分けで、何がどう影響しているか誰にも分からないような、つまり生態系として存在している分けです。この生態系の何かが少し変わっただけで、そこで生きている生物は生きて居れなくなります。 日本の人口が今年を境に減少に転じると言う話もあります。 日本の場合は急激な出生率の低下でこうなっているのですが、もう少しわずかな低下でも長期的には減少していきます。これの恐ろしいのは個別の原因は特に無いのでしょうが、全体として落ちていく、わずかな原因が結果を生んでいるのでしょう。 これも政府の政策を含んだ大きな意味の生態系であってその生態系が壊れてきているのです。

生物の進化はいろいろな段階がありますが、高等生物になってからを考えると、それが単純な突然変異と自然淘汰と言われると信じる気にはなれませんでした。 どこかで読んだ本には竜巻が納屋を襲ってその結果ジェット戦闘機が出来上がる確率で進化が起こると言う事でしたが、この確率は限りなくゼロでしょう。

最近気がついたのは、単純に知らなかっただけですが、突然変異は部品を単位として起きることもある、と言うことです。 例えば眼球みたいな精密なものがゼロから一気に突然変異で出来る訳ではないでしょう。 DNAの中では眼球はひとつの部品として登録されていて、それらの組み合わせで、例えば我々が部品を買ってきてロボットを試行錯誤して組み立てるように高等生物は進化してきたと思えば、現実性があります。

このDNAの中の組み合わせが、主にウイルスによってなされていると思われます。 高等生物になればなるほど、この組み合わせの種類も増えますし、生物の寿命も長くなるので、試行錯誤の時間も多くかかりますが、原始的な生物では、これがかなり加速されて行きます。

しかし、ここで基本的に異なるのは、我々が秋葉原かとこかで部品を買ってきて、それを組み立てる場合には、部品間のつながりが問題になります。 PCの部品のように標準化されていたら、問題は無いのでしょうが、例えば買ってきたCCDカメラモジュールを取り付ける方法、信号を伝達する方法、つまり最も基本的にはコネクタをどうするか、信号そのもののフォーマットをどうするか、が問題になります。 生物の場合はこの辺りが極めて柔軟で、異質の部品を持ってきても正常に動作するかどうかはさておいても、形状的にはスムーズに納まってしまいます。 DNAの中で部品を組み合わせてもうまく組み合わさるのです。 この辺は驚異ですし、人間の工学の中に取り込まないといけない革命的な機能でしょう。

いずれにしても、原始的な生物は宇宙にはあふれていて、どこにでも存在するのでしょうが、高等生物特に人間のような自己認識できるような生物にまで進化できるのは、余程の幸運な生態系があっての事で、このような文章を書いているのも、「我存在する故に我思う」とこれは私が勝手に考えたことですが、その結果であるに過ぎません。 環境オタクみたいなことは言いたくないですが、やはり地球はいろいろな幸運に恵まれた宇宙の奇跡です。

GMショックで落ち込んだ株価も少しは上向いてきましたが、上値の重い展開です。 また円が予想外、しかし想定内の円安となり、原油も60ドルを超えて、不確定要素が増えてきました。 アメリカは流石のグリーンスパンも想定外の長期金利のダウンとドル単独高で、「事実は小説より奇なり」と言う古いフレーズを思い出させます。 ユーロも想定外のEU憲法否決と言う展開で急落しました。 中国の元の切り上げも秋には不可避と言う観測がなされていて、今年の後半はどんな想定も出来ない可能性があります。日銀短観でも先行きが不透明で、しかし現在は上り調子なので、市場の反応は少しプラスでしたね。

最近は東アジア共同体の話も多く出てきました。 ヨーロッパとの比較では日本はイギリスで、大陸はフランスとドイツです。 ヨーロッパに比較して日本が弱いのは、大陸には巨大な1つの中国しかないことです。 ヨーロッパではフランスとドイツがお互いに牽制しあって、そこに島国の利点を生かしてイギリスが割って入ればよかったのですが、日本はまともに中国と対峙しないといけないことになります。 靖国問題は国内問題としてもっと議論があってしかるべきでしょうが、対中国ではこのコンテキストの中で対応しないといけないでしょう。

靖国問題は確かに中国にとやかく言われることは無いと思いますが、それでは国内でキチンと議論されて総括されているかというと、全くそうではないでしょう。 戦争犯罪の問題でも東京裁判が不当で無効だと言うのはその通りだと思いますが、それなら日本をあの惨劇に追い込んだ責任は誰がどうやって取るのか、と言う議論をキチンとやるべきでしょう。 そうでないと、日本はいつでもあの戦争の反省をしていない、と言われ続けます。 世界第2位の経済大国として、過去の総括は他からとやかく言われるのでなく、また一部の保守政治家が言うようでもなく、自らキチンと決着を付けるべきだと思います。

国内問題としての靖国問題は、戦争に利用されてきたと言う背景、宗教的な理由でも国民のコンセンサスが必要です。 日本は世界でも珍しく政教分離が憲法上明確な国です。 イスラムは別格として、アメリカでもヨーロッパでもキリスト教と政治との癒着は当然になっています。 その良し悪しは別にして、世界の基準、グローバルスタンダードに準じて国民が認識を行うことでしょう。 自称革新政治家の、自分はじっとしておれば良いみたいな事では、実際に世界の大国であってその影響力は、黙っていてもあるのですから、それを自覚することが重要でしょう。

今月の読み物は、「陸軍兵器発達史―明治建軍から本土決戦まで」光人社NF文庫 木俣滋著¥780。 別に戦争を美化するわけではないのですが、一般にあまり兵器に対する理解がないと言うか、アレルギーと言うか、戦争モノと言うと被害体験的なものが多いので、敢てあげてみました。

兵器と言うと、ゼロ戦とか大和とか、海軍ものが多いのですが、少々地味な陸軍のものが面白いです。 大砲なんて一種類と思っていましたが、沢山種類があるのにはびっくりしました。 読み物としても読みやすいし、面白い。 従軍記みたいなところもあるのは楽しいです。 また、本文の説明と写真が必ず並んでいるのも読みやすい、見やすい理由です。

内容(「BOOK」データベースより)

明治四年、常備軍の設置以来、欧米の輸入銃砲で戦った日清・日露戦争の時代から太平洋戦争の本土上陸決戦兵器まで、日本陸軍を代表する陸戦兵器の変遷と戦歴を徹底解剖―世界水準の自動拳銃や機関銃、長射程を誇るカノン砲、時代別にまとめられた各科編成表など、多数の写真と図表で詳解する陸軍兵器大研究。


今月のひとこと 2005年 1-6月号

6月4日

とうとう入梅か、うっとうしい天気になってきました。 連休前にはものすごく暑い日があって、その後はさわやかな日が続いたので、やれやれと思っていましたが、急に蒸し暑くなってきました。

株価もさえず、円も108円から105円ぐらいを行ったり来たりで、波乱のない時期ではありますが、今日の新聞によると、株価収益率はバブル以降最低の17倍になったとの事で、割安と言えば割安なんでしょう。 円が安い状況で外国人の買いが入らないのが不思議ですね。 世の中はキャッシュがジャブジャブで、しかしかつてのような大規模なバブルにはならなくて、ますます不気味な感じです。 少しきっかけがあると何が起こっても不思議ではないでしょう。

と言いながら、失われた10年と言う言葉もあんまり聞かなくなって、しかし本当にバブルがはじけてそれが実態に表れたのが1993年ですから、それから見ても10年は過ぎたという事です。 当時は、じたばたしても始まらんと、3ヶ月ほど何もせずに、旅行に出かけたのですが、戻ってきても何の変化もありませんでした。 3ヶ月のうちに事態は好転するかと思ったのですが、とんでもなくて、それから10年経っても出口は見えない状況ですね。

最近は韓国や中国との摩擦が大きくなって来ています。 日本の対応も下手なんでしょうが、日本の地位の低下と中国の地位のアップがその背景にあるのでしょう。 最近も韓国との間で紛争がおきたばかりで、一人ほくそえんでいるのは北朝鮮だけでしょう。 頼みのアメリカも最近はそっぽを向いたままで、なかなかこっちの思うようには動いてくれないようです。

私が最初に中国に行ったのは、1989年で、天安門事件の前でした。 現在の市内にある虹橋空港が国際線の発着に使われていました。 しかし到着してもバスがあるわけでなく、タクシーがいるわけでなく、自分の知り合いがいないとどうしようも無い状況でした。 現在の国際線の空港のある浦東地区は本当に何も無い原野と言う感じでした。 その後、大きな橋が出来て、高層ビルが建ったり工場が出来たりして、最先端の地区となりました。

その時に感じたのは、都市と言うのもは交通で成り立っている、と言う事で、いつもはそんな事を考えたことが無かったのですが、いざ交通手段がトロリーバスと自転車と他人の自動車だけになると、いざと言うときには歩くしか手が無くて、移動距離はそんなに遠くは行けません。 上海中がダウンタウンと言うか、盛り場と言うか、どこにでも人がいる感じでした。 すこし上海の町を出ると、すぐに田園地帯で、大都市という感じではありませんでした。 現地の中国人曰く、中国は広いが上海は狭い。

当時の上海の町には高層ビルがほとんど無くて、ずーっと平屋が立ち並んでいるところに、ぼんと戦前に建てられた真っ黒なジンジャンホテルがそびえている、という感じでした。 その後、円形の新館が建ったりして、多少はマシになりました。 現在では自分がどこにいるのか分からないぐらいに、建物が建ってしまいました。

当時はインターネットと言うような便利なものは日本でも無かったのですが、メールを送る必要に駆られて、電話線に直接繋ぎこんで通信をした覚えがあります。 当然に中国にISPはありませんので、中国からオペレーターを通じて国際電話を日本の自分のオフィスのサーバーに繋いでそこからメールを送ったものです。

中国とのネットワーク回線はその後も許されていませんでしたから、定期的に日本から国際電話で中国のノードに接続して、UUCPでデータのやり取り(非常に懐かしい)をしていました。 1日に1回ぐらいしか繋がりませんので、メールが届くのに丸1日はかかりました。今なら夢のような話です。 上海から台湾に行くのに直行便は無い時代ですから、香港で乗り換えたのですが、香港の如何に近代的に見えたか、肩の力がすっと抜けたのを覚えています。

今月の読み物は、「宇宙を測る―宇宙の果てに挑んだ天才たち」ブルーバックス キティー ファーガソン (著) ¥1,113(税込)です。 最近はなかなか本を読む時間が無くて、読んでもすぐに寝てしまうので読めません。 その中で、まあまあ面白いと思ったのがこれ。 以前から星までの距離をどうやって測るのか、疑問に思っていました。 この本ではその測り方をアリストテレスの時代から紹介します。 現代でも結構いい加減な測り方をしていると分かって、何となく安心しました。 もっととんでもない方法があるのかと思いきや、結構いろいろな仮定をおいて測っているんですね。 宇宙の年齢もこの測り方と関係していて、100億年とか150億年とか言われていますが、その根拠とか論争も紹介されています。 全体を通して一種の天文学史になっていますので、その点でも興味深いものがあるかもしれません。

出版社/著者からの内容紹介

ホーキングを知りつくした著者が宇宙の果ての謎に挑む

宇宙の端までの距離は測れるのか?

古代から宇宙の果てに思いを馳せながら、宇宙の広さを測り続けてきた驚くべき天才たちの物語。プトレマイオス、ガリレオからアインシュタイン、ホーキングまで巻き込んだ最新宇宙論の入門書。

「この本は、2500年の間に、家の戸口の階段から宇宙の果てまで、人類がどのように測定のはしごをかけていったか、そして、その冒険が宇宙や私たちの住む地球の形や性質についての考えをいかに変えてきたか、を紹介しています。」――序章より


5月1日

今年はあっという間に桜が咲いて、その後急に寒くなって、桜がしばらく散らずに残りましたが、4月の後半になって急に暖かくと言うより、暑くなって来ました。 真夏日が出現したくらいで、異常気象はまだまだ続いているのでしょう。 これを逆手に取った先日のエアコンの宣伝文句が、今エアコンを買っておいたら、冷夏になったらキャッシュバックします、との事。 流石にいろいろ考えると感心しました。

通貨の円は、このまま110円くらいに突入するのかと思っていたら、アメリカの状況が不安定になってきて、またぞろ高くなって来ました。 株価も4月に入って大幅に下がったままで、ここはしばらく辛抱のしどころでしょう。 反面、投資の好機でもあります。

ニッポン放送問題も一段落して、よくよく見てみると、買い占めた株を高値で売り抜けると言う、古来からの常套法でありました。 ライブドアは株価が下がったものの、1500億円ものキャッシュを得て、今後のフリーハンドが大きく広がったと言うべきでしょう。 一番得をしたのはローリスクミドルで、うまくライブドア株を売り抜けたリーマンブラザーズ。 次はハイリスクハイターンだったライブドア。 トントンもしくは損をしたのはフジテレビ。 ここまでお金を使わずにニッポン放送のTOBは成功させられたのに、詰まらん追い銭を払う羽目になってしまいました。 ニッポン放送はその狭間で翻弄されたと言うことでしょう。

三者三様でそれぞれのビジネススタイルが結果にも現れていて、なかなか興味深いものです。 単なるマネーゲームと言えばそれだけですが、これが全てである訳でなく、これを極端の端っことすると、反対側には、公益的な第3セクターや社会インフラを担当する会社もあるのでしょう。 よく言われたことですが、株式を上場して他人のお金を当てにする以上、今回のような出来事が起こる可能性を考慮しておかないといけないことになります。 どうしても防衛したければ、自己資金で、公開せずにプライベートカンパニーにしておけば済む事で、他人のお金は使いたいが、今回のようなリスクは嫌だ、と言うのは単なる勝手もしくは株式会社の基本を理解していないとしか思えません。

1989年頃から足掛け12年シリコンバレーでいろいろ見てきました。 その後の2000年のITバブルでやっと日本にもこのような時代が訪れたのか、と思いましたが、すぐにしぼんでしまって、今回またもやこのような状況になってきました。 政府は大赤字を抱えてますが、結果的に資金は世の中に充満している訳で、いつ何時以前のようなバブルが発生するかもしれません。 既に東京の一部の不動産ではバブル的になっているとの指摘もあります。

この間、聞いた金融機関のファンド管理ビジネスの話で、世の中には金融資産を3億円以上持っている人が沢山いて、これをターゲットの市場とするだけでも結構なビジネスになるとの事。さらには5億円以上保有者も沢山居るとの事でした。 土地はともかく、金融資産だけで3億とか5億とか持っていると、やはりインフレへの警戒感が非常に高いのではないかと思いますが、金融資産全体で160兆円という中にこの様なものが沢山入っているのでしょう。

今月の読み物は、「心は量子で語れるか―21世紀物理の進むべき道をさぐる」ブルーバックス、ロジャー・ペンローズ (著) ¥1,092(税込)です。 著者は著名な数理物理学者で、いつノーベル賞をもらってもおかしくない人ですが、こう言う高名な物理学者は最後には人間の精神の解明に行き着くという好例で、以前から「トンデモ」系ではないかとけ言えんしていましたが、たまたま本屋で見つけて、パラパラと見ていると面白そうなので読んでみました。 巻末にはこれも有名なスティーヴン・ホーキングらとの論争があり、これもなかなか興味深い。

前半は、量子論の話で、少し知識は必要ですが、ポイントを突いている説明で小気味良く読めます。 宇宙はビックバンからスタートしてビッククランチで終息すると言う説もありますが、熱力学の第2法則のエントロピーの増大を考えると、ビッククランチでの状況は、我々が常識で考えるより、もっともっと複雑であろうと言っています。 また、量子論の最大の問題の波動関数の崩壊とか状態ベクトルの収縮とか言っている、観測問題を正面から取り上げて、著名な物理学者の立場の違いを表にしているのは面白いと思います。余程の理解が無いとこう言う分類は出来ません。

後半は、とうとう精神と量子の話に入ります。 下手するとこの辺りから「何とか波動波」を売り物にする似非新興宗教みたいなものになっていきますが、著者はあくまで、こんなものとは関係なく、脳の中で如何に量子が影響を及ぼして、計算不能な人間の精神を実現していると言うことです。

古典物理学の最高峰で量子力学に最後まで反対したアインシュタインの有名な言葉に、神はサイコロを投げない、と言うのがあり、これを量子力学に対する反論としたのですが、量子力学そのものには確率性は無く、おそらく神様には量子の振る舞いが確定的に見えているのでしょうが、人間が見る(観測する)と確率が入ってきてバラバラに見えると言うことで、観測問題はどこで崩壊なり収縮が起きるのか、と言う問題を含んでいます。 突き詰めると人間が観測した(見た)から、と言う事になって、ペンローズのような発想に行き着くのではないかと思います。

確かに量子には不思議な性質があって、遠く離した量子の間に何らかの関係があることが知られています。 これは現在、数kmに渡って量子暗号通信が可能になっています。 光ファイバーを使ったもので、光子をひとつずつ送信するので、通信時間はかかるようですが、実際に動作しています。 これは量子が遠く離れた場所に対して広がりを持つものと見ることが出来ます。

もうひとつの例は、2スリット問題で本欄でも取り上げたことがありますが、2つのスリットを通して、バラバラに時間を取って光子をひとつずつ送っても、同時に沢山の光子を送ったときに見られる単純な確率と同じ確率で2つのスリットを通ったことになります。 これは量子の時間的な広がりを感じさせます。

この様な2つの空間的時間的な広がりが量子にあるとすると、これが頭脳の中のニューロンに何らかの影響を与えて、人間の意識とか精神とかが実現しているのではないか、と言うのが話の趣旨です。

この他に、ペンローズはゲーデルを引き合いに出して、人間の精神や意識は計算不能であるという前提で理論を展開しているのですが、この点に関しては、巻末に載っているスティーヴン・ホーキングとの論争で、ホーキングは反対しています。 わざわざ計算不能を持ち出さなくても、上記の2点でも十分面白いと思うのですが。 ちなみにホーキングは「恥知らずの還元論者」と自ら名乗って、ペンローズの意見に反対しています。 ペンローズも正面切って再反論はしていません。


2005年4月

円もだんだん下がってきて、原油は依然として高いものの、経済全体に与える影響は、過去のオイルショック時代と比べてかなり低くなっているようで、景気の緩やかな上昇は続いているようです。 デフレ傾向は相変わらずですが、社会全体がデフレ傾向となっているので実感としては、あんまり強く感じることはなと思います。 以前にも紹介したことがありますが、1990年代を通じて世界的にデフレ傾向であったことは間違いありません。 日本ではバブル崩壊の後でデフレ傾向をじっくりと肌で感じているような余裕は無かったと思いますが、アメリカではウォルマートをはじめとするディスカウントショップが幅を利かせ、生活費は驚くほど少なくて済みました。

昨今は所得の偏重が問題になっていますが、逆に言うと収入の少ない人でも、それなりに暮らしていけるということでしょう。 ホームレスも問題になっていますが、発展途上国の食料事情とは大きな違いがあるのではないでしょうか。 この辺の感覚は1990年始めころのアメリカの状況と似ています。 アメリカに周回遅れと言われたのが、デフレの顕在化で一躍先頭に立ったような状況だったのですが、結局周回遅れというより2周回遅れに近いのではないかというような感じになってきました。

アメリカでペイオフが実施されたのは、1980年代の終わり。 この時TVを見ていたら、預金保護の話ばかりで、ついこの間の日本の状況でした。 その当時は何のことかさっぱり分からず、世界のトップの国で何で銀行の心配をしないといけないのか、理解不能でしたが、日本でのペイオフ実施でやっとその意味が理解できました。

1990年代のアメリカでは、ダウ平均が2000ドルからクリントン政権の10年間で5倍の1万ドルとなり、金融資産のほとんどを直接株式か株式投資信託で運用していたアメリカ人は全員資産が5倍になったのです。 これでは個人消費が伸びるのも当りまえです。 もっとも蓄えを通り越す消費が問題になっていますが。 さらにはあの景気の中でもレイオフは常時行われており、企業のスリム化は常に行われていました。 ITによる労働生産性の向上も、レイオフや賃金上昇率の低下も考慮に入れないと正確なところはわからないのではないかと思います。

先月からTVをつけると必ず報道されていたライブドア問題もやっと少し沈静化してきました。 これで1億総投資評論家になっていろいろ投資の手法を勉強したことと思います。 これで株式市場が活性化されるのかどうかは不明ですが。 クラウンジュエルとか白馬の騎士とかいろいろ言葉が出来ましたが、我々が良く使ったのはゴールデンパラシュートとかゴールデンカフとかいうようなのがあったと思います。 これは自社や買収した会社のCEOというか社長をどこかから雇ってくるのですが、当然に引き受けるほうは株主代表訴訟や倒産のリスクがあるわけで、こうなったときの退職金を大幅に積んでおくことを言います。 カフはお金を積んで逃げられなくする手法ですがこっちの方は半分冗談です。 お金はいくらあってもなかなか強制力にはなりません。

ライブドアのほうはとうとう本命のソフトバンク、それも想定外のSBIが名乗りを上げました。 ライブドアにとっては最悪の相手でしょう。 堀江社長自身がこの件に関しては「想定外」とはっきり言ってまして、おそらくソフトバンクの孫さんを想定していたのでしょう。 こちらは多少は話が出来ると言うことで、流石の堀江氏もSBIの北尾氏との面談をキャンセルしています。

今後の方向は、やっと少し見通せる情況になってきました。 もっともあり得る成功率の高い状況は、ニッポン放送の現役員と事業は社長を含めてそのままそっとして、現状の事業を続ける。 一方でライブドアとの連携を考える部門をひとつ作ると言うことでしょう。 問題はどちらかというとフジTV側です。 結局問題を持ち越した形になってしまいました。 ライブドアが50%を超した段階ではフジTVの持株は意味を成しません。 おそらくこのままだとニッポン放送は上場廃止になってしまうので、持株の価値はほとんどなくなってしまいます。 ライブドアに買ってもらっても良いのですが、何らかの条件がつくでしょう。

いずれにしても、ライブドアは元々の意図はともかく、着地が可能ですが、フジTVはもっとも大変なSBIという相手と組んでしまったし、ニッポン放送の株式も抱え込んでしまって、着地点が見え難くなってしまいました。

今回の騒動は株式投資のやたらと細かいテクニカルな話に落ち込んでしまいましたが、本来議論すべきは、将来の通信と放送の融合をどうやっていくかです。 これがうまく行くと減殺のケータイで日本が先行しているようなカタチにすることが可能でしょう。 デジタル地上波に現を抜かすのではなく、もっとこういう方向のコメントを政治家にも出してほしい。 ライブドアけしからん、放送法の改正だ、とかは少しレベルの低い議論でしょう。 特に総務大臣はライブドアがビジョンを示さないというより自ら将来のビジョンを語るべきでしょう。 このまままでは30歳台のベンチャーの社長の言うことよりレベルが低いといわざるを得ません。

デジタル地上波放送は風前の灯火です。 これが実用になるころは、FTTHで画像が送られていることでしょう。 現在のTV画像は6Mbpsあれば送ることが出来、ハイビジョンでも24Mbpsと言われています。 100Mbpsの速度が出れば十分に映像を送ることが出来るのです。既にそのサービスは始まっています。 NHKに高い受信料を支払うくらいなら、それをキャンセルしてFTTHのサービスにお金を払えばよいでしょう。 最近出てきたNHK受信料強制化はこの辺を睨んでいるかもしれません。 TV受像機を持っていなくても受信料を強制徴収するのであれば、それは税金と変わりません。

アナログ地上波は2010年ころに完全に廃止になるそうですが、なんとなくペイオフの延期を連想させます。 おそらくこのスケジュールは延期になるのではないかと思います。 もし強行すればTV離れが一気に加速するでしょう。 現状でも1週間の全ての番組を録画しておく機器が市販されていますが、これは現在のTV放送と言うものを根本的に変えてしまうことを意味しています。 恐らく現在のTV放送はラジオみたいな存在になって行くでしょう。 リアルタイム性のあるCNNのニュースみたいなもの。

映画の放送は完全にFTTHのオンデマンドになり、双方向性が必要な番組もFTTHになって行くでしょう。 軽チャーの典型のバラエティ番組はBGM的にTVとして残るでしょうが、こんなものに双方向性は全く不要です。 放送に電波を使い、双方向と言って上りの回線にはインターネットを使うのはあまりにも変。 唯一のメリットは多数の端末に一度に情報を届けられる「マスメディア」の特性だけでしょう。 これも程度問題で、インターネットでもデータ輻輳の問題を軽減すれば、出来ないわけでは全くありません。

従って、地上波デジタルの機器は本当にその日が来るまで、買わないでおこうと思っています。 従来型のTVに付加するセットトップボックスも5万円もするそうなので、これが5000円くらいに下がったら検討しようかと思っています。

地上波デジタルも日本人の特性を良く表しています。 番組の数を増やすのではなくて、現状の画像をきれいにするハイビジョン、それを可能にする地上波デジタル、という図式です。 これはPCの世界で、アメリカはCPUチップを作り、日本はメモリを作った事と同じカタチです。 最終的にどちらが勝ち組になったかは自明です。 過去営々と開発をして結局日の目を見なかった初代のハイビジョン、アナログ技術の極地でしたが、はっと気がつくと世の中はデジタル化で、時代遅れになってしまいました。 このときのハイビジョンと現在のデジタル化されたハイビジョンは全く別物です。 ハイビジョンに一生をかけた人はプロジェクトXできちんと総括をしてもらうべきですね。

この他にもiPodに負けたソニーのウォークマン。 MP3の端末が出たときに実はソニーは同じものを出していたのです。 その時は自社のMDウォークマンを食ってしまうかも知れない機種を出したソニーに尊敬を感じていました。 しかしその後MP3フォーマットを再生しないとか、ソニー内部の問題でまともな製品が出てこなかったころから、ソニーがおかしくなってしまいました。 大企業病の典型です。

今月の読み物は、亡国のイージス 上下 講談社文庫 福井 晴敏 ¥730(上)。 在日米軍基地で発生した未曾有(みぞう)の惨事。最新のシステム護衛艦《いそかぜ》は、真相をめぐる国家間の策謀にまきこまれ暴走を始める。交わるはずのない男たちの人生が交錯し、ついに守るべき国の形を見失った《楯(イージス)》が、日本にもたらす恐怖とは。 日本推理作家協会賞を含む三賞を受賞した長編海洋冒険小説の傑作。

映画化を意識したのか、冗長な記述が多いですが、良く分かります。 実在の兵器と架空の兵器が混在してしかもそれらが違和感なく存在してるのは面白い。 自衛隊の装備の知りたい方にも最適。

本当の姿はそうなんでしょうが、刑事モノを読んでいるような気になるのは何故でしょう。 日本には志願制がないので、戦争を仕事にしているはずだが、戦闘になると何となく素人っぽくなるような気がします。 同じ人間がやっているので、実際はそうなんでしょうが、アメリカ映画にあるようなドライさが無くてえらくウエット。 ハリウッドに負けない映画になることを期待しています。


2005年3月

今月はいろいろな話題が出てきたので、3月1日号を少し早くお届けします。 先々週から大騒ぎなのはライブドア=ニッポン放送・フジテレビの問題です。 段々と論点が整理されてきたようですが、旧世代と新世代の争いみたいになって来た様な気がします。 少し前に大騒ぎになったアメリカのAOLのタイムワーナーの買収も結局はうまく行かなかったようです。 現状では最終的にはライブドアの形勢が悪いようですが、今や世界でトップのブロードバンド先進国になった日本では少し状況が異なるのかも知れません。 しかし、その間の細かい議論を聞いているとおかしな点がいろいろあります。

今サンデープロジェクトを見ながら書いていると、ライブドアの支持は若い世代と中高年の世代では株式市場を少しでも知っている中高年の世代の支持が圧倒的に多いそうです。 私も最初はこの結果を聞いて意外に思いましたが、自分ではアメリカの1990年代をずっと見てきていると、そんなに不自然な気がしません。 確かに少し荒っぽいところはあって、印象的にはプロレスの反則技の応酬という感じがないわけではありませんが、マスコミが一斉に攻撃しているような問題では無いと思います。 新聞などは同じマスコミ関係者として過剰反応しているような気がします。 この前のプロ野球騒動は何だったんだと言いたくなります。 私個人はプロ野球の時は冷ややかでしたが、今回は少し異なります。

ライブドアが最終的にどのような着地点を目指しているのか、現時点では当事者を含めて誰にも分からないのでしょうが、その道は遠く険しいものでしょう。 方やニッポン放送側は現状を取り戻して、元の目的のフジテレビの子会社になれば終わりなので話は簡単です。 裁判の結果を見ないと何とも言えませんが、どっちに転んでもライブドアは大変だと思います。

村上ファンドも登場していますが、あんまり深い関連は無いようです。 村上ファンドは2000年に日本で始めて本格的な敵対的TOBを仕掛けたのでよく覚えています。 当時は日本企業のほとんどの時価総額が低下して買収しやすくなっていたので、とうとう日本にもTOB時代が訪れたと思っていました。 その後の東京スタイルなどでチャレンジを続けました。

結局、得をするのはリーマンブラザーズで、他の当事者はあんまり得はしないでしょう。 ライブドアは最悪倒産はしないものの、企業価値を大幅に低下させてその影響力を大幅に下げてしまうでしょう。 その意味では一番リスクを負って果敢に挑戦しているのはライブドアでしょう。 リーマンブラザーズは24日にCBが発行されるまでの間、いわゆる繋ぎ融資みたいなものを行って、その見返りにライブドアの株式を4600万株借りたようです。 これを現物で売って(890万株を10日までに売ったそうです)、22日か23日に買い戻せばそれだけで当座の手数料は稼いだのでしょう。 22日ごろに大きな買いが入っていました。CB発行で得た株式はこれから徐々に市場で売却していくとの事。

放送の公共性云々の話が出ていますが、本当に公共的で買収リスクにさらされるのが嫌なら、株式を上場しなければ良いのであって、少し調べてみたら、1997年ごろにどの放送会社も上場している事が分かりました。 特にラジオ放送局の上場はニッポン放送だけみたいです。 要するに上場して資金を集める意味がないということでしょう。

上場とかIPOと言うとそれそのものが目的であるかのように、特にベンチャービジネスでは「IPO=上がり」みたいに言われていますが、これは本来はおかしくて、事業を大きく伸ばしたいので初期投資資金が必要になるので、市場を通じて広く資金を集めると言うのが株式公開の意味です。 ラジオ局に何千億もの投資がこれから必要とは思えません。 ニッポン放送の新株予約権なるものは、その背景から言ってもおかしなものでしょう。 単に防衛的な意味合いだけだと、株の希釈化による株価下落で現状の株主の損害を招きます。 また状況によっては上場廃止という事もありますので、これでは株の価値と言う点では全く意味がありません。

外国人支配の問題も、確かに電波割当の特殊性はありますが、日本の銀行や世界的な企業は外国人の持ち株比率は30%以上にもなっているはずで、最も公共性の高い必要のある銀行は、そういう意味ではほとんど外人の持ち物になっていると言ってもおかしくないような状況になっているのではないでしょうか。

放送会社の株式上場の話に戻りますが、これが行われたタイミングと言うのが、デジタル放送の議論が行われた時期で、これを睨んで将来の資金需要を見込んで各社一斉に上場したようです。 このデジタル放送が因縁の元であると言う気がします。 旧来の放送という概念をずーっと延ばしてインターネットとの連携を考えたものがデジタル放送ではないでしょうか。 しかし、今や光ファイバーでビデオ映像が容易に送ることが出来る状況となり、ハイビジョン放送も1GBに上げた光ファイバーでは容易に実現できるでしょう。その実験もあちこちでスタートしています。

インターネット関連の会社はコンテンツが無いので、今回のような買収で入手しようとしていますが、テレビ局も現状の軽薄な番組ばかりでは、コンテンツと言うには余りにも貧弱と言われてもしょうが無いでしょう。

ライブドアの話が長くなってしまったので、HPのフィオリーナ解任の話は少なくなってしまいました。 就任当時から話題性はあったもののその成果については疑問符が多く付いていました。 私もアメリカに居たときにこのニュースを聞いてビックリしたものです。 シリコンバレーの中では一種保守的な会社でしたし、日本企業との類似も多く指摘されていて、その企業が一発逆転を狙ったと言う感じでした。 解任と同時に株式が7%アップしたのも皮肉な結果です。 いずれにしてもHPは大きくなりすぎて、プリンタやコンパックのPCまで抱えてしまって、会社分割の必要性が取りざたされているようです。 DELLがPCからプリンタに参入したのに、元々PCとプリンタを持っているHPがそのシナジーを十分に生かしきっていないと思います。

この間あった中国企業と日本企業のパネルディスカッションで面白かったのは、こちらを向いているPCのブランドの違い。 中国企業は全てHP、日本はパナソニック。 中国はその内にIBMになるのかもしれませんが、なかなか際立った差が面白いし、さまざまなことを物語っていると思いました。 最近はソニーも企業向けを言い出していますが、やはり松下が強いです。 この間量販店で聞いた親子の会話。 松下が良いねと息子。 いやいやこれは良いけれど高い、他にしょ、と父親。 マーケティングは正しいのでしょうがそろそろ広げる必要もあるのでは、と感じました。

今月の読み物は、「ガダラの豚」集英社文庫 中島 らも著 ¥510(税込)。

3部作で3冊になります。登場人物やストーリーの流れは同じですが、それぞれテーマは異なります。 私も中島らもは初めてですが、超能力ブームやカルトの関連で読んでみました。 第1部は超能カルトの種明かしをします。 特に新興宗教がマジックを利用する方法は、ノンフィクションとは言えなかなか本格的です。 第2部はアフリカの旅行記みたいなものになってます。 アフリカのケニヤ地方に行かれたことがあればひょっとして興味深いかも知れません。 第3部は、アフカリカから来た呪術士との現実と創造、実世界とテレビ世界が混じり合った一大スペクタクルの冒険小説になっています。 それぞれの本を別々に読んでもOK。 軽からず重からずで気軽に読めます。 日本推理作家協会賞受賞作。


2月5日

2月は休みの関係で少し遅くなりました。 ちょうどこのタイミングで主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)がロンドンで開かれています。 焦点はもちろん米国の「双子の赤字」問題です。 これを材料に為替市場は昨秋以降、1ドル=110円から一時101円台まで円高ドル安が進展しました。 一方、ユーロも昨年末にドルに対して発足以来の最高値をつけ、ユーロは高すぎると言う不満が出ています。 一時は暴落かと言われたドル売り相場も一服してG7を迎えることが出来ました。 イラクの選挙も何とか実施ができ、後は占領軍の撤退時期が問題となって来ます。 また、こうならない限り米国の赤字削減は簡単には進まないでしょう。 さらには中国元の切り上げ問題とか、今年の為替市場は波乱含みです。

あんまり知られていないことですが、ハッブル宇宙望遠鏡が廃棄されることになりそうです。 老朽化が進むハッブル宇宙望遠鏡を07年度に廃棄する予算を出すそうです。このままの回収には10億ドルかかるそうで破棄を決めたそうです。 ハッブルを軌道から外して安全に太平洋に落とすため、小型噴射装置を取り付けるとの事。 これまでにハッブルの多くの宇宙の映像を見続けてきたので、この話には一抹の寂しさがあります。

ハッブル宇宙望遠鏡は1986年夏に飛び立つ予定でしたが、チャレンジャー号の爆発事故により延期され、4年後の1990年にようやく打ち上げられました。ところが、当初、ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた画像はピンぼけで、それを修正する画像処理を施し、さらに1993年には、エンデバー号の飛行士たちが、宇宙空間での船外活動により望遠鏡の修理を成功させ、やっと鮮明な画像が得られるようになりました。 このような苦労の末、この望遠鏡がとらえたものの多くが新たな発見を呼んでいます。地球から130億光年かなたの最遠で最古の小銀河をとらえたほか、銀河どうしの衝突の場面や、一生を終えた星の大爆発後にできた星雲など、地上の望遠鏡ではとらえられないほど鮮明な画像をたくさん提供して来ました。

さて、昨秋はデジタル機器の著作権に絡む問題が大きな節目を迎えています。 評判の非常に悪かったコピーコントロールの付加されたCD(CCCD) の発売を事実上中止することになりました。 業界で最初にCCCDを導入し、ほぼすべての新譜をCCCD化してきたエイベックスが「運用の弾力化」を発表、適用を大幅に縮小しました。 次に新譜を原則CCCD化していたソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)も全面撤退を表明しました。これで残る大手は東芝EMIだけとなってしまいました。

特に東南アジアにおける海賊CDの氾濫に手を焼いたレコード会社が、PCへのコピーを防止する目的で導入したCDの方式です。 ところが、目的外の通常のプレーヤーで再生できないケースが続発し、方やPCではほとんど何もしなくてもコピーが出来てしまう事、録音された音楽の音質が悪くなると言われていることなどで、CDそのものの売り上げが落ちてしまったことが大きな原因です。 CCCDのCDだと言うだけで購入を避ける若者も多くいます。

おまけにCCCDの技術(CDS)には利用料を支払う必要があり、宇多田ヒカルや山下達郎ら有名アーティストが、音質悪化を理由にCCCD化を拒否しているほど。 さらには、iPodや着うたに代表されるデジタルコピーを活用した音楽の楽しみ方が急速に普及したことでしょう。 これは良くも悪くもCDというパッケージビジネスが曲がり角に来ているということを表しています。業界にはこれまで「ネットには無料で入手できる違法コピーがあるから、ノンパッケージは商売にならない」という声が強かったと思いますが、違法な音楽ファイル交換が日本よりはるかに多い欧米でiTunes Music Storeが成功したように、ニーズに合致したサービスを提供できれば、人々はノンパッケージにもお金を払と言う事が実証されたわけです。

CCCDを導入してからの2年半は文字通り顧客に背を向けて商売していたわけです。 音楽の業界を見ていると、日本の経済社会の縮図のような気がします。 最初にMP3の音楽を聴いたときのことを本欄でも紹介したことがありますが、当時はMD隆盛のころで、ビデオデッキで培った精密機械技術でMDを作っていましたが、方やアメリカでは半導体技術の塊のMP3プレーヤーがメジャーになって行きました。 その後継が iPod と言うわけです。 iPod もディスクと言う究極の精密機械技術ですが、その裏づけはやはりMP3に代表される圧縮技術であり、さらに大きいのはMP3で培ったノンパッケージのビジネス構築だと思います。

確かに、ブランクCDやDVDのCD-R/DVD-R が何故あれだけ売れるのか、全てが全てコピーに使われているとは思いませんが、かなりの部分は個人的なコピーに使われているのでしょう。 また、それの一部が個人的なコピーを超えて使われているのでしょう。 ずーっと以前にゼロックスのコピー機が現れたときに、これで本屋は無くなる、と言った人がいましたが、それはそうなっていません。 コピーするより本を買ったほうが安いからです。 デジタル時代にはそれがそのまま通用するとは思いませんが、要するに高いからコピーが流行る。 安ければ一部のコピーそのものを楽しむオタクを除いては、後ろめたい気持ちを持ちながら面倒なコピーを喜んでやるとは思えません。 コピー騒動にエネルギーを使うのなら、もっと前向きのノンパッケージのビジネスモデルの構築を真剣にやるべきでしょう。

こう書いてきて、思い出したのは、一時のマイライン騒ぎ。 我が家にもセールスが現れてわが社のマイラインに契約してくれと言ってきたことがありました。 いずれは固定電話がなくなりIP電話になってしまうので、無駄なことは止めなさいと、無駄な説教をしたこともあります。 言った私もこれくらい早くIP電話が浸透するとは思っていませんでした。 既に我が家にある2本の回線は、1本は完全に解約して光ファイバーの電話になり、もう1本もNTTではない別の電話会社が完全に使用していますので、NTTに支払う金額はゼロになってしまいました。 これではNTTもたまらないでしょう。 私に言わせれば、マイラインのツケが回ってきたのです。

このように、失われた10年とか15年とか言われていて、銀行やゼネコンが悪の元凶みたいに言われていますが、他の分野でも目立たないが、無駄な将来に全く役に立たないことでエネルギーを浪費していることに、自分でも自問自答しないと、この失われた10年が20年になり30年になるでししょう。

今月の読み物は、「公会計革命」 講談社現代新書 桜内 文城 (著) ¥777(税込)。

要するに一言で言うと、単式主義、現金主義の国家の財政を、通常の企業でも使われている複式会計の考え方を使って、キチンと数字を出してみる。 国家の将来の方向を数字で見れるようにすると言うことでしょう。 ポイントは、いつも問題になる年金などの将来世代の負担問題で、これを資産的な考えで、広い意味のBSに取り込んで会計を行うと言うことです。 詰まらん設備でもちゃんと減価償却しているのですが、国の大きなお金は漠然と何百兆円という感じで言われているだけです。 こう言う考えがなかなか面白い。 行政機関は基本的に税金と言うたなぼたのお金があって、これを如何に使うかの、経費だけ管理、小遣い帳を付けているだけです。 本誌でも触れているように、予算の決定そのものが政策なので、この決定時のシミュレーションがキチンとできるシステムが要求されていると言うのは全く同感。

また、国民と政府の関係について、政府から見たら国民は顧客なのか、出資者なのか、と言う問いも面白い。 両者は似ているようで根本的に異なる、と言うのが本誌の主張。 顧客なら国家サービスと言うサービスを受けたら、その費用がどのように使われているか、知る必要もないし、知る権利は無い。 ただひたすらサービス料の高い低いが問題になるだけ。 出資者なら、出資した資金の使用方法の効率を云々する事ができ、委託先の政治家が思ったパフォーマンスを出せなければ交代させたらい良い、と言う大きな差がある。もちろん本書の主張は後者です。

政治家よ、官僚よ、目を覚ませ!

日本を破綻から救う革命的意思決定システム!

●国民は政府の「顧客」ではなく「主権者」だ

●将来世代へのツケ回しをどう減らす?

●20XX年の内閣総理大臣の仕事

●日本は財政破綻するのか

●あの公共事業官庁の予算をシミュレーション!

●公会計は世界の経済と歴史を変える

国ナビとは何か

まず、「国家とは誰のものか。国家というシステムは、誰のためにあらねばならないのか」という問いを立ててみよう。言うまでもなく、その回答は「国民」以外にはないはずだ。(中略)つまり、国家の実質的所有者である国民がその経営を政治家にゆだねても、政治家が自分勝手な経営をしたり、私腹を肥やしたりしないようチェックするシステムが必要になるのだ。それが国ナビであり、民間企業において、会社の実質的所有者である株主が、経営を委任している経営者をチェックするために企業会計を利用する姿に重なるだろう。


1月1日

2005年あけましておめでとうございます。

昨年は本当に災害が多かったのですが、最後のとどめにインドネシアの津波被害が発生しました。 実は昨年の10月にタイのプーケットト島にいて、ビーチで半日ボケーっと過ごしたり、ピピ島のまわりで船に乗ったりしていましたので他人事とは思えません。 地震と言う地質学的に考えると、10月と12月はほとんど同じで、ビーチでボケっとしていた時に津波が襲ってきたら本当に逃げられたのかな、と我が身に引き比べて考えています。

最後の大晦日でも、関西では雪が降って交通が混乱しているようです。 昨年の夏は猛暑だったので冬は暖冬になるとの予測があって初冬は異常なほど暖かかったのですが、年末になってやっと平年並みの寒さになってきました。 おかげで寒さに慣れていない体には寒さが余計にこたえるようになりました。

前置きが長くなりましたが、毎年の1月号は、未来予測を行うのが通例になっていますが、昨年元旦の予測であるネット家電の進展がますます進んだように今年も脱PCとも言うべき現象が進むでしょう。 我家もとうとう年末に光ファイバーを引きました。 ADSLと実質的な速度は同じと言うことですが、その安定性は抜群です。100Mbpsという事ですが、実際には30-50Mbpの速度が一般的なようです。

ネットワークの進展には目を見張るものがあり、初期のLANであるイーサネットの速度が3Mbpsであった事を知る人は少ないでしょう。 その後仕様変更で10Mbps、さらには100Mbps、 1Gbps にアップしましたが、未だに10Mbpsで使っている人も多いと思います。 光ファイバーによって、LAN並みの50Mbpsの速度が出るとは誰が予想したでしょう。 10年ほど前に京都の町屋に156Mbpsの通信回線を引けと提案したことがありますが、こう言う形で実現するとは思ってもみませんでした。 近距離の通信手段であるUSB2.0 の理論速度が480Mbpsですので、LANが1000M、WANが100Mと言うのは良い組み合わせのように見えます。 最近のPCのアーキテクチャは1Gbpsの通信に耐えられるように作られていますので、LANにおいて数100Mbpsの通信は現実のものとして良いでしょう。 無線LANもIEEE802.11gになってから、通信距離などはかなり改善されています。 理論的には54Mbpsですが30Mbps程度の実測値は出るようなので、WANとも良い組み合わせになります。

我が家の光ファイバーは、ケーブルは1本ですが中に2本の光ファイバーが入っており、TVに関しては、インターネットと別のケーブルを使うようです。 いずれにしても、100Mx2=200Mbpsの能力があると言うことになります。 ADSLで通信速度が飛躍的に上がったように、将来は、同じファーバーを使って、更なる速度向上が図られることでしょう。片道1Gbpsとすると2本で上下往復で4Gbpsの通信の可能性が出て来ます。 現状のTVクオリティの映像では概略5Mbpsの速度があれば、十分に動画の伝送が出来ますので、その1000倍のクオリティの動画を送る事が出来れば、当分の間ここ数十年はインフラとして十分なものになるでしょう。

脱PCとして象徴的なのは、IBMがPC事業を中国の企業に売却したことです。 元々PCをここまで押し上げた原動力はIBMで、その実質的な終焉は時代の変わり目を感じさせます。 最初のIBM-PC のハードの心臓部であるCPUチップを作ったのはインテルで、そのOSを作ったのは マイクロソフトでありました。 OSをマイクロソフトが作った事は、いろいろ物語が出来ていて、CPMとそっくりだったとか、ビルゲイツがソフトウエアビジネスの基礎を築いたとか言われていますが、ソフト面同様ハード面は当時のIBMの方針に対して全く反するやり方で開発されました。

最初のIBM-PCはインテルの8088と言う何と8ビットバス幅のチップが使われていました。 放熱フィンなど全く無くて、通常のプラスチックパッケージに入っていました。 現在ではバス幅は64ビットになってきており、バスの高速化でバスとしては追いつかなくなってきたので、各チップを結ぶパス(バスではない)となってきましたが、数としても単に8倍になっただけでなく、その接続本数も飛躍的に大きくなって、最近では1000本近いピンを持つLSIまで現れています。

最初のIBM-PCはXTと呼ばれていて、流石に8ビットのバス幅では将来の拡大が無くなったので、その改良版として IBM-PC/AT が開発されました。 現在はさらにこれの改良型のATXが標準になっています。 しかし、元の IBM-PC の構成方法である、大きなマザーボートとそれに直角にIOボードを差し込むと言う形は変わっていません。 IOボードの接続も、元のカタチから変わって、現在はPCIバスになっていますが、これも近い将来に変わっていくでしょう。

日本では、日本語の処理が問題となって、NECが独占的な位置を占めていて、IBM-PCに相当するのはPC-9800でした。 最初は日本語の表示をハードを使ってやっていましたが、その内にCPUの性能が上がってきたので、IBM-PCのOSの国際版であるPC-DOS/V によってソフト処理で行うようになりました。 それがきっかけとなって、現在のPCの形がハッキリ出てきました。 本格的にPCを使い始めた最初のPCはNECでした。 その後出てきたIBM-PCに切り替えるのに大変な目に会った事を思い出します。

IBM-PCで思い出すのは、IBM-PC発祥の地、米国フロリダのボカラトンを訪問したことです。2時間の打ち合わせ、それもお互いの誤解であったことが分かったと言うだけの事でしたが、こう言うことでもない限り行く事もないでしょう。 後にも先にもこの時だけでした。ボカラトンは、マイアミから北に少し行った所にあって、マイアミは治安があんまり良くないですが、ここは住宅地と思うようなリゾートです。 IBM本社の目の届かないこの地で従来とは全く異なるやり方でIBM-PCは誕生しました。 その後、責任者が飛行機事故でなくなってから、IBM社内では迷走がはじまり、PC-DOSの後継のOS/2の低迷を経て、IBMはPC業界の指導力を失って行きます。

この時のIBMの態度は完全オープンで、ハードの回路図を含んだ全情報が本屋で売られている本に載っていると言う事に驚かされた記憶があります。 かたやハードのインテル、OSのマイクロソフトはクローズ戦略を展開して、事業的には成功を収めています。 しかし市場をここまで大きくしたIBMのPCチームの戦略はもっと評価されても良いのではないでしょうか。 ごく最近では、Linuxがオープンソース戦略で大きな成功を収め、インテルが設計情報をオープンにして行くことを発表するなど、事業展開の点でも時代の変わり目が感じられます。

今年始めの読み物は「新世紀デジタル講義」新潮文庫 ISBN:4101387249 立花 隆 \700(税込)。 ITで扱う情報とは何か、コンピュータの原理とは、ネットワークとは、を小気味良く講義します。 付録でオープンソースにも触れており、内容に古さを感じさせません。 日頃PCやインターネットを触っているが、イマイチすっきり分からないと言う気分の方や、ITが十分わかっている方でも、コンピュータの歴史を見たり、考え方を整理するのに最適です。 ところどころ話が上滑りしているところもありますが、全体としては十分合格点です。

特にコンピュータの歴史は、なかなかの圧巻。 機械式計算機からPCまで一気に話が進みます。 欲を言うなら、ここに第5世代コンピュータとかシグマプロジェクト、ワークステーションに少し触れていただいたら完璧ではないでしょうか。

ここに出てくるパラメトロンのコンピュータは学生時代に実際に使ったことがありますし、日本橋のジャンク品店でパラメトロンの基盤を売っているのを見たことがあります。 私の最初の自分で使うコンピュータ、今のPCみたいなものは、HITAC201 と言う国産機で、メモリやレジスタは全てドラム(ディスクみたいなもの)にありました。 ドラムは1回転する間に記憶の出し入れを行うので、1回転が10msぐらいだったので、一度メモリからレジスタにデータを持ってくるのに20msかかると言うようなものでした。 しかし、10進数を直接11桁扱うので、機械語だけでもそれなりに使えました。 大きさは冷蔵庫ぐらいで、2次記憶としてのテープ装置や、乗算器やインデックスレジスタもありハードウエアとしては、速度を除けば立派な装備でした。

その後に使ったのはコアメモリのマシンで、速度は1000倍速くなりましたが、ハードは極限まで切り詰められ、アドレス計算も別に行わなければならないものでした。 面白かったのは、データをメモリに格納する命令が2つあって、ひとつは通常のものですが、もうひとつはジャンプ命令の飛び先アドレスのみを書き込むもので、これによって条件ジャンプを行うと言う、本当のプログラム格納式の利点を究極まで追及したものでした。 本書に出てくるチューリングマシンを髣髴とさせるものでした。 いずれにしても、初めて見たものを親鳥と思うような刷り込みがこ、このコンピュータで起きた事は間違いありません。