2018年 元旦 あけまして、おめでとうございます

昨年はトランプ騒ぎに北朝鮮挑発、日経平均株価の高騰、モリカケ騒ぎ、安倍政権の一強棚ぼた勝利、それとAIやEVの話題沸騰など「申酉騒ぐ」の格言通りでしたが、今年は「戌笑い」で良いことが多そうです。

米国は、すでに金融緩和を緩めて利上げ段階に入っているのですが、日本経済は景気は良いものの、物価水準が未だに目標の2%に到達しないまま、今年は日銀総裁の任期も来てしまいます。

物価もさることながら、あれだけ現金預金の内部留保があるにも関わらず、賃金が上昇しません。 政府が音頭を取って賃上げを推進するのは、若い頃に賃上げを圧縮しようとしていた時代を知るものにとっては隔世の感があります。 ここしばらくは金利も上がらないでしょう。 金利は政策的な事が大きいので、しょうが無いですが、これだけの人手不足のなかで賃金が上昇しないのは現経済の最大の不思議です。

賃金が上昇しないことは、思い出してみると20年以上前にアメリカで感じました。景気は良いのにレイオフが連日新聞に出ていて、賃金も思ったほどは上がっていませんでした。 アメリカはベンチャーが多いので、ベンチャーの立ち上げ時の給与は極めて低いのが当たり前なので、そうかとは思っていましたが、今になって思うと、賃金問題の要因は当時からあったように感じます。

本の賃金は支払賃金では増えていないが、雇用者負担の社会保険は増えているので、経営側から見た支払い賃金総額は増えていると言う議論もあるようです。 しかし全体の労働分配率は増えていないし、労働生産性は2000年以降下がってきていると言うことなので、その原因はともかく、経済理論的には不思議では無いようです。

それにしても労組の非力さは目を覆うばかりです。 企業内労組が多いからと言う理屈もついているようですが、バブル前でも企業内労組は多かったですが、スト権を含めて「闘う労組」だったと思います。 最近は非正規労働者の問題とかを連合が言い出していて、以前は組織労働者しか対応しないと批判されていましたので、進歩したと思いますが、本尊の組織労働者の労働条件の最大の要素である賃金を上げると言う任務を遂行できない労組は存在意味がないと思います。 どちらが原因か結果か分かりませんが、連合が支援する野党はガタガタになっています。

この中で本来リベラルの売り物である福祉の充実とか賃金の上昇とかの政策を与党が採用してしまうので、野党としては打ち出す政策が無くなってきてることが、与党がうまいのか、野党がだらしないのか、どっちにしても日本国の政治には余り良くない状況になって来ています。 中途半端な野党連合を言うより、寄り合い所帯の連合も半分に分かれ、既に分裂している野党も2つぐらいにまとまるべきだと思います。

安倍政権は内政では、いろいろ有りますが、外交は大成功ですね。 やはり長期政権で無いと外交は出来ないと言う証明です。 ただ安倍首相は少し内弁慶。 あの国会のやりとりを外国でも発揮して欲しい。 トランプや習近平との写真を見ていると、何か頼りないと言うかおもねている印象があります。 また、国会も何も無い中国に比べて、国会に出ないといけないのも足を取られる一因でしょう。 それにしてもこれだけ行くと政府専用機も使い甲斐があるというものです。 一方で外務大臣は民間機を使ってると初めて知りました。

外務大臣の「おねだり」と言って批判を浴びた右派新聞がありましたが、スケジュールが決まっている民間機では仕事にならないでしょう。 アメリカのちょっとした大手企業のトップはみんなプライベートジェットを使っています。 もっともアメリカではハブ式なので、地方から地方に行こうとすると丸1日がかりの旅程になってしまいます。 トランプなんか自分で飛行機会社を持っているくらいですので、外務大臣にはエアバスとは言わないまでも、ビジネスジェットは必須ではないでしょうか? 国益を考えると安いものだと思います。 政府専用機なみに空自の運行にすると大変なので、日航か全日空へ業務委託したら良いのではないでしょうか? それも一機運行で。

昨年はAIが大いに話題になって、AIによる自動運転が今にも実現して、AIによって仕事の大半がすぐにでも取って代わられると言うような報道がありましたが、なかなかすぐには進展しないと思います。 電気自動車EVも、ヨーロッパと中国がそれぞれの思惑で言い出していて、少し乗り損ねたトヨタが大慌てしていると言う図式でしょう。 トヨタは先の先で水素自動車を推進していましたが、急に電気自動車の機運が上がってきたので、あてが外れた格好です。 まあハイブリッドは、燃費向上のアイデアとして新入社員にやらせておいたのが棚ぼたでマーケットが出来たので、それはラッキーと思って、電気自動車もそれなりにやらないと行けないでしょう。

日産のゴーンさんはサスガにハイブリッドを飛ばして、最初から電気自動車を推進してミーブなどをだしていましたが、日本らしくグズグズしていたら、あっという間に中国勢にやられてしまいそうです。 勝手な想像ですが、中国では例えば電気自動車を半分に分けて、半分ずつ太陽光で充電して走らせれば、太陽光の不安定さも解消されるのでは無いでしょうか。 工場の操業も日中のしかも晴天時にしか許さないことにすれば、太陽光の不安定さも克服できるのではと、先日の中国大規模太陽光発電の番組を見て思った次第です。 APECの時の北京ブルーの空を見ていると、この国は多少の困難は指令一つで克服出来るのでしょう。

2018年は、インターネット2.0の始まりでは無いでしょうか。 インターネット2.0の最大の代表はブロックチェーンでしょう。 ビットコインなどで代表される仮想通貨で脚光を浴びましたが、これはこれで通貨とは何か?と言う問いを発する事と、新しい通貨の社会実験であると思いますが、これはブロックチェーンの応用の一つであって、本来の革命はブロックチェーンです。 基本的には、10年ほど前に大問題になり、制作者が裁判にかけられたWinnyに代表されるP2P技術がそのベースになっています。 P2Pはそれ以前から合ったのですが、使い道が分からず、最初の大きな応用が音楽の違法配信であったのが不幸の始まりで、その後は日陰者になっていましたが、ブロックチェーンで大きく花を咲かせた感じがします。

ビットコインで全てのトランザクションを各PCが持っているのも、いずれは限界に来ると思いますが、ちょっとしたデータベースであれば、極めて容易にサーバー不要でシステムを構築でききます。 その内にパッケージ化されたフリーソフトが出てくると思いますが、ビジネスにするには少し時間がかかるかも知れません。 元々フリーであったLinuxもサポートを付けて優良でビジネスになっていますので、うまく付加価値を付ければ良いと思います。

インターネット2.0で次に大きな役割を果たすのがAIです。 特に音声認識は目を見張るものがあります。 スマートスピーカーが話題になっていますが、普通のスマホでも同じ事が出来て、辞書に登録されていないと思われる語句を除いて、ほとんどの音声を聞き分けることが出来ます。

20年程まえに現在の使い方に似たような事を想定して、5年間ほど音声認識の開発をマネージしましたが、結局使い物にならずで終わりました。 話者の癖学習やマイクロフォンの選択や照合する辞書の効率化などをやりましたが徒労に終わってしまいました。 今回のディープラーニングで、性能は飛躍的に、それこそシンギュラリティ的に向上しました。 最初にスマホで音声認識したときは、あっけにとられました。 それまではまともに認識したシステムは見たことが無く、ジョブズが実演していた映像を見ても、半分ヤラセだと思っていたくらいです。

この音声認識は半分はディープラーニングですが、残りの半分はインターネットでしょう。 高性能のサーバーで認識してリアルタイムで応答するネット技術も非常に重要です。 ディープラーニングでテンプレート照合ではクオンタムジャンプしたのですが、次のジャンプはどうなるのでしょうか? 恐らく量子コンピューターがその鍵を握っているのではないでしょうか?

量子コンピューターも実用にはあと10年ほどかかると思いますが、その間に量子コンピューターに向いたAIアルゴリズムを考えないといけないでしょう。 ディープラーニングを開発した人も、ここまで行くとは思っていなかったようなので、ひょっとして次のステップでは、人間の思考能力に近いものが出てくるかも知れません。 ネットのお陰で、高価な量子コンピューターでも、携帯端末でその恩恵を受けることが出来るようになると思います。

技術的には余り高くないと思いますが、インターネット2.0の第3の要素はIoTです。20年くらい前にM2Mとして取り組んだ事があるので、大体のビジネスアイデアは当時考えたことと同じですが、これからは少しそれから発展したものが出てくるのでは無いかと期待しています。 NTTかドコモかのTVコマーシャルで、IoTの宣伝をしていましたが、ここで取り上げられている実例は、20年前にやったことそのもので、新しいアイデアはあまり出てこないのだと感じます。

一方で最近入手したのはエアコンのリモコンをIoT化したもので、AmazonのAWSで動作し、スマホから遠隔でエアコンなどの自宅の機器を操作したり、自動タイマー動作させることが出来ます。 これの優れた点は、いわゆるルーター越えを何の設定も無くやってしまうことです。 パナソニックのディスクレコーダーのDigaでも同じように、何の設定もなく、自宅のルーターの外でレコーダーの番組を視聴できます。 例えば、ネットと繋がっていれば、ワンセグ機能の無いスマホでも、TV番組緒をスマホで視聴できます。 しかもBSも視聴できるというおまけ付きです。

このIoTリモコンとスマートスピーカーをつなぐと、いろいろな設定は必要ですが音声で操作できるようになり、昔のSF映画のように、「電気を点けて」というだけで、照明を点灯させることが出来ます。 しかもこれが総額でスマートスピーカーを除いて1万円もせずに実現できると言うのが革命的です。

この様にインターネットそのものが大発明で、これだけ社会に大きなインパクトを与えているのにノーベル賞もしくはそれに匹敵する賞をを授与しないのは、単に受賞者がいないからでしょうか。 さらに日本人が発明者をされているビットコインやブロックチェーンには受賞の資格は十分あると思います。 受賞者が分からないと言うのも原因だと思いますが、この様な一種の数学であるコンピュータ科学は、素粒子や医学などの自然科学より一段落ちる応用科学だと言う認識があるようなので、ノーベル賞には数学部門がありません。

単に自然の法則を「発見」しているだけの自然科学と、基礎の前提から人間の頭脳が論理的に考える数学を比べると、数学の方がよりレベルが高いと思うのですが、こう言う論調は余り見たことがありません。 コンピューター科学の領域の末端に居たものとしては、もう少しコンピュータサイエンスの地位が上がってくれると、うれしいと思う初夢でした。

今月の読み物は正月休みです。


今月のひとこと2017年12月号

2017年12月1日
国会は北朝鮮のミサイル発射にも関わらず、相変わらずモリカケに固執する野党が居る反面、与党に質問時間を多く配分したので、いろいろな議論が国会中継で聞けるようになりました。 確かに安倍政権はには飽きが来たし、横暴なところもあるし、モリカケも納得できない点はあるものの、安定した政権が望ましいし、問題もたいした問題では無いと言うことでしょう。 支持率は余り大きく下がらないです。

 

 

 

ドイツのメルケルが怪しくなってきたので、ますます安倍さんの外交が光ってくるのでは無いでしょうか。 野党はことあるごとに外交解決を叫びますが、これも安定した長期政権と首相が居るためで、性急な政権交代は百害あって一利無しです。

相撲界も大揺れ。 真相は相撲協会と貴乃花の対立の構図が見えてきました。 けど理事長の「すんませんでした」は無いと思いますよ。 「申し訳ありませんでした」とか言えないものでしょうかね。 一応は相撲界のトップなんですから、元力士とは言え、それなりの物言いがあっても良いと思います。 また白鵬も、勝手な振る舞いが目立ち、そもそもモンゴル人ばかりの相撲になってしまったのが、問題で、結局日本人力士が弱すぎるのが根本的な問題でしょう。

やっと春闘の前哨戦が始まりました。 そもそも政府が3%もの賃上げを要請するというのは、社会主義国ではあるまいし異常です。 一番の責任者は労組と財界。 労組はそもそも賃上げのためにあるはずで、労働者の労働環境の向上の最たるものは賃上げでしょう。 企業側には支払能力があるのですから、ここはストを打ってでも、賃上げを獲得すべきでしょう。 その労組と関連が深い野党にもそう言う声は余り聞こえてきません。

次に問題は財界、特に経団連。 経団連こそ、こう言う大局的な、政治的なテーマを扱うべきで、個々の企業は利益を追求するので、しょうが無いとしても、経団連ぐらいは、旗を強力に振るべきです。 どうも今の経団連の会長は、出身企業の問題もあり、早期に引いて頂いて、次の日立出身の会長に引き継ぐべきです。 東レの問題にしても、自分が社長時代だったにも関わらず、自分は知らなかったとか、サラリーマン社長丸出しのコメントで、その時の責任を痛感すると言うような文言は無かったです。 本当にこの人は心の底から社長をやっていたんだろうかと感じました。 現会長は就任したときからイマイチだと感じていましたが、その通りになりました。

株価は23,000円が壁になって、その前で一進一退を繰り返しています。 北朝鮮のミサイルには、もうあまり反応しなくなりましたが、全体の動きが鈍いです。 単元株単位の売買も結構多くて、乗り損ねた個人が細々と売買している感じです。 いずれには3万円に到達すると言う話もありますが、時期はいつか分からない、いずれ、と言う話です。 オリンピックまではこの様な調子だと思いますが、オリンピック後がまったく想定できないですね。

今月のITの話題は、IoTとChromecastです 冷温室は元々エアコンがあり、メインの温室にも石油ストーブの代わりにエアコンを付けました。 最近はエアコンの効率がドンドン上がって、灯油を炊くより安くなったと言うことです。 それともっと面白いのは温度の制御が容易になったことです。 最近のエアコンには遠隔制御の機能の付いた物もあるようです。

温室の夜温を下げたいので何とか制御できる方法はないかと思って探したら、赤外線リモコンを遠隔で動かすものがたくさんネットの上にありました。 大分迷いましたが、eRemote と言うのがあったので、買ってみました。 温度制御が面倒だと思いましたが、どうもエアコンの赤外線リモコンはTVと異なって、1ボタンが1機能に対応していなくて、例えば暖房のボタンを押すと、電源オンと設定温度情報が一気に送られるようです。 つまりリモコン自体がそれなりの自立性を持っていると言うことが分かりました。

この端末とAmazonの AWS IoT の組み合わせで遠隔で制御できるようです。 NAT越えも容易で、LAN/WAN問わずにアクセスできるし、毎日の定期動作の様なタイマー機能もこのAWSで行え、スマホとは関係なく動くようです。 いま流行のスマートスピーカーとの連携もあり、仕様はあまり固まっていないようで、少し前の端末はいずれは動作しなくなるようです。

Chromecastは以前からありましたが、少し高いので、安い Anycast を買ってみましたが、最初は動作したのですが、最近は動作しなくなって、当初はこちらにも知識が不足していた事もあり、うまく使えませんでしたが、Chromecast は作り込みもしっかりしていて、容易に使いこなせます。 これでスマホやタブレットの画面を大きなTV画面で見ることが出来ます。

これに関連してPanasonicの Digaも キャストに対応しており、Diga自体でもネットアクセス可能なので、Youtube などはTV放送と同じ感覚で、TVのリモコンを使いながら視聴できます。 しかし、もともとスマホ用に作られているので、Chromecastを使ってスマホでコントロールしながらTVに映し出すのがやりやすいです。 またDigaは、外部でのスマホのアクセスも可能なので、ワンセグが付いていないスマホでも自宅のDigaをアクセすることで視聴できます。 おまけに録画したものやBS放送も視聴できるので、ヘタにワンセグが付いているより便利です。

今月の読み物は【2017年・第15回『このミステリーがすごい!大賞』大賞受賞作】 がん消滅の罠 完全寛解の謎 (『このミス』大賞シリーズ) 単行本 岩木 一麻 著 ¥1,490。

オススメ度 ★★☆ ガンに関心があれば一読を。

今年の初めの本で、少し古いですが、ガンの知識が少しでもあると、面白く読めます。 ネタが分かるとなーんだと言うことになりますが、その前のガンのいろいろな情報が面白いです。

がん消滅の罠ー完全寛解の謎 [著]岩木一麻
苦痛さえコントロールできるなら、がんが一番いい死に方だといわれる。余命を宣告されてから死ぬまでの間に、いろいろと準備できるからだ。もっとも、だからといって、発がん性物質をもりもり食べる気にはならない。やっぱり、がんにはなりたくない。

がんで余命宣告を受けた時点でお金が支払われる生命保険がある。では、余命宣告を受けた後で、がんが治ってしまったらどうなるのか。岩木一麻『がん消滅の罠』は、そんな「もしも」を題材にしたミステリーである。

余命半年と宣告された患者の病巣が、生前給付金を受け取った直後に消えてしまう。それだけなら喜ぶべきことだが、連続して4人もとなるとおかしい。たんなる偶然か、それとも新手の保険金詐欺なのか? 患者を担当した医師・夏目と、友人でがん研究者の羽島が謎に挑む。

浮かび上がってきたのは、政財官界のセレブたちが治療を受ける怪しい病院の存在だ。しかし、がんを治したり再発させたり、そんなことが自由にコントロールできるのか。誰が? 何のために? 謎は深まるばかりである。

本作の魅力は、がん治療とトリックとをうまく結びつけたところにある。医療ミステリーであると同時に、謎解きを楽しむ本格ミステリーでもある。がんとは何か、転移や治療法などについても、登場人物の会話というかたちで解説される。最後の最後まで読者を安心させない。

第15回「このミステリーがすごい! 」大賞受賞作。この賞からは、医療ミステリーの旗手、海堂尊がデビューしている。新たなスターの誕生を歓迎したい。 評者:永江朗 (週刊朝日 掲載)

内容紹介
選考委員絶賛、第15回『このミステリーがすごい! 』大賞・大賞受賞作!
・史上最高レベルの医療本格ミステリー。こんなとんでもない謎を正面に掲げるとは前代未聞、大胆不敵。(大森望)
・まったく見当のつかない真相。謎の設定がとにかく素晴らしい。(香山二三郎)
・最前線でがん治療に当たる医療現場が抱える今日的問題をテーマに、圧倒的ディテールで描く医学ミステリー。(茶木則雄)
・この小説の「売り」は「がん消失」の驚くべき企みとその真相だ。(吉野仁)

日本がんセンター呼吸器内科の医師・夏目は、生命保険会社に勤務する森川から、不正受給の可能性があると指摘を受けた。

夏目から余命半年の宣告を受けた肺腺がん患者が、リビングニーズ特約で生前給付金3千万円を受け取った後も生存しており、それどころか、その後に病巣が綺麗に消え去っているというのだ。同様の保険支払いが4例立て続けに起きている。不審を抱いた夏目は、変わり者の友人で、同じくがんセンター勤務の羽島とともに、調査を始める。

一方、がんを患った有力者たちから支持を受けていたのは、夏目の恩師・西條が理事長を務める湾岸医療センター病院だった。その病院は、がんの早期発見・治療を得意とし、もし再発した場合もがんを完全寛解に導くという病院。がんが完全に消失完治するのか? いったい、がん治療の世界で何が起こっているのだろうか―。

内容(「BOOK」データベースより)
治るはずのないがんは、なぜ消滅したのか―余命半年の宣告を受けたがん患者が、生命保険の生前給付金を受け取ると、その直後、病巣がきれいに消え去ってしまう―。連続して起きるがん消失事件は奇跡か、陰謀か。医師・夏目とがん研究者・羽島が謎に挑む!医療本格ミステリー!2017年第15回『このミステリーがすごい!』大賞・大賞受賞作。

 

今月のひとこと2017年11月号

2017年11月1日
それにしてもTVから、なかなか目を離せない1週間でしたね。 民主党/民進党は落ちるところまで落ちたと言う事でしょう。 離党者が出てきたので前原代表は焦って、合流を決めたらしいが、それにしても民意というか情勢をここまで読めないのは、政治家としても、まったく適性を欠きますね。

 

今回の選挙で一番、露わになったのが前原代表。 政権を取ったときの八ッ場ダムの時から注意深く見ていました。 元々興味のある人でしたから、八ッ場ダム問題をどう決着付けるのか、非常に興味があって注目していましたが、結局何のアクションも無しで放りっぱなしで終わりました。

その後は代表の時の、例の偽メール事件。 いくら議員は個人的な立場で活動するとしても、公党のそれなりの人を攻撃するのですから、ちょっと待てと言ってウラを取るぐらいの事はやっても良いと思いました。 問題発覚後は、自分で国会の席相手に謝りに行ってましたが、これやるくらいなら、少しチェックしたらどうかと思います。 結果的に本人は自殺してしまって、この時もサポートと言うか面倒見をもう少しちゃんとやっておくべきでした。

本人とは直接話をしたことは無いですが、某知事の横で知事が別の人と話をしている間、そばでじっと話の終わるのを待っていたのが記憶にあります。 単に挨拶をしただけですが、某知事は「おっ」と手を上げただけでした。 この時はすでに下野していて、特に役職も無かったように思いますが、元民主党代表であったことは間違いないですので、ちょっと意外な力関係に愕然としたことを覚えています。 小沢さんとも稲森さんとも近いので、それなりのアドバイスはもらっているはずですが、結果が悪すぎます。

希望の党も、あまりに急ぎすぎたので、ガタガタでしたね。 大阪維新でも元の代表が知事になって2年で地方政党、その後2年経って初めて国政政党にやっとなったので、今回は余りにも短すぎる。 安倍首相の仕掛け勝ちと言う話もありますが、1年後でもしんどいと思います。 余りに頼りない元検事と急遽参加した脱藩組でもギクシャクしていたので、最初から話にならなかったのだと思います。

政権選択選挙と言いながら、たいした政策も無し、首班候補もなし、候補者の数もなしで、もし万が一政権交代が起きても、参議院は多数を取れないので、またまたねじれ国会となり、単に政治混乱を招いただけでした。 前回の政権交代は、小沢一郎が大戦略を立てて、まず参議院から崩していって、政権交代に繋げたのであって、その後の問題はいろいろあったものの、今回のような単なる風だけではなかったように思います。

それにしても国民は前回の政権交代で大いに学びました。 「安倍政権は嫌いだが、他の選択肢が無いので、しょうがない。 ヘタすると政治混乱を招く。」と言う非常に冷静な判断があったのではないでしょうか。 はっと気がつくと、音なしの構えだった北朝鮮の問題もあるし、中国では6年どころか10年以上ひょっとしたら20年以上も習近平体制が続きそうで、非常に合理的な判断だったと思います。

音なしの構えの北朝鮮を想定して、解散を打ったのだとしたら、たいしたものです。 日本だけでは無理ですが、アメリカからは種々の情報が寄せられていたと思いますので、単なる偶然で北朝鮮がおとなしくなったわけでは無さそうです。 要するにアメリカが本気でやり出そうとしているようなので、トランプ訪アジア後から年末にかけて大きな動きがあるのではないでしょうか。

戦略爆撃機のB1Bが秘密裏に北朝鮮沿岸を飛行したのに、それを北朝鮮が探知できなかったのではないか、と言われていて、旧式のレーダーでは、最新式のステルス機能があるB1Bを察知できなかった様子で、北朝鮮はこれに非常にショックを受けているのはないでしょうか。 知らない間に侵入されて、爆撃される可能性がたかまったのですから。

政権の安定でサスガに株価は上がりました。 余りの急激な上昇に、売りをしかけた投資家の死屍累々だったそうです。 売りの返済による踏み上げで、株価の上昇に弾みが付いたと言う話もあります。 水曜日には少し下がって16連騰は消えましたが、その後の金曜日の後場で一気に上がりました。 本稿は日曜日に書いていますので、月曜日がどうなるかです。 中期的には23,000円だとかPERで見ると24,000円だとか、25,000円だとかと言う見方もあります。 海外や日本の機関投資家がまだ本腰を入れていないようなので、大幅な下落リスクは少ないと見られていますが、北朝鮮で何かあると下落になるのではないでしょうか。

経済の最後の問題の賃金上昇ですが、なんでこれを総評/民進/みどりで推進しないのか? 以前は賃上げは労組の専売特許で、スト含めてドンドンやってました。 これだ人不足に陥っているのに賃金が上がらない、特に組織率の高い大手で賃上げ要求が出てこないのは理解できないです。 財界も政府から3,000億円負担しろ、と言われるばかりで、何ら政策があるような印象がありません。 以前なら賃上げして経済に好影響を与えると言うような議論が賃上げ交渉でもありましたが、最近では政府が要求するばかりで、妙に政治に介入したりして、何のための労組かと思います。

最近のIT分野の大きな話題はWifiセキュリティのWPA2の脆弱性が、明らかになったことでしょう。 セキュリティ無しは論外としても、最初のバージョンであったWepはいとも簡単に解読できることが分かって、その後はWPA2が主流になっていて、これ以外は設定しないようにと言う注意があったのですが、これも破られてしまったと言うことです。

 

正確に言うとWEPのように暗号そのものをクラックしたと言うことではなくて、その暗号キーそのものを入れ替わってしまうと言う問題です。 キーをやりとりするときのプロトコルに穴があって、それを利用してキーを入れ替えてしまうと言うものです。 全世界では、天文学的な数のWIFI機器が存在するので、その対応は非常に困難だと思います。 PCやスマホに関しては、ドライバーを更新すれば良く、すでに更新パッチが配布されているそうですが、問題はルーターなどの単体機器で、これのファームウエアの更新は並大抵では無さそうです。

当面の対策は「有線化」と言うものですが、これはほとんど意味が無いです。 一番有効なのはVPNを使うことで、一部のウイルス対策ソフトには有料ですが、そのような機能があるようです。 本来はセキュリティなしのパブリックWIFIを使うための機能ですが、こうなってはWPA2があろうが無かろうが、セキュリティがないものとして考えないといけないようです。

もっとも無線の有効範囲内に入らないと盗聴は出来ませんので、人が多い所以外では、そんなに神経質になる必要もないと思います。 ただピンポイントで狙われると、打つ手無しで、VPNを使うしか無いと思いますが、同じピンポイントなら他にも手がありますので、手間のかかるWPA2クラックより他の方法を選ぶかも知れません。

今月の読み物は「闘いを記憶する百姓たち: 江戸時代の裁判学習帳」 歴史文化ライブラリー 単行本 八鍬 友広 著¥1,836

オススメ度 ★☆☆ 興味のある人は読むべし

むしろ旗を押し立てて、手には鍬や鎌を構えてと言うのが百姓一揆のイメージだと思いますが、これは江戸時代前期までのことで、その後は主に訴状をだして、今で言う訴訟に近いものだったとのことです。 もっとも現在の民事裁判とは異なり、ヘタをすると首謀者は死刑になると言うリスクもあっての上の訴訟だったようです。

しかも、この訴状が教材として広く流布していたと言うのは驚きです。 ここで主に取り上げられている「白岩目安」は単純な訴えでは無くて、10年以上に渡る領主との摩擦の結果ですので、為政者にとっても、非常に機微なテーマだと思います。 そこまで追い詰められているので、命を掛けてでも訴訟を行うと言うことになるのでしょうが、このような機微な文書が、教材として流布していたのは、さらなる驚きでした。

寺子屋で用いられていたような、如何にも教科書と言うのでは無くて、一見古文書そのものと思われるものでも、往来物と言われるような教材として出回っていたのです。 日本の古い家には多量の古文書がありますが、新聞記事になるような「龍馬の手紙」みたいなものはほとんど無くて、手紙の書き方のような往来物が良く出てくるとのことです。 他に多いのは、当然ながら借金証文や年貢を収めたあとの領収書である皆済目録などで、永久保存文書が多いのは当然だと思います。

今月のひとこと2017年10月号

2017年10月2日
今年は9月末になって旧に寒くなってきました。 先日の明け方には14℃になっていました。 そんなに低温では無いのですが、暑さに慣れた体には寒く感じます。

 

気候の急変と共に、政界が騒がしくなってきました。 安倍首相の突然の解散に端を発して、大きな政界再編に結びつきました。 それにしても民進党は情けないですね。 一度政権についた党とは思えない、まとまりの無さと誇りのなさです。

希望の党に入れてもらえないとかの、何とかしてくれない病に取り付かれているとしか思えないです。 安保法案にあれだけ反対していた政治家が、アッサリ希望の党に合流できると思う方がおかしいのであって、正反対の意見を持つ政治家が同居してたのですから、ここはアッサリ党を半分に割って、リベラルと言われる政治家は行くところが無いのですから、保守サイドが希望の党と合流したら良かったと思います。 しかし前原党首にそこまでの力すら無かったのか、はたまた個人の能力のせいか、なんとも無様な最後となりました。

民進党の原理主義者」、「理想主義者」、「現実主義者」などと言われて来た政治家たちが、何も言わないのも失望です。 リベラルの新党立ち上げが話題になっていますが、最初から粛々と撤退すべきだったと思います。

小池知事が出馬するのでは? と言うことが話題になっていて、先週の段階では出るのではとなっていたのですが、日曜日のNHKの番組で、出ないと若狭議員が述べたので、その可能性は急速に減ってきています。 恐らく過半数に達する候補者を用意できていないと思いますが、これくらいの票読みは、希望の党はもちろん政治評論家やマスコミに出来て当然だと思います。

自公が過半数を割ると、維新などとの連立内閣の可能性が出てきますが、これは日本にとって悪夢以外の何者でも無いと思います。 世界の中で日本の政治だけが安定してポピュリズムとは無縁だと思われていたのですが、とうとう日本にもポピュリズムの波が突然あらわになったと言うことでしょう。

この点では世界を十分見て、世界の流れを体感してきたはずの安倍首相の想定ミスだと言わざるを得ません。 やはろ3期目を睨んで、来秋の退陣を想定していなかったので、早期解散に踏み切ったのですが、パンドラの箱を開けてしまったと言うことです。 最後に残ったのが希望だと言う話ですが、現在ではポピュリズムと言う怪物が残ったとなってしまいます.

最近のIT分野では量子コンピュータが話題を集めています。水中での量子通信や衛星との量子通信も高速で行われるようになり、いよいよ量子による情報処理が本格的になりそうです。 AI分野の技術シンギュラリティと言うかクオンタムジャンプはディープラーニングでなされ、認識技術の飛躍的な向上に繋がりました。 しかし更なるジャンプには別の技術が必要で、これが量子情報処理かも知れません。 これによりAIも自意識を持つようになり、人間に一歩近づくかも知れません。 あと10年内には、何らかの結果で出てくるでしょうから、生きているうちに、自意識を持つAIを見ることが出来るかも知れません。

量子コンピュータの分野では半導体の上で量子もつれを作って処理するものが主流ですが、量子ビットの数が少なくこれ以上の規模拡大には制約がありましたが、最近のニュースで、光を用いた量子コンピュータが発表されました。 予算の時期なので、来年度の予算狙いのプロジェクトがどんどん発表されますが、これはすごいものだと思います。 量子ビットも数百万ビットも見込めるとのことで、非常に大きな可能性を感じさせます。

今月の読み物は、江戸の長者番付 (青春新書インテリジェンス) 菅野 俊輔 (著)
Kindle版 ¥864 新書 ¥961

大名やトップクラスの武士の年収は、現代の地方自治体に当たるので、現代と比べるのは余り意味がないと思います。 面白かったのは歌舞伎の入場料とかミソ醤油や傘下駄の値段なんかは面白いです。 現代と比べて意外に高いものと安いものや、ほとんど変わらないものも多くあります。

明治維新によって徳川幕府が否定され、その治世であった江戸時代が必要以上に過小評価されていますが、この本を読むと、特に江戸時代後半は現代とほとんど変わらない生活を送っていたことが、良く分かります。

本書にはあまり記述がありませんが、当時もサラ金があって、大名は年貢米の前借りでお金を借りていました。 それも利率は非常に高く、十数パーセントから20数パーセントにもなります。 金貸しは当然に儲かりますから、時々徳政令で借金棒引きをされても、何とか生き延びることが出来たのでしょう。

面白いのは、1両10万円で換算すると、千両は約1億円。 千両箱と1億円入りのアタッシュケースはほぼ大きさも重さも同じようなものになります。 また1石は1両相当ですので、この換算で行くと、加賀100万石は1000億円となり、これは知行の石高なので税率40%とすると、400億円となります。 一概に比較は出来ませんが、石川県の平成29年度一般会計予算が約5300億円で、しかも市区町村の予算が入っていませんので、当時は非常に小さな経済圏であったことが分かります。

内容紹介
江戸幕府の八代“暴れん坊”将軍の年収は、なんと1294億円!
その将軍に勝るとも劣らない1000億円超の年収を稼いでいた人物とは?
江戸きっての大豪商である三井越後屋・三井八郎右衛門の驚愕の収入は?
いっぽうで、“宵越しの金を持たない”庶民や、内職が欠かせない下級武士の稼ぎは……
驚くべき年収ランキングから、江戸のリアルな生活事情が見えてくる、興味津々の一冊!

今月のひとこと2017年9月号

2017年9月3日
暑い夏も終わりに近づいて、やっと少し涼しくなってきました。 加計問題にかまけている間に、東アジア情勢は風雲急を告げて、とうとうミサイルが日本を超えました。 いろいろな情報をまとめると、どうも今回の発射は、最終段階で失敗したようです。 本来は距離的にグアムに届く所に発射したようですが、少しショートして短くなったようです。 

 

しかし計画はそうであっても、発射の段階でアメリカの反応を考えて、少し短くしたと言う可能性も残っていると思います。 それにしても金正恩はしっかりしている。 オーラも出てきた。 北朝鮮はすぐに崩壊すると言った評論家は何処に行った? 金正恩を選んだ北朝鮮政府の上層部の選択眼はしっかりしていたと言うことです。

このミサイル発射状況下での経済七不思議の最大のモノは、日本が危機にあったにも関わらず円が上昇したと言う事です。 サスガに株式は下落しましたが、すぐに元に戻りました。 ミサイル発射と言うことで、これは円が下落すると思ったのですが、有事の円買いは当事国になってもその通りだったと言うことでしょうか。

いずれにしても円が常に高めに振れるのは、基本的には日本の経常収支が黒字だと言うことです。 政府債務が巨大だと言うことで円暴落を予想する人が居ますが、これは日本が経常収支黒字で、しかも世界最大の債権国だと言うことを忘れているのだと思います。 政府はなるほど財政赤字を抱えていますが、日本の国全体としては黒字国で、政府の財政赤字を日本国内で相殺しても、日本国としては黒字のままのピカピカの国のままです。

ちなみにアメリカは世界最大の債務国で、国としても借金まみれで、通常の国ならとっくにデフォルトを起こしていると思いますが、最強の基軸通貨であるドルの発行権を持っているために、それでも平気です。 もっとも政府の財政赤字は深刻で、アメリカの国債は上限が法律で定まっており、これを毎年法律を作って更新しているのですが、これが9月に再び上限に達します。 現時点ではマーケットは楽観的で、過去にも例があってギリギリのところで、法案が成立したのですが、今回のトランプ政権では民主党が反対を崩さず、民主党の一部の賛成が無いと成立しないようで、9月末が近づくと状況は混沌としてくるかも知れません。

通貨発行権を持つ国の赤字と言う点では、一ランク規模が小さくなりますが、日本の国としての赤字と政府の赤字も、アメリカの世界とアメリカの国との対比で似たようになります。 アメリカが世界に対して赤字でも平気なのは、日本政府が日本国に対して赤字が平気なのと似ています。 財務省は財政均衡主義なので、どうもこの日本政府と日本国の区別を意図的に曖昧にして居ると思いますし、特に家計との対比はまったくのミスリードになっていると思います。 先日の日経新聞の大機小機欄で、遅ればせながらの指摘がありました。

今月の読み物は、応仁の乱 – 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書) 呉座 勇一著

オススメ度 ★★★ 是非読むべし

京都で先の大戦と言うと応仁の乱。 太平洋戦争では焼けなかった京都も応仁の乱では丸焼けに。 特に上京は戦場になったので、ほとんど丸焼けになったようです。 何しろ登場人物が多いので、名前を覚えるだけで大変ですが、やっと読みました。 少し予備知識がないと、学校で教わっただけではなかなか読めないです。 私は録画したのを見ましたが、探すとYoutubeにありました。

 

まずこれで全体を掴んで読んだほうが理解が速いと思います。 文章そのものは非常に分かりやすくうまいですが、内容がややこしいので難解です。 

 

基本的に京都と河内が舞台なのですが、主役の一人の畑山政長の墓が大阪平野にあります。 以前に行ったことがあるので、写真を引っ張り出しましたが、当時はあまり応仁の乱に興味がなかったので失念していました。 墓と言っても、住宅地の真ん中にあって、非常に行きにくいし、草ぼうぼうだし、何の変哲も無い五輪塔だし、本当かな、と当時から思っていましたが、どうも本当らしいです。 墓地の一角にある『乃木将軍景仰碑』は3m以上はある大きな石碑で、何でも畠山政長の軍師であった佐々木源次左衛門清高の子孫が乃木希典であるらしい。 それにしても墓地はみすぼらしい。

【以下引用】
成功例の少ない「応仁の乱」で18万部。日本史研究に新たなスター誕生か。
日本史上の大トピックとされていながらも、全体像を捉え難い「応仁の乱」。そんな題材を、既成史観の図式に頼ることなく、絶妙なバランス感覚で丁寧に整理した新書がヒットしている。NHK大河ドラマの歴代最低視聴率記録を長年保持していた『花の乱』(1994年)を始め、「応仁の乱」を扱ったものに成功例は少ないので、異例の現象だ。
「『応仁の乱』をテーマに選んだのは著者ご本人です。地味かもしれませんが名前を知らない日本人はおらず、そういう意味では歩留まりがよい。大ヒットはしないまでも絶対に失敗はしないテーマという認識でした。中公新書は『歴史ものに強い』というアドバンテージもありますし後は“著者力”で突破だ、と」(担当編集者の並木光晴さん)
古くは網野善彦さん、近年では磯田道史さんなど、日本史研究者には、時に、学識の確かさと読み物としての面白さを両立させるスター学者が登場する。36歳とまだ若い本書の著者は、次代の有望株だ。
「扱う題材の全体像をはっきりと理解し、その上で、読者に伝える情報を取捨選択できる。30代半ばでのこの筆力には、とても驚かされました」(並木さん)
中公新書の主な読者層は50代以上。しかし本書の売れ行きの初速はネットなどと親和性がある30代・40代が支え、そこから高年齢層に支持が広がった。これは、新たなスター誕生の瞬間かもしれない。
評者:前田 久 (週刊文春 2017.3.2号掲載)

だらだらと続く大乱
小学校の教科書で紹介されていることもあってか、「応仁の乱」の知名度は高い。しかし、それがどのような戦乱だったのかと問われると、多くの日本人が口ごもる。室町後期に京都でおきた……戦国時代のきっかけとなった……諸大名入り乱れての……。
呉座勇一『応仁の乱』は、ほとんどの日本人が実態を知らないこの大乱を、最新の研究成果をふまえながら実証的に検証してみせる。さらには、同時代に生きた興福寺の2人の高僧(経覚と尋尊)が遺した日記を通じて、戦乱に巻きこまれた人々の生態を描いている。それらの合間に、気鋭の中世史学者ならではの自説も展開する。いたって学術的な内容なのだが、構成の巧さと呉座の筆力によって最後まで読ませる。
しかし、全体としては、やはりよくわからない。それは決して呉座の責任ではなく、この戦乱が結果的に大乱になってしまっただけで、発端の当事者(細川勝元と山名宗全)たちも、短期に決着するとふんでいたからだ。それがいつしか、両氏が多数の大名を引きこんだために、諸大名の目的が錯綜して、将軍も大将もコントロールできなくなっていき、京都だけでなく各地で戦闘がくり返され、だらだらと終結まで11年もかかってしまったのだ。しかも、戦後処理まで判然としないのだから、応仁の乱はよくわからない。
大義名分に乏しいだらだらと続いた応仁の乱は、第1次世界大戦に類似していると呉座は説く。結果的に諸国に新たなパワーバランスを生みだすことになる、地味な大乱。ひょっとしたら今、私たちもそんな混沌の時代を生きているのかもしれない。
評者:長薗安浩 (週刊朝日 掲載)

 

 

今月のひとこと2017年8月号

2017年8月2日
梅雨も明け蒸し暑い夏になって来ました。 加計問題はとうとう政権を揺るがすまでに、大きな政治問題に発展しました。 元々は国家戦略特区の意思決定過程の問題であったのに、防衛省の日報問題と同時進行で安倍政権の問題となり支持率が急落し危険水域まで悪化しました。

加計幸太朗氏が、いかにも悪そうなイメージの写真になっていて、どんどん想像による悪印象が強くなっているのも原因でしょう。 ちょっとマシな写真を掲載しておきました。 首相の「1月20日に知った」問題も加計氏の国会招致を避けようとしているような印象があり、それで無ければ過去の答弁を修正してまで、1月20日に拘るのかが意味不明です。 説明すればするほど、疑問点が出てくるのも良くないです。

藤堂高虎の今治。 市職員の官邸訪問も、官邸側に記録が無いと言うことになって、また疑問が深まります。 今朝の新聞では、この時には愛媛県職員も同席していたと言うことですが、これだけ多くの関係者が居るにも関わらず、官邸側の対応者が不明というのも解せないところです。 一説では、対応したのは安倍総理本人では無いか、と言う見方もあり、確かにこれなら隠したくなると言う気持ちは分かりますが、もしそうなら、いずれはバレるのではないかと思います。 その時の衝撃は北朝鮮のミサイルの比ではないでしょう。

報道しない自由と言うのがあるらしく、加計問題の国会中継で、加戸元知事や青山議員の質問が、全くなかったように報道しないマスコミもあったようで、たまたま国会中継をずっと見ていて非常に違和感がありました。 どうも従来型のマスコミは、トランプ大統領では無いですが、消極的なフェイクニュースだと言うことです。

結局頼りになるのは、玉石混淆のネットの複数の記事です。 ニコ動やYouTubeなどの映像はもっと役に立ちます。 いずれにしても、情報とくに新聞記事は当てにせず、自分で事実を確認しなければならない時代になったと言うことでしょう。 事実をありのままに伝えると言うマスコミの機能はほとんど無いと言っても良いと感じました。

いずれにしても、アメリカでは毎日史上最高値を更新しつつあるにもかかわらず、せっかく2万に到達した日経平均株価も、膠着状態となり、さらに問題が出てくれば、如何に日銀やGPIFが買い支えようと暴落の恐れは多分にあります。

最近のITの話題の一つはビットコインでしょう。 NHKの番組でも取り上げられ、億万長者に成れると言う感じです。 少し流行ってきたと思ったら、やはり問題はブロックチェーンのブロックの作り方にあります。 小人数で細々とやっている分には良いのでしょうが、これだけメジャーになってくると、ブロックを生成するマイナーの処理速度やブロックの大きさ、また各ノードで保持する全ブロックのサイズなど問題が顕在化しています。 今までの取引の全ブロックは1Tバイトに収まっているようですが、これからどんどん増えると思いますので、容量が2桁も多くなると、普通のPCと言うわけにも行かずに、だんだんとヘビーになってくるのでは無いでしょうか?

たしかに初期のインターネットを想起する状態です。 初期のインターネットもせいぜい9600Bpsの電話回線で結ばれていただけで、ネットの上でサウンドやましてや画像や動画がハンドリングできるとは、夢にも思わなかったです。 ビットコインの中核技術のブロックチェーンも似たような状況で、これからどんどん改良が加えられて行くのではないでしょうか。 今回のビットコインの分割も、基本はシステムの更新方法の異論にあるわけです。 いずれにしても、ブロックチェーンは、インターネットの上の更なる大発明ですので、ますますネットが重要になってくるのは間違いないところです。

今月の読み物は、「反資本主義の亡霊」(日経プレミアシリーズ) 新書 原田 泰 著
\880

オススメ度 ★★★ 是非読むべし

どっかの書評にもありましたが、もう資本主義はアカンとか経済はこれ以上向上しないととか、後ろ向きで自虐的な本がたくさん出ていて、私も何冊か読みましたが読後は何となく気分が落ち込みましたが、この本を読んで溜飲が下がる思いです。 ちょっと筆が走りすぎで、話の筋が少し飛ぶところはありますが、なかなか良いです。 *野さんなんかどっかに行ってと言う感じです。

特に大恐慌辺りからの歴史は再読する必要ありです。 こんな人が日銀の政策委員会に居るなんて、それだけでもビックリ。 本当はビックリする方がおかしいのですが。

内容紹介

資本主義が格差、貧困、戦争をもたらす!?
――なぜわが国では、資本主義は悪者扱いされるのか?

資本主義の生み出す豊かさこそが、格差を縮小し、環境を保全し、労働条件を高め、福祉や文化を発展させているのである――日本に根強く残る“反資本主義”の誤りを歴史的・思想的な観点から指摘、資本主義の再評価を試みる!
<本書の目次より>
・資本は格差の原因か
・アメリカの所得格差は労働所得の格差による
・江戸の人びとはトリクルダウンの天才だった
・金融危機の原因は経営者の報酬制度にもある
・アベノミクス格差論には根拠がない……