今月の一言2011年4月号

「今月のひとこと」の目次
毎月一回はその時々のトピックスをお送りしています。
本家の http://www.masuda.org/ もよろしく


絵や写真をクリックすると、そのページに行けます


2011年4月3日
いやー、それにしても、それこそ想定外の大惨事です。 地震の起こったときには、たまたま名古屋に居て、船酔いするような揺れに気が付いて、それが何時までも続くので、これは大きな地震が遠くで起こったと直感しました。 真っ先に考えたのは、南海地震。 これが起きると自宅は倒壊の恐れがあるので、しかし名古屋に居たので、下敷きにはならなくて助かったはずでした。 ワンセグも見れず、ネットではまだ情報が流れておらず、まさか東北で起こったとは夢にも思いませんでした。 その後しばらくしてからも小さく揺れたのですが、後で考えると、これは長野の地震みたいです。

一時は東海地震が今にも起きると言うように報道されましたが、実際はほとんど忘れている状況でしょう。 この間のTVでもは、エネルギーが抜けて、しばらくは起こらないとのこと。 その反面、M9.0 の大地震の予兆さえなかった、地震学はやはり信頼がおけませんので、最近は地震があまりない近畿地方でも身構えが必要でしょう。 地震や津波はいくら大きくても、復興すれば良いのですが、原発はそうは行きません。 定常的な冷却ができるようになるまで、まだまだ最低数カ月はかかるのでは無いでしょうか。 現場の作業員の数が心配になります。 疲労もあり、累積被爆もありで、交代要員が必要になります。 素人では出来ないので、それなりの人が必要となります。

海水注入時から、廃炉と決まっていましたので、その作業に入らないといけないのですが、それが可能になるには、最低でも3-5年はかかります。 そこから処理が始まって、10-20年かかりで廃炉が終わると言うことです。 ちなみにチェルノブイリでは、未だに完全な廃炉に至っていないようです。 それにしても、1000年来の地震と言っても、お粗末としか言いようのない原発事故です。

保安上の理由と言うもっともらしい理屈で、原発の設備内容は公開されていませんでした。 中央制御室の位置すらつい最近まで分からなかったのです。 やっと分かったことは、すべての冷却の元になる電源が極めて脆弱。 外部電源と言うのは電力会社の電源と始めて分かりました。 これが倒壊。 日立で原発を設計していた大前さんによると、福島第1第2で変電所がトータルで 1つしか無いとのこと。 これが複数あれば、外部電源が生きた可能性が有ります。

非常用のバッテリは数時間しかもたない。 本来は短時間の停電に対応したものでしょう。 その後はジーゼル発電による非常電源の確保。 これが福島では3系統あって、これが売りだったそうですが、恐らく水没して全部やられてしまったのでしょう。 さらには、電源が生きていても、動かすべきポンプが水没してしまって役に立たないのです。 なぜこういう事になったかと言うと、これらの機器がすべて地下に置かれていたので、簡単に水没してしまったのです。 前述の大前さんは、もっと上に置けと言うのは後知恵だと言っていますが、これはやはり設計者の判断ミスではないでしょうか。

愕然としたのは緊急炉心冷却装置(ECCS、Emergency Core Cooling System)が作動しなかったことです。 耳タコになるぐらいに聞かされた事を思い出しました。 これがあるから安全と言われたのですが、今回はアッサリと結果的に動かなかったと言う事に、原子炉の設計者はよく考えるべきです。 システム上のヌケが何かあったことは間違いありません。

原発の設計者は、メルトダウンの対策まで、どこまでも原発としての危機想定をしていますが、電源はテリトリー外だったと言うことでしょう。 エアポケットになった所に最大のリスクが潜在していたのです。 更に悪いことに、原発が GE製と言う事もあり、電源仕様がアメリカ仕様になっていて、日本の電源車を何台持って行っても役に立たなかったとのことです。 これくらいは電力会社なんだから日本仕様に直しておくべきでした。 逆に電力会社なので、何とかなると油断したのかもしれません。

更に福島第1は、40年の古いBWR炉で、原子炉としてもいろいろ欠陥があったと思います。 BWRは原子炉で発熱した蒸気で直接タービンを回して発電します。 一見構造が簡単、また沸騰することで蒸気の泡が出て、これが炉心の核暴走を止める方向に動くと言う、核暴走が最大のテーマであった時代に作られた原子炉と言う事が出来ます。 炉心とタービンが繋がっているので、放射能が出やすい、 冷却水が抜けやすい、タービンとの距離に制約がある、制御棒が挿入できない可能性がある、などの欠点があり、それがほとんど裏目に出ている感じです。

冷却水をどんどん注入しています。 事故が起こったときの記者会見で、真っ先に注入した水はどこに行くのか? と言う質問が有りましたが、うやむやになっていて、現在になって初めて高濃度の汚染水が溜まっていた! と言う事になっています。 対策が後手後手になっています。 だからアメリカはイライラして、どんどん人員を送り込んでくるのです。 下手したら、放射能が偏西風に乗ってアメリカに到達しますから。

現在の最新のBWRは、改良型になっていて、つまり原型には欠陥が有ると言うことで、日本で始めて改良型のABWRの建設・営業運転が行われました。 現在、東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所6,7号(1996年、1997年)中部電力(株)浜岡原子力発電所5号(2005年)および北陸電力(株)志賀原子力発電所2号(2006年)がABWRになっています。

ABWRでは、冷却循環のポンプが圧力容器の内部に入っています。 福島第一の原子炉の循環ポンプはどうも外のタービン建家にあるようです。 無ければ圧力容器の下にあるはずです。 従ってどうしても建屋が高くなる。 地下にポンプ類を置かないといけなくなるのです。 ABWRでは建屋の高さがかなり低くでき、浸水リスクのある地下にポンプ類を置かなくても良い事になります。

原子力発電は必須と思いますが、古い原発は早く廃炉にしてしまうことを考えないといけません。 今回も同様の被害を受けたはずの、同じBWRを採用している福島第2や女川では何とか安定状態に持ち込んでいますので、想定外とは言いながら、はやり弱いところが一気に壊れた感じがします。

2004年の新潟県中越地震で柏崎刈羽原子力発電所が火災を起こしたりして、被害を受けましたが、この時にもう少し念入りに危機対策を立てていれば、今回の災害も少しは防げたのかもしれません。 あの時に古い炉は、思い切って廃炉にする決心をしていれば、と思いますが、不可能だったでしょうね。 後述する六ヶ所村の設備も全く準備できていまでした。 1995年の阪神・淡路大震災から見ても、10年ぐらいの間隔で大地震が起きています。 また10年ほどしたら巨大地震が起きるのではないでしょうか。 その時の備えを十分にしておかないといけないと思います。

しかし、福島第一の最大の危機は、原子炉でなくて、使用済み核燃料プールにあります。 建屋の中の問題になっているプールは、一時保管用で、従ってほとんど防護はありません。 プールはオープンですし、その上はホースで注水しているように、建屋の天井しかなくて、プールの下も5mm ぐらいしか無いステンレスだそうです。 燃料が溶けてプールの底に落ちると底を突き抜ける可能性があり、あんまり高価のないヘリによる注水を強行したのもそのせいだと思います。 特に3号炉は、本体にMOX燃料を使ったプルサーマルで、昨年の10月に入れ替えたばかりですので、建屋の損壊も一番大きいと思います。 使用済み燃料にもプルトニュウムは含まれおり、プルサーマルと言っても余り問題は無いのかも知れませんが、東電としては初期の頃はかなり気になったはずです。 現状ではそんなことより更に事態は深刻になっているので、誰も話題にしなくなりました。

更に、いま最大の問題になりつつあるのは、建屋の外にある使用済み燃料の共同プールの危機です。 ここに建屋の一時保管プールのある燃料の、1.4倍ぐらいの 6400本近くも保管されており、冷却は進んでいるものの、やはり冷却なしでは温度が上がっています。 状況がほどんど分からないとのことで、フランスのサルコジ大統領と民間企業のCEOがやって来たのは、これが心配だったのでしょう。  共用プールは、4号機の西約50mの建物内にあり、縦29m、横12m、深さ11m。 使用済み燃料を6840本(使用量の2倍)収容できるとのこと。

何故こんなに多くの使用済み核燃料が発電所にあるのか。 炉心にあり、さらに一時保管プールにあり、さらに共用プールには6840本の容量に対して、90%以上の6400本ぐらいが格納されている。 つまりほぼ満タン状態だったのです。 これからは、本来は六ヶ所村に中間貯蔵施設を作ってそこに置くはずが、2012年7月にならないと開始できません。 年間900~1,000トンの使用済燃料が発生していますが、未だに建設中の再処理工場の処理能力は年間最大800トンであり、差し引き100~200トンずつ余っていくと言う事になります。 現時点ではそれすらも実現していないことになります。 よく言われたトイレのないマンションと言う状況から未だに脱却していないのです。 さらには、今回の事故で大量に出るであろう高レベル放射性廃棄物の捨て場所も決まっておらず、現状では積んでおくしか手はありません。

地震や津波から復興しても、原子炉を通常冷却に持ち込んでも、電力の問題は残ります。 あと30年は原子炉を作ることが出来ないばかりか、停止中の柏崎刈羽なども再開は難しいでしょう。 関東、特に東京の電力不足は決定的に経済に悪影響を与えます。 恒久的な電力対策を立てる必要があります。 短期的には、この夏の電力不足をどうするかですが、足りない文は 25%と言う非常に微妙な数字で、やってやれないことは無いと思います。 また勘違いしているのは、問題となっているのは、電力消費のピークです。

ピークさえ抑えられたら、後は節電の必要はないのですが、揚水発電と言う一種の電池の様な発電方式があって、夜間の電力が余っている時に揚水して、必要なときに発電する方式の発電所が、調べたら何と 東電だけで 700万kW 近くも有りました。 これがどの程度計画に反映されているか分かりませんが、たかが揚水発電と思っていたら、結構な能力が有ります。 従って、夜間の節電もそれなりに意味があるわけです。 ちなみに揚水機は発電時と揚水時とではエイヤと切り替えて、回転の向きが逆となるため、三相のうち二相を入れ替えたら良いそうです。 単なるアイデアですが、この揚水発電と太陽光発電をを組み合わせると、今までとは逆に夏の盛りには太陽光で電力と揚水蓄電。 夜は揚水発電と太陽光が安定するのではないでしょうか。 バッテリに貯めるのはどうもイマイチと思っています。 バッテリの廃棄が問題となるでしょう。

関西と関東で周波数が異なるのもよく知られていますが、この様な危機対策としては全く不都合です。 この機会に少し無理をしてでも、統一すべきと思います。 ちなみにヨーロッパは50Hz でアメリカが 60Hz になっていますので、どちらでも良いことになります。 一気に変えるのは無理なので、鉄道とか、その他の大電力を必要とする工場に、直接に関西つまり中部電力から送電線を引いて 60Hz化すれば良いと思います。 これを計画停電のブロックごと程度で、順々に切り替えていく。 東電の発電所も送電線をもう1系統追加して、60Hzの送電をすれば良いでしょう。 下手に火力発電所を作ったり、火力発電所と同じぐらいコストの掛かる周波数変換所を作るより、送電線を張るほうがコストは遥かに安くつくし工期も短いはず。 また複数送電で危機対応力も増します。

関西電力を初め関西の原子力発電所は、全部ではないですが、BWRでは無くて、密閉度が高い PWR方式の発電所ですので、原発の危機対応は少し異なると思います。 BWRよりは、熱交換器が一つ多いので、複雑ではありますが、放射能が漏れる可能性は低いです。 今回の事故と同じように冷却システムが停止しても蒸発熱で冷却出来るということです。 また冷却水の非常注入ももっと楽になります。 しかし圧力容器が壊れないと言う保証は、今回の事故でも分かるように、どこにも有りませんので、程度問題と言う事になります。 この件に関しては、九州電力が対応策を簡単ですが示しています。 関西電力は、非常発電機と冷却ポンプを30m以上の高さに設置することを表明していますが、対応策は発表していません。

放射線被爆量に付いても、混乱がたくさんあります。 シーベルトはおなじみになりましたが、ミリシーベルトとマイクロシーベルトの3桁違う数字を同時並べて、さらに単位を間違えると言う状態が続いています。 混乱の元は、被爆を測る単位としてシーベルトは累積値であると言う事が抜けているせいです。 胃のレントゲン検査やCT検査の話は、一時的な話で、ずっとそれを受け続けているわけでは有りません。 基準の100mSvは、1年間当り1msVを一生つまりだいたい100年受けると、それに到達すると言う話で、これで癌になる確率が0.5%アップすると言うデータです。 2人に一人が癌になり、3人に一人が癌で死ぬ時に、100年後に0.5% リスクが上がることが、どれだけ問題かよく解ると思います。 仮に年間 1msVとすると、0.11マイクロsV/時 となり自然放射線の量となります。 この辺の時間当りと年間当りは、時間で4桁違いますので、ミリとマイクロの3桁との混同があるものと思います。 これらは外部被ばくの話ですが、内部被曝にも換算式があってキチンと出ます。

悪いことばかり書いてきましたが、良かったことは、原発がキチンと停止したこと。 何らかの理由で水圧で動く制御棒の挿入がうまくいかないことも有り得ました。 特にBWRは下から水圧で押し上げる形なので、PWRみたいに上から落とす(単に落としても入らないようですが)形よりは事故の可能性は高いですが、ちゃんと3機とも止まりました。

他には新幹線が脱線や事故がなかったこと。 中越地震では脱線しましたが、今回はそういう事はなかったようです。 初期の頃の世界の反応は、この件と被災者が粛々と行動していることでした。 それに比べて原発の対応は遅すぎるし、見えなさ過ぎると言う反応です。

オバマ大統領は、来年の大統領選挙を目前に頭を抱えているでしょう。 大統領選挙の前年は必ず経済はアップすると言われている経済の落ち込みの心配と原発推進を進めた結果もあり、政治生命に関わります。 従ってアメリカ軍は特に原発事故に協力的なのです。 フランスのサルコジ大統領もすぐに動きましたね。 前述の共用プールの心配で自国は原発依存度が高いので気になるのでしょう。 ドイツは懸案の原発使用延期をアッサリと中止しましたし、それぞれ国内問題をこの事故を期にうまく処理しています。

今月の一言2011年3月号

「今月のひとこと」の目次
毎月一回はその時々のトピックスをお送りしています。
本家の http://www.masuda.org/ もよろしく


絵や写真をクリックすると、そのページに行けます


2011年3月1日
やっと株価が復活して来たと思ったら、中東情勢が怪しくなってきました。 その割には、今週の初めは一瞬下がりましたが、持ち直しました。 アメリカの大統領選と日本企業の業績アップ期待が中東不安に優ったと言うことでしょう。 とは言え中東の危機ドミノはまだまだ先があるので、いつの時点かこれがぷつんとなると、ニュージーランド地震のようにガタガタ来るのではないでしょうか。

最近は、日本頑張れ、と言う論調が多いですね。 中国にGDP第2位の地位を奪われたのですが、それでもまだ第3位。 ちなみに第2位の地位は42年も続いたと言うことです。 いずれにしても、まだまだ大国で底力はあるはずです。 もう少し自信を持って、最悪の政治は放っておいて、グローバルに気持ちを大きく持とうではないでしょうか。 昨年1年の企業の活動を見ていると、その様な印象を持ちます。 妙な国内に見切りを付けて、海外での活動を盛んにする動きが目につきました。 それまでは、何となく踏ん切りが付かずにグズグズしていたのですが、昨年ぐらいで、中国や新興国に背中を押されたカタチで吹っ切れたのではないでしょうか。

とは言え中国の膨張は凄まじいですね。 年明けに一斉にニュースになった、中国製のステルス戦闘機、殲-20が話題になりました。 F-22のパクリだとか、初飛行の日にアメリカのゲーツ国防相が訪問したときには、胡錦濤は知らなかったとか、話題には事欠きません。 一応飛んだので、みんなビックリしましたが、実配備には10年かかるとのコメントでしたが、日本はどうするんでしょう? 中国はアメリカのメーカーに注文する?? ようですが、 F-22ラプターは日本には提供してくれないし、提供してくれても偉く高価なので、お金がない日本としては買うに買えないと言う状況でしょう。 交換保守部品などを含めて、一機300億円はくだらないのではないでしょうか。 日米関係を考えるとヨーロッパ主導の戦闘機は採用できないので、後はF-35 になるようですが、単発のくせに結構高くて、またその開発も遅れに遅れて、下手したら、中国に先を越されるのではないでしょうか。

最近のITの世界で大いに話題になったのは、大相撲八百長問題で消したはずのケータイメールが解読されたと言うことでしょう。 最初は、サーバーのファイルを解析すれば分かるのでは、と思ったのですが、あれだけの数のメールが処理されているので、これは無理と分かりました。 ドコモはダメですが、auなら1ヶ月ぐらいはサーバーに保存してあるので、そこから簡単に復帰できるようです。

実際は、やはりケータイをバラして、チップを取り出して、シミュレーターにセットしてデータを読みだして、さらにそのファイル解析をしたみたいです。 新聞によればメーカーの協力を得て、3ヶ月かかったとかですので、現場の技術者は残業につぐ残業ではなかったのでしょうか。 特に日本のガラケーはファイル構造も独自ですので、メーカーの設計者でないと分からないと思います。 まあ、ここまで徹底的にやれば読めると言うのはその通りだと思います。 通常はかかるコストが膨大ですので、一般的には不可能だと思います。 最近見た某ビジネス雑誌には、ケータイでは無いのですが、PCのディスクデータの解析方法が詳細に出ていました。 ここでも鍵になるのは、それぞれのアプリ特有のヘッダ情報がどこまで解析できるかであって、専門の解析業者はそう言うデータをノウハウとして蓄積しているのでしょう。

今月の読み物は ガロア―天才数学者の生涯 (中公新書) 加藤 文元 (著) ¥882。 ガロア群と言うのはどこかで聞いたことが有ると思いますが、 天才とはこういう人の事を言うのだと実感します。 単なる数学の本ではなくて、当時のフランスの政治状況とか、何故ガロアが決闘しなければならなかったとか、いろいろな背景が分かります。 「この証明を完成させるための方法がある。でも私には時間がない。 」 と言うのは有名なフェルマーの最終定理について、フェルマーが、「この定理に関して、私は真に驚くべき証明を見つけたが、この余白はそれを書くには狭すぎる。」と書いたことと似ています。 フェルマーの最終定理(予想)は、結構難しくて、最近やっと完全な証明がなされましたが、その時にもガロア群の考え方が使われたと聞いています。 どちらも同じ楕円関数に関連したもので、数学の奥深さには驚かされます。

「BOOK」データベースより
天才という呼称すら陳腐なものとする人物が歴史上には存在する。十九世紀、十代にして数学の歴史を書き替えたガロアは、まぎれもなくその一人だ。享年二十。現代数学への道を切り拓く新たな構想を抱えたまま、決闘による謎の死で生涯を閉じる。不滅の業績、過激な政治活動、不遇への焦りと苛立ち、実らなかった恋―革命後の騒乱続くパリを駆け抜けた、年若き数学者が見ていた世界とは。幻の著作の序文を全文掲載。

今月のひとこと2011年2月号

「今月のひとこと」の目次
毎月一回はその時々のトピックスをお送りしています。
本家の http://www.masuda.org/ もよろしく


絵や写真をクリックすると、そのページに行けます


2011年2月1日
やっと少し市況も上向いて来たと思ったら、早速エジプト情勢が悪化してしまいました。 これが卯年の跳ねるだったらどうでしょうか。 国債の格付けが下げられて、総理の「疎い」と言う発言でまたゴタゴタしています。 以前の格下げの時は、ボツワナ以下と言われて、論議を呼びました。 いずれにしてもGDPの2倍近く、それも現時点で対策を講じても倍は遥かに超える状況で、これくらいの格下げで良く持っていると思います。

消費税を5%上げても、社会福祉の費用の増加で消えてしまい、財政均衡には程遠く、現在のままでは、消費税を20%以上上げないと、バランスしません。 やはり現時点で為すことは、大規模な大幅な規制緩和でしょう。 すぐに出来なければ特区でも良い。 また法人税を大幅に安くする。 多少安くしても歳入欠陥に占める割合は多く無いので、多少下げても大勢に影響はないでしょう。 もしくは、自分でできないのならIMF管理にでもしてもらって、外からコントロールしてもらわないといけなくなるでしょう。 お隣りの韓国は少し前までIMF管理にまで陥ったのですが、現時点では元気になって、日本を脅かすまでになっています。 財政赤字カウンターと言うのを見つけました。 増えること自体はたいしたことないのですが、金利が上昇したら、金利払いだけで国家予算が消えてしまいます。

ITの世界では、アップルのスティーブ・ジョブズの病気療養休暇が話題になっています。 過去2回も病気療養でCEOを離れていますので、今回は無期限と言う事で市場も注視しているところです。 先日この話題で、アップルの本社がTVで映っていましたが、知っている頃と比べて植木が物凄く大きくなったなと感じました。 元のアップルの本社は、ここから数ブロック南の交差点に有りました。 実はそのすぐ下のアパートに住んでいたことがあるので良く知っていました。

現在のアップルのキャンパスは、元々モトローラの建物があって、例のサンフランシスコ地震で建て替えを余儀なくされて取り壊されました。 その跡地に現在のアップルの本社が出来たのです。 近くには、HPの大きな敷地や、AMDのキャンパスもあり、シリコンバレーの中心地の一つだと思います。 最近のGoogleやジョブスのNEXTコンピュータなどは、もっと北の空港に近いところの、101号線の東側に有ります。 以前は何も無いところで、要するに地価が安いところだったのでしょう。 シリコンバレーの膨張は結局、サンノゼで止まって、東の方に少し動いたのですが、結局は元のスタンフォード大学の南の付近に戻っていったと言う感じです。

今月の読み物は、日本の国会――審議する立法府へ (岩波新書) 大山 礼子著 です。 今国会中継を聞きながら本稿を書いていますが、意外に国会とはどうなっているのか、知らないことに気が付きました。 なかなか固い書物ですので、読みにくいかなと思ったのですが、意外に読みやすくて、各国との比較も適宜行っており、タイトル通り日本の国会の姿が良く分かります。 2院制のメリット・デメリット、その改革の方向性に付いて、委員会審議とはなにか、本会議審議は何故討論が少ないのか、などなど、その理由が良く分かります。

内容(「BOOK」データベースより)
政党間のかけひきに終始し、実質的な審議が行われない国会。審議空洞化の原因はどこにあり、どうすれば活性化できるのか。戦後初期からの歴史的経緯を検討した上で、イギリスやフランスとの国際比較を行い、課題を明らかにする。「ねじれ国会」が常態化した今、二院制の意義を再考、そして改革の具体案を提示する。

2011年 正月 元旦 あけまして、おめでとうございます

2011年正月元旦
2010年 正月 元旦 あけまして、おめでとうございます。
昨年の1月号を見直しても、あんまり変わっていないようで、この1年は特に政治の世界は変化がなかったと言うことでしょう。

卯年は跳ねるとの相場格言で、今年こそと株式投資の期待ですが、出遅れの日本株が本当に跳ね上がるのかどうか、大いに気になるところではあります。 尤も千里を走る寅は1年遅れと言う話も有ります。 日本で金融緩和してお金をばらまいたら、結局それは回りまわって、国債に回って、結局お金がぐるぐる回っているだけで、残ったのは国債残高だけと言うことが、この20年ぐらい起こっていて、怖いもの見たさも手伝ったインフレ期待・予測は完全に外れました。

昨年のリーマンショック以降は、全世界的にお金がだぶついていますから、これがどこに向かうのか、気になるところです。 一部の新興国とも言えない、中国やインドなどでインフレ傾向が出てきましたが、これくらいで済むのか気になるところです。 アメリカはどうも日本タイプになりそうで、長期金利が下落しています。

年の初めですから、長期的な希望のある話をしたいと思います。 最近、流行の電気自動車(EV)ですが、通常のエアコンをつけたり、いろいろなことをすると、航続距離は 100Km 程度では無いかと言う話になって来ています。 要するにチョイ乗りのいつでも充電できる目的に限るとか、ハイブリッドしか実用にはならんと言うことがハッキリして来ました。 電池の技術革新も次の一歩の展望がなくて、充電容量の桁上げが難しいようで、もし出来たとしてもエネルギーの塊となり安全性の問題もあり、実用化には時間がかかりそうです。 ターミネーター3でターミネーターが壊れた電池を捨てて大爆発を起こすシーンがありました。 多かれ少なかれこう言う事故は起きそうです。 もちろん電池メーカーは万全の対策をしていますし、すると思います。

原子炉で直接水素ガスを発生させる事が出来ると言う記事を、最近タマタマ見た新聞で発見しました。 以前に水素ガスブームが有ったときは、水素ガスの発生にエネルギーつまりCO2が必要で、あんまり意味がないのでは、と思っていましたが、高温ガス炉で直接水死ガスを発生させると、CO2問題はかなり解決すると思います。 水素ガスの燃料電池で発電すれば、現時点での電気自動車の欠点はクリアできると思います。

燃料電池車は、既に各社が試作車を開発していて、ホンダの「FCXクラリティ」、トヨタの「FCHV-adv」、日産の「X-TRAIL FCV」などがあり、要するに以前の水素ガスブームの時に開発していて、あながち完全な夢でも無いようです。 ただ燃料電池の瞬発力がないとか、回生エネルギーを充電できないとかの問題があって、リチュウム電池車とのハイブリッドになっています。ホンダ車で言うと航続距離も600km以上で、この距離を支える水素タンク容量も171リットルで済み、ガソリンの2倍位で済むようです。 技術的にはハイブリッドで量産の域に達しているので、後は水素タンクと燃料電池の改良でしょう。 ガソリンスタンドの代わりに水素ガススタンドが出来れば、現在の自動車とほぼ同じ使い勝手が期待できます。 街中の完全EVと遠乗りの水素自動車が住み分けて行くのではないでしょうか。

ちなみにマツダのロータリーの水素ガス直接駆動の「RX-8ハイドロジェンRE」の性能を見てみると、ガソリンに比べて、性能がだいたい半分になってしまいますね。 まあ水素ガスが提供されたらの話ですが、スポーツカーでなければ実用上は問題ないのではないでしょうか。

問題の水素ガスの発生ですが、まず鉄を作る高炉から副産物として出来てくるようですが量が少ないので、実用には大量に作れ、CO2の発生が少ない原子炉が良いでしょう。 我が国では、HTTR 高温工学試験研究炉 と言う高温ガス炉が茨城県大洗町にあります。 黒鉛減速、ヘリウム冷却型原子炉で、1000度近い熱を発生できます。 この熱を使って、要するに水を分解して水素を作るのです。 もんじゅなどで冷却にナトリウムを使って大事故を起こしていますが、この原子炉はヘリウムを使うので安全性は高いそうです。

超電導送電システムも、次世代のエネルギー問題を解決するひとつの重要な技術でしょう。 これが可能になれば、地球規模で発電を行い、それを配電することが出来ます。 例えば主要な砂漠地域に太陽電池を設置すれば、どれかは昼間になっているはずですので、太陽電池の夜間問題は解決できます。 また送電線の持つ大きなインダクタンスと大電流の特徴を生かし、電力を磁気エネルギーにして貯蔵する蓄電システムをつくることも可能です。

超電導送電は、既に実証実験は始まっていて、実用には問題は無いようです。 問題の冷却も高価な液体ヘリウムでは無くて、77Kの液体窒素が使える高温超電導物質が発明されたので、後は冷却の方法とエネルギー収支だけとなりました。 もちろん将来に常温での超電導が実用化されれば冷却は不要となります。

超電導ケーブルは、中心に冷媒を通すパイプが通っており、これを取り巻くように超電導電線が配置され、その外には冷媒が止まったときのための銅線があるようです。 全体は要するに魔法瓶のように真空の容器の真ん中に位置するようにしてあるようです。 最大の問題は、可撓性つまりどれだけ柔らかく曲げられるかです。 特に超電導物質は非常にもろいものですので、これを如何に曲げるかがポイントです。

送電方法も、その昔エジソンが主張したような直流になるようです。 交流の最大の利点はトランスを使って電圧の降昇圧が容易だったのですが、最近は半導体技術の発達で、直流でもこれが可能になりつつあります。 しかし、現在の交流送電システムは、システム全体でも、そのロスは5%程度と、特に日本は高効率を誇っています。 ちなみにこの半分はトランスによるもので、また直流送電も一部取り入れられているようなので、直接の比較は難しいですが、超電導送電に必要な冷却エネルギーや電圧変換ロスを考えると最終段階まではまだ道のりがありそうです。

今月の読み物は、ザ・クオンツ 世界経済を破壊した天才たち スコット・パタースン (著), 永峯 涼 (翻訳) ¥ 2,310 分厚くってぎっしり活字が埋まっている本だったので少し引きましたが、読み始めると止まらない。 どっかで聞いたことのある、シタデルのケングリフィン、ルネッサンスのシモンズ、破綻したGSAM(ゴールドマンサックス・アセット・マネジメント)のグローバル・アルファ、90年代後半に超レバレッジでオールインして破綻したLTCM、クオンツ達が集結してつくったアスネスのAQR、モルガン・スタンレーのPDT、D.E.ショー、メダリオン、Saba などが次々と出てきます。 私はこの分野には無縁でしたが、1990年代に取引がコンピュータで行われていると言うような話を聞いたことがあったので、そんなものかと思っていましたが、ザラバ中に毎秒何百万ドルも増えていくお金、それがリアルタイムで表示されていると言うのは、すごいですね。 確かにシステムを作ったら後は何もしなくて良い。 しかし何かの拍子にアルゴリズムの想定が狂ったら、ガタガタになりますね。 あっという間に何千億円の損失が出ます。 何百億ドルとか日本語に訳してあるので、これをドルに読みなおしてやっと感覚が分かります。 それにしても最初から最後までポーカーの物語のテーマが流れていて、この人達はギャンブル好きなんですね。 この世界は所詮ギャンブルの世界なのかと考えさせられました。

内容紹介
リーマンショックに代表される近年の金融危機の中心には、計量分析に基づく投資手法を考案した天才数学者達の存在があった。ウォール街が記録的なメルトダウンを経験するまでの足取りを辿る渾身のドキュメンタリー。

内容(「BOOK」データベースより)
ウォールストリートの食物連鎖の頂点に君臨する「クオンツ」と呼ばれる天才数学者たち。彼らは、平凡な人間には解読不能な微分学、量子物理学、応用幾何学を駆使して金融商品の値動きを分析し、莫大な利益を上げてきた。だが、彼らの開発した数々のデリバティブ(金融派生商品)や数理モデルは、史上最大の金融崩壊の引き金となってしまう。天才たちはどこで何を間違えたのか―。ウォールストリートの内幕を暴く驚愕のノンフィクション。NYタイムズ・ベストセラー。

今月のひとこと2010年12月号

「今月のひとこと」の目次
毎月一回はその時々のトピックスをお送りしています。
本家の http://www.masuda.org/ もよろしく


絵や写真をクリックすると、そのページに行けます


2010年12月3日
先日と言ってもだいぶ前ですが、新聞をバラバラ見ていたら、ベタ記事でブノワ・マンデルブロー氏死去と出ていて、久しぶりにフラクタルを思い出しました。 85歳だったそうで、1977年に一連の図形を表現するためにフラクタルという概念を発表したそうで、確かにビジュアル的に分かりやすかったので、すぐに知ったと思います。 簡単な図形の繰り返しによって複雑な形を表現すると言う当時としては目からウロコの理論だった記憶が有ります。 海岸線とか山のスカイラインの形とか、樹木の形とかが表現できます。 現在でも少し手を抜いた背景画像に使われている場合が有ります。

東京方面に行くことがあったので、以前から行きたいと思っていた武相荘に行ってきました。 実はここから数kmの所に何年も居たのですが、行きそびれていました。 ここは言わずと知れた白洲次郎が太平洋戦争を予測して疎開し、農業に従事したところです。 何か本当に観光地化していて、少しイメージが崩れました。 面白かったのは書斎で、机の横には小型のTVが置いてあって、私も実は小さなTVを置いていて親近感が湧きました。 農業は本格的で、小型のトラクターまで有りました。 エピソードなどはこのページを御覧ください。

車は最初はベントレーであとでポルシェになったそうですが、後には東北電力の会長になりそれなりに収入はあっはずですが、武相荘に移った時には吉田首相のブレーンをしていた程度でたいした収入はなかったはずです。 しかしそれなりに買えたというのは、手数料収入とか、見方によっては大阪で言う「がめつく」稼ぐ能力もあったようです。 単に占領軍にとってうるさい日本人であっただけでなく、商才もそれなりにあったと言うのはうなずける話です。 いままで知らなかったのですが、墓所が兵庫県三田市にあることを今知りました

昨今、流行りの坂本龍馬も海援隊と言う一種の商社を経営していて、これは一種の軍隊で実力行使が出来た事が薩長同盟を成立させるような政治力の源泉になったそうです。 某政党の一兵卒と自称している人はこのベースは十分にあるのですが、理念が無いですね。 逆にいくら立派な理念があっても、それをサポートする要するに資金力、実力行使がないと政治力も発揮できません。 軍事力も同じで、政治力や外交力とマッチしていないと十分な力の発揮は出来ないと思います。

今月の読み物は、財務官僚の出世と人事 (文春新書)> 岸 宣仁 (著) ¥798 白洲次郎と両極を成す官僚のタイトル通りの内容です。 如何に旧大蔵省の主計局が役所の中の役所と言われるワケがわかります。 やはりこの国は主計局で持っていたんですね。 いくら政治家が政治主導と叫んでみても政策は停滞するだけ。 はやり政治家による高い理念と官僚による実行がうまく咬み合わないと、この大きな日本は動かせないと思います。 極東のちっぽけな島国と言うのは、どうも我々の義務教育の段階で刷り込まれているので、すぐに北欧の小国との比較になりますが、なにしろ中国には並ばれましたが、世界で第二のサイズ、物理的な大きさでは無くて経済サイズがある国ですがら、そう簡単に細部までコントロールすることは不可能だと思います。

内容(「BOOK」データベースより)
試験の成績に関する限り、彼らは幼少の頃から「優秀」「できる子」の折り紙をつけられ、「神童」の評判を取った人物も多かったはずだ。それだけ頭のいい人物がいったいどんな出世競争を繰り広げているのか。日本一熾烈なエリート戦争、勝者と敗者を分けたものは何か?1000枚の取材メモで再現。歴代事務次官の出身高校・大学リスト付。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
岸 宣仁 1949年埼玉県生まれ。73年東京外国語大学卒業後、読売新聞社入社。横浜支局を経て経済部に勤務し、大蔵省、通産省、農水省、経企庁、日銀、証券、経団連機械、重工クラブなどを担当した。91年読売新聞社を退社、経済ジャーナリストとして知的財産権、技術開発、雇用問題などをテーマにしている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

今月のひとこと2010年11月号





「今月のひとこと」の目次
毎月一回はその時々のトピックスをお送りしています。
本家の http://www.masuda.org/ もよろしく

絵や写真をクリックすると、そのページに行けます


2010年11月1日
台風一過と言うわけにもいかなくて、秋の梅雨になってしまいました。 何十年ぶりかで、車で東京まで行ってきました。 流石に歳を考えて行きは沼津で一泊したのですのが、帰りは一気に浜名湖での30分の休憩で、正味5時間15分で帰りつきました。 よくよく考えたら、東京まで直接自動車で行ったことはないのでは無いかと思いました。 学生の頃は名神しかなくて、東名がところどころ出来ているだけだったので、国道1号線をひたすらトラックの追い越しに必死になっていました。 これで確か沼津までノンストップで8時間はかかったと思います。 ずっと高速道路で、自動車の性能は飛躍的に上がり、体力があれば一気に走り切れますね。 リニアの話も出ていますが、その時点では電気自動車(EV)で少なくとも東京・大阪間は充電なしで走れるようになるのではないでしょうか。

政治も経済もぱっとせず、また近い将来の展望もなく、うっとうしい天気で陰気な気分になってきます。 アメリカは、さらなる未踏の金融緩和に出ようとしていますので、ますますの円高が進行するでしょう。 本欄でも何回か紹介したように、自国通貨が上がるのはその国の価値が上がることなので、本来喜ばしいことです。 従って、現時点では海外の資産を買い取るとか、大名海外旅行に出かけるとか、もっと円高を謳歌したら良いと思います。

あまりにも輸出企業の言い分が声高になりすぎです。 某日本経団連の会長が顔をしかめながら円高は困る、とだけは言って欲しくない。 他の団体だっと思いますが、70円でビジネスが出来るように、と言っていて、ふーんと思ったら東芝の会長か相談役で、東芝は社内レート70円で行くそうです。 いつも元気な電産の永守さんは、このチャンスにとどんどん大型のM&Aを進めています。 円高キャンペーンで気を付けないといけないのは、インフレ(デフレ)係数を考えると、現状は名目で言うほど円高では無いのです。 日本はデフレが進行していますので、その分は名目の円高に触れるので実質はあまり変わっていないと言うことです。 従って問題は、デフレに対応出来ていない輸出企業に有ります。 また、円高と言うよりドル安ですから、他の通貨に対してはそんなに円高になっていません。 ニュースでも円高円高と言いますが、対米ドルであると言うのはあまりいいませんので、円高だけが印象に残るのです。 むしろ米ドルの時代が終わりつつあると認識すべきでしょう。

またまたノーベル賞が2人出ました。 やはり長生きしておかないとと言う事と、何が評価されるのか分からないと言うことですね。 今回受賞された特にアメリカにいる人は、ラッキーでした、と言う言葉を何回も言っていました。 これが本心ではないですか。 特に今回の受賞は、技術もさることながら液晶がこれだけ広がったと言うことの要因が大きいでしょう。 私も若い頃に液晶に少し頭を突っ込んで、ついでに有機ELにもわずか関連しましたが、40年前の液晶はどうしようもなく不安定で、寿命が短く、量産性に欠けるものでした。

せいぜいデジタル時計の文字盤とか、電卓の表示とかにしか使えませんでした。 50インチ100インチの画面が出来るとは夢にも思いませんでした。 もちろん基板となる大型の薄いガラスの製造技術に寄るところも大きいのしょうが、今回の受賞につながった技術がメジャーな役割を果たしているのではないかと思います。 パテントがなかったと言うことですが、これがあれば市場は膨らまなかったでしょうが、何とか日本の優位が保てたのかも知れません。 他の優位の技術が見当たりません。 ひょっとしたらELがもっと早くメジャーになったかもしれません。

ノーベル賞での連想で、例の本当にラッキーだったニュートリノの観測で賞をもらった、カミオカンデで、また新しいプロジェクトがスタートしたようです。 カミオカンデの最初の目的は、素粒子論の標準理論で予言されていた陽子の崩壊を観測することでした。 理論では陽子も崩壊しこの世は、何十億年後かはエネルギーだけつまり光で薄ぼんやりした、後はなにもない世界になると言うことで、何十億年も待てないので、数を増やして膨大な水の中の水素原子の崩壊を捉えようとしたのです。

計算では年に2-3個の崩壊があるはずだったんですが、結局これは見つからなかった。 それで同じような機構で、今度はニュートリノを観測しようと言うことになり、東京の研究所でニュートリノを発生させて、富山のカミオカンデで検出できたのですが、それと同時に地球の近く、近くと言っても何光年の距離ですが、ここで新星が出現した。 つまり星が大爆発を起こし、その時に発生した大量のニュートリノを検出したのです。 これがノーベル賞受賞の大きな要因でした。 たまたま検出器を作ったら、たまたま近くで新星が爆発したなんて偶然は楽観的に考えても、数千年に一度だと思いますので、あの受賞はラッキーだったとみんなに言われているようです。 受賞した本人も、ラッキーだったと言われていますが、といつも言っていました。

そのカミオカンデが3度目の正直で、今度は宇宙の暗黒物質を検出しようと動き出しました。 これが検出されたら今度は本当にノーベル賞ものです。 この宇宙全体にある、我々の体や地球を形成する物質は物凄く沢山あるように思えますが、実は全体で言うと10%しか無いのです。 他は暗黒物質とさらには暗黒エネルギーが大半を占めているのです。 暗黒物質は、単に見えない宇宙の塵みたいなものでは無くて、重力以外の相互作用を持たないので検出は極めて難しいとされています。 この中の候補としては先程のニュートリノがあり、当時ニュートリノの重さがゼロでない、と言う事が間接的に実証されて、当時のクリントン大統領も言及しました。 しかしこれだけでは暗黒物質の総量には達しないことが分かりました。 暗黒あネルギーは、ご存知アインシュタインが、生涯の間違いと言った、アインシュタイン方程式の中に無理やり追加した宇宙項に関連していて、この宇宙項そのものが暗黒エネルギーに相当すると言うことが分かってきました。

アインシュタインは古典物理を、最後に集大成した人ですから、量子論には最後まで反対していましたが、宇宙に関しても膨張宇宙は信用せず、定常宇宙だと信じていました。 それでほっておくと膨張する宇宙を止めるために無理に宇宙項を追加しました。 その後宇宙が実際に膨張している事が分かって、アインシュタインは、自説を否定し上述の言葉になったのです。 その後、当時そうていしたような定常的な膨張ではなくて、膨張が加速していることが分かり、その原因が暗黒エネルギーだと言うことです。

今月の読み物は、世界は分けてもわからない (講談社現代新書) 福岡 伸一著 ¥819
前作が面白かったので、また読んでみましたが、ここで取り上げて置いてなんですが、そんなに面白いとは思えませんでした。 文章が少々読みにくい。 しかし後半の研究結果の捏造に関しては、なかなか筆も冴え、一気に読みました。 ノーベル賞確実と言われた研究成果が、ひょんなことから捏造とばれてしまった話ですが、その途中の電気泳動の実験手順が微に入り細に入り、図解すると一発で分かるようなことが、文章化され、それがまた良く読める。 実際に自分で実験しているような気分になりました。

こう言う捏造事件は結構あって、似たようなケースでは同じような時期に、ジョン・ロング事件と言うのがあって、マサチューセッツ総合病院で、癌の一種である「ホジキン病」の培養株を得て、これを元に種々の成果をあげたのですが、結局は捏造が発覚したそうです。 日本でも、以前に話題になった、旧石器の発掘捏造も有りました。 筆者は、研究者がなぜこう言うことをしでかすのか? と言う分析をしたかったらしいのですが、その結論はイマイチぼんやりしています。 いずれにしても、この捏造作業の描写は一読の価値アリです。

内容紹介
60万部のベストセラー『生物と無生物のあいだ』続編が登場! 生命は、ミクロな「部品」の集合体なのか? 私たちが無意識に陥る思考の罠に切り込み、新たな科学の見方を示す。 美しい文章で、いま読書界がもっとも注目する福岡ハカセ、待望の新刊。

内容(「BOOK」データベースより)
顕微鏡をのぞいても生命の本質は見えてこない!?科学者たちはなぜ見誤るのか?世界最小の島・ランゲルハンス島から、ヴェネツィアの水路、そして、ニューヨーク州イサカへ―「治すすべのない病」をたどる。