今月のひとこと2017年11月号

2017年11月1日
それにしてもTVから、なかなか目を離せない1週間でしたね。 民主党/民進党は落ちるところまで落ちたと言う事でしょう。 離党者が出てきたので前原代表は焦って、合流を決めたらしいが、それにしても民意というか情勢をここまで読めないのは、政治家としても、まったく適性を欠きますね。

 

今回の選挙で一番、露わになったのが前原代表。 政権を取ったときの八ッ場ダムの時から注意深く見ていました。 元々興味のある人でしたから、八ッ場ダム問題をどう決着付けるのか、非常に興味があって注目していましたが、結局何のアクションも無しで放りっぱなしで終わりました。

その後は代表の時の、例の偽メール事件。 いくら議員は個人的な立場で活動するとしても、公党のそれなりの人を攻撃するのですから、ちょっと待てと言ってウラを取るぐらいの事はやっても良いと思いました。 問題発覚後は、自分で国会の席相手に謝りに行ってましたが、これやるくらいなら、少しチェックしたらどうかと思います。 結果的に本人は自殺してしまって、この時もサポートと言うか面倒見をもう少しちゃんとやっておくべきでした。

本人とは直接話をしたことは無いですが、某知事の横で知事が別の人と話をしている間、そばでじっと話の終わるのを待っていたのが記憶にあります。 単に挨拶をしただけですが、某知事は「おっ」と手を上げただけでした。 この時はすでに下野していて、特に役職も無かったように思いますが、元民主党代表であったことは間違いないですので、ちょっと意外な力関係に愕然としたことを覚えています。 小沢さんとも稲森さんとも近いので、それなりのアドバイスはもらっているはずですが、結果が悪すぎます。

希望の党も、あまりに急ぎすぎたので、ガタガタでしたね。 大阪維新でも元の代表が知事になって2年で地方政党、その後2年経って初めて国政政党にやっとなったので、今回は余りにも短すぎる。 安倍首相の仕掛け勝ちと言う話もありますが、1年後でもしんどいと思います。 余りに頼りない元検事と急遽参加した脱藩組でもギクシャクしていたので、最初から話にならなかったのだと思います。

政権選択選挙と言いながら、たいした政策も無し、首班候補もなし、候補者の数もなしで、もし万が一政権交代が起きても、参議院は多数を取れないので、またまたねじれ国会となり、単に政治混乱を招いただけでした。 前回の政権交代は、小沢一郎が大戦略を立てて、まず参議院から崩していって、政権交代に繋げたのであって、その後の問題はいろいろあったものの、今回のような単なる風だけではなかったように思います。

それにしても国民は前回の政権交代で大いに学びました。 「安倍政権は嫌いだが、他の選択肢が無いので、しょうがない。 ヘタすると政治混乱を招く。」と言う非常に冷静な判断があったのではないでしょうか。 はっと気がつくと、音なしの構えだった北朝鮮の問題もあるし、中国では6年どころか10年以上ひょっとしたら20年以上も習近平体制が続きそうで、非常に合理的な判断だったと思います。

音なしの構えの北朝鮮を想定して、解散を打ったのだとしたら、たいしたものです。 日本だけでは無理ですが、アメリカからは種々の情報が寄せられていたと思いますので、単なる偶然で北朝鮮がおとなしくなったわけでは無さそうです。 要するにアメリカが本気でやり出そうとしているようなので、トランプ訪アジア後から年末にかけて大きな動きがあるのではないでしょうか。

戦略爆撃機のB1Bが秘密裏に北朝鮮沿岸を飛行したのに、それを北朝鮮が探知できなかったのではないか、と言われていて、旧式のレーダーでは、最新式のステルス機能があるB1Bを察知できなかった様子で、北朝鮮はこれに非常にショックを受けているのはないでしょうか。 知らない間に侵入されて、爆撃される可能性がたかまったのですから。

政権の安定でサスガに株価は上がりました。 余りの急激な上昇に、売りをしかけた投資家の死屍累々だったそうです。 売りの返済による踏み上げで、株価の上昇に弾みが付いたと言う話もあります。 水曜日には少し下がって16連騰は消えましたが、その後の金曜日の後場で一気に上がりました。 本稿は日曜日に書いていますので、月曜日がどうなるかです。 中期的には23,000円だとかPERで見ると24,000円だとか、25,000円だとかと言う見方もあります。 海外や日本の機関投資家がまだ本腰を入れていないようなので、大幅な下落リスクは少ないと見られていますが、北朝鮮で何かあると下落になるのではないでしょうか。

経済の最後の問題の賃金上昇ですが、なんでこれを総評/民進/みどりで推進しないのか? 以前は賃上げは労組の専売特許で、スト含めてドンドンやってました。 これだ人不足に陥っているのに賃金が上がらない、特に組織率の高い大手で賃上げ要求が出てこないのは理解できないです。 財界も政府から3,000億円負担しろ、と言われるばかりで、何ら政策があるような印象がありません。 以前なら賃上げして経済に好影響を与えると言うような議論が賃上げ交渉でもありましたが、最近では政府が要求するばかりで、妙に政治に介入したりして、何のための労組かと思います。

最近のIT分野の大きな話題はWifiセキュリティのWPA2の脆弱性が、明らかになったことでしょう。 セキュリティ無しは論外としても、最初のバージョンであったWepはいとも簡単に解読できることが分かって、その後はWPA2が主流になっていて、これ以外は設定しないようにと言う注意があったのですが、これも破られてしまったと言うことです。

 

正確に言うとWEPのように暗号そのものをクラックしたと言うことではなくて、その暗号キーそのものを入れ替わってしまうと言う問題です。 キーをやりとりするときのプロトコルに穴があって、それを利用してキーを入れ替えてしまうと言うものです。 全世界では、天文学的な数のWIFI機器が存在するので、その対応は非常に困難だと思います。 PCやスマホに関しては、ドライバーを更新すれば良く、すでに更新パッチが配布されているそうですが、問題はルーターなどの単体機器で、これのファームウエアの更新は並大抵では無さそうです。

当面の対策は「有線化」と言うものですが、これはほとんど意味が無いです。 一番有効なのはVPNを使うことで、一部のウイルス対策ソフトには有料ですが、そのような機能があるようです。 本来はセキュリティなしのパブリックWIFIを使うための機能ですが、こうなってはWPA2があろうが無かろうが、セキュリティがないものとして考えないといけないようです。

もっとも無線の有効範囲内に入らないと盗聴は出来ませんので、人が多い所以外では、そんなに神経質になる必要もないと思います。 ただピンポイントで狙われると、打つ手無しで、VPNを使うしか無いと思いますが、同じピンポイントなら他にも手がありますので、手間のかかるWPA2クラックより他の方法を選ぶかも知れません。

今月の読み物は「闘いを記憶する百姓たち: 江戸時代の裁判学習帳」 歴史文化ライブラリー 単行本 八鍬 友広 著¥1,836

オススメ度 ★☆☆ 興味のある人は読むべし

むしろ旗を押し立てて、手には鍬や鎌を構えてと言うのが百姓一揆のイメージだと思いますが、これは江戸時代前期までのことで、その後は主に訴状をだして、今で言う訴訟に近いものだったとのことです。 もっとも現在の民事裁判とは異なり、ヘタをすると首謀者は死刑になると言うリスクもあっての上の訴訟だったようです。

しかも、この訴状が教材として広く流布していたと言うのは驚きです。 ここで主に取り上げられている「白岩目安」は単純な訴えでは無くて、10年以上に渡る領主との摩擦の結果ですので、為政者にとっても、非常に機微なテーマだと思います。 そこまで追い詰められているので、命を掛けてでも訴訟を行うと言うことになるのでしょうが、このような機微な文書が、教材として流布していたのは、さらなる驚きでした。

寺子屋で用いられていたような、如何にも教科書と言うのでは無くて、一見古文書そのものと思われるものでも、往来物と言われるような教材として出回っていたのです。 日本の古い家には多量の古文書がありますが、新聞記事になるような「龍馬の手紙」みたいなものはほとんど無くて、手紙の書き方のような往来物が良く出てくるとのことです。 他に多いのは、当然ながら借金証文や年貢を収めたあとの領収書である皆済目録などで、永久保存文書が多いのは当然だと思います。

今月のひとこと2017年10月号

2017年10月2日
今年は9月末になって旧に寒くなってきました。 先日の明け方には14℃になっていました。 そんなに低温では無いのですが、暑さに慣れた体には寒く感じます。

 

気候の急変と共に、政界が騒がしくなってきました。 安倍首相の突然の解散に端を発して、大きな政界再編に結びつきました。 それにしても民進党は情けないですね。 一度政権についた党とは思えない、まとまりの無さと誇りのなさです。

希望の党に入れてもらえないとかの、何とかしてくれない病に取り付かれているとしか思えないです。 安保法案にあれだけ反対していた政治家が、アッサリ希望の党に合流できると思う方がおかしいのであって、正反対の意見を持つ政治家が同居してたのですから、ここはアッサリ党を半分に割って、リベラルと言われる政治家は行くところが無いのですから、保守サイドが希望の党と合流したら良かったと思います。 しかし前原党首にそこまでの力すら無かったのか、はたまた個人の能力のせいか、なんとも無様な最後となりました。

民進党の原理主義者」、「理想主義者」、「現実主義者」などと言われて来た政治家たちが、何も言わないのも失望です。 リベラルの新党立ち上げが話題になっていますが、最初から粛々と撤退すべきだったと思います。

小池知事が出馬するのでは? と言うことが話題になっていて、先週の段階では出るのではとなっていたのですが、日曜日のNHKの番組で、出ないと若狭議員が述べたので、その可能性は急速に減ってきています。 恐らく過半数に達する候補者を用意できていないと思いますが、これくらいの票読みは、希望の党はもちろん政治評論家やマスコミに出来て当然だと思います。

自公が過半数を割ると、維新などとの連立内閣の可能性が出てきますが、これは日本にとって悪夢以外の何者でも無いと思います。 世界の中で日本の政治だけが安定してポピュリズムとは無縁だと思われていたのですが、とうとう日本にもポピュリズムの波が突然あらわになったと言うことでしょう。

この点では世界を十分見て、世界の流れを体感してきたはずの安倍首相の想定ミスだと言わざるを得ません。 やはろ3期目を睨んで、来秋の退陣を想定していなかったので、早期解散に踏み切ったのですが、パンドラの箱を開けてしまったと言うことです。 最後に残ったのが希望だと言う話ですが、現在ではポピュリズムと言う怪物が残ったとなってしまいます.

最近のIT分野では量子コンピュータが話題を集めています。水中での量子通信や衛星との量子通信も高速で行われるようになり、いよいよ量子による情報処理が本格的になりそうです。 AI分野の技術シンギュラリティと言うかクオンタムジャンプはディープラーニングでなされ、認識技術の飛躍的な向上に繋がりました。 しかし更なるジャンプには別の技術が必要で、これが量子情報処理かも知れません。 これによりAIも自意識を持つようになり、人間に一歩近づくかも知れません。 あと10年内には、何らかの結果で出てくるでしょうから、生きているうちに、自意識を持つAIを見ることが出来るかも知れません。

量子コンピュータの分野では半導体の上で量子もつれを作って処理するものが主流ですが、量子ビットの数が少なくこれ以上の規模拡大には制約がありましたが、最近のニュースで、光を用いた量子コンピュータが発表されました。 予算の時期なので、来年度の予算狙いのプロジェクトがどんどん発表されますが、これはすごいものだと思います。 量子ビットも数百万ビットも見込めるとのことで、非常に大きな可能性を感じさせます。

今月の読み物は、江戸の長者番付 (青春新書インテリジェンス) 菅野 俊輔 (著)
Kindle版 ¥864 新書 ¥961

大名やトップクラスの武士の年収は、現代の地方自治体に当たるので、現代と比べるのは余り意味がないと思います。 面白かったのは歌舞伎の入場料とかミソ醤油や傘下駄の値段なんかは面白いです。 現代と比べて意外に高いものと安いものや、ほとんど変わらないものも多くあります。

明治維新によって徳川幕府が否定され、その治世であった江戸時代が必要以上に過小評価されていますが、この本を読むと、特に江戸時代後半は現代とほとんど変わらない生活を送っていたことが、良く分かります。

本書にはあまり記述がありませんが、当時もサラ金があって、大名は年貢米の前借りでお金を借りていました。 それも利率は非常に高く、十数パーセントから20数パーセントにもなります。 金貸しは当然に儲かりますから、時々徳政令で借金棒引きをされても、何とか生き延びることが出来たのでしょう。

面白いのは、1両10万円で換算すると、千両は約1億円。 千両箱と1億円入りのアタッシュケースはほぼ大きさも重さも同じようなものになります。 また1石は1両相当ですので、この換算で行くと、加賀100万石は1000億円となり、これは知行の石高なので税率40%とすると、400億円となります。 一概に比較は出来ませんが、石川県の平成29年度一般会計予算が約5300億円で、しかも市区町村の予算が入っていませんので、当時は非常に小さな経済圏であったことが分かります。

内容紹介
江戸幕府の八代“暴れん坊”将軍の年収は、なんと1294億円!
その将軍に勝るとも劣らない1000億円超の年収を稼いでいた人物とは?
江戸きっての大豪商である三井越後屋・三井八郎右衛門の驚愕の収入は?
いっぽうで、“宵越しの金を持たない”庶民や、内職が欠かせない下級武士の稼ぎは……
驚くべき年収ランキングから、江戸のリアルな生活事情が見えてくる、興味津々の一冊!

今月のひとこと2017年9月号

2017年9月3日
暑い夏も終わりに近づいて、やっと少し涼しくなってきました。 加計問題にかまけている間に、東アジア情勢は風雲急を告げて、とうとうミサイルが日本を超えました。 いろいろな情報をまとめると、どうも今回の発射は、最終段階で失敗したようです。 本来は距離的にグアムに届く所に発射したようですが、少しショートして短くなったようです。 

 

しかし計画はそうであっても、発射の段階でアメリカの反応を考えて、少し短くしたと言う可能性も残っていると思います。 それにしても金正恩はしっかりしている。 オーラも出てきた。 北朝鮮はすぐに崩壊すると言った評論家は何処に行った? 金正恩を選んだ北朝鮮政府の上層部の選択眼はしっかりしていたと言うことです。

このミサイル発射状況下での経済七不思議の最大のモノは、日本が危機にあったにも関わらず円が上昇したと言う事です。 サスガに株式は下落しましたが、すぐに元に戻りました。 ミサイル発射と言うことで、これは円が下落すると思ったのですが、有事の円買いは当事国になってもその通りだったと言うことでしょうか。

いずれにしても円が常に高めに振れるのは、基本的には日本の経常収支が黒字だと言うことです。 政府債務が巨大だと言うことで円暴落を予想する人が居ますが、これは日本が経常収支黒字で、しかも世界最大の債権国だと言うことを忘れているのだと思います。 政府はなるほど財政赤字を抱えていますが、日本の国全体としては黒字国で、政府の財政赤字を日本国内で相殺しても、日本国としては黒字のままのピカピカの国のままです。

ちなみにアメリカは世界最大の債務国で、国としても借金まみれで、通常の国ならとっくにデフォルトを起こしていると思いますが、最強の基軸通貨であるドルの発行権を持っているために、それでも平気です。 もっとも政府の財政赤字は深刻で、アメリカの国債は上限が法律で定まっており、これを毎年法律を作って更新しているのですが、これが9月に再び上限に達します。 現時点ではマーケットは楽観的で、過去にも例があってギリギリのところで、法案が成立したのですが、今回のトランプ政権では民主党が反対を崩さず、民主党の一部の賛成が無いと成立しないようで、9月末が近づくと状況は混沌としてくるかも知れません。

通貨発行権を持つ国の赤字と言う点では、一ランク規模が小さくなりますが、日本の国としての赤字と政府の赤字も、アメリカの世界とアメリカの国との対比で似たようになります。 アメリカが世界に対して赤字でも平気なのは、日本政府が日本国に対して赤字が平気なのと似ています。 財務省は財政均衡主義なので、どうもこの日本政府と日本国の区別を意図的に曖昧にして居ると思いますし、特に家計との対比はまったくのミスリードになっていると思います。 先日の日経新聞の大機小機欄で、遅ればせながらの指摘がありました。

今月の読み物は、応仁の乱 – 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書) 呉座 勇一著

オススメ度 ★★★ 是非読むべし

京都で先の大戦と言うと応仁の乱。 太平洋戦争では焼けなかった京都も応仁の乱では丸焼けに。 特に上京は戦場になったので、ほとんど丸焼けになったようです。 何しろ登場人物が多いので、名前を覚えるだけで大変ですが、やっと読みました。 少し予備知識がないと、学校で教わっただけではなかなか読めないです。 私は録画したのを見ましたが、探すとYoutubeにありました。

 

まずこれで全体を掴んで読んだほうが理解が速いと思います。 文章そのものは非常に分かりやすくうまいですが、内容がややこしいので難解です。 

 

基本的に京都と河内が舞台なのですが、主役の一人の畑山政長の墓が大阪平野にあります。 以前に行ったことがあるので、写真を引っ張り出しましたが、当時はあまり応仁の乱に興味がなかったので失念していました。 墓と言っても、住宅地の真ん中にあって、非常に行きにくいし、草ぼうぼうだし、何の変哲も無い五輪塔だし、本当かな、と当時から思っていましたが、どうも本当らしいです。 墓地の一角にある『乃木将軍景仰碑』は3m以上はある大きな石碑で、何でも畠山政長の軍師であった佐々木源次左衛門清高の子孫が乃木希典であるらしい。 それにしても墓地はみすぼらしい。

【以下引用】
成功例の少ない「応仁の乱」で18万部。日本史研究に新たなスター誕生か。
日本史上の大トピックとされていながらも、全体像を捉え難い「応仁の乱」。そんな題材を、既成史観の図式に頼ることなく、絶妙なバランス感覚で丁寧に整理した新書がヒットしている。NHK大河ドラマの歴代最低視聴率記録を長年保持していた『花の乱』(1994年)を始め、「応仁の乱」を扱ったものに成功例は少ないので、異例の現象だ。
「『応仁の乱』をテーマに選んだのは著者ご本人です。地味かもしれませんが名前を知らない日本人はおらず、そういう意味では歩留まりがよい。大ヒットはしないまでも絶対に失敗はしないテーマという認識でした。中公新書は『歴史ものに強い』というアドバンテージもありますし後は“著者力”で突破だ、と」(担当編集者の並木光晴さん)
古くは網野善彦さん、近年では磯田道史さんなど、日本史研究者には、時に、学識の確かさと読み物としての面白さを両立させるスター学者が登場する。36歳とまだ若い本書の著者は、次代の有望株だ。
「扱う題材の全体像をはっきりと理解し、その上で、読者に伝える情報を取捨選択できる。30代半ばでのこの筆力には、とても驚かされました」(並木さん)
中公新書の主な読者層は50代以上。しかし本書の売れ行きの初速はネットなどと親和性がある30代・40代が支え、そこから高年齢層に支持が広がった。これは、新たなスター誕生の瞬間かもしれない。
評者:前田 久 (週刊文春 2017.3.2号掲載)

だらだらと続く大乱
小学校の教科書で紹介されていることもあってか、「応仁の乱」の知名度は高い。しかし、それがどのような戦乱だったのかと問われると、多くの日本人が口ごもる。室町後期に京都でおきた……戦国時代のきっかけとなった……諸大名入り乱れての……。
呉座勇一『応仁の乱』は、ほとんどの日本人が実態を知らないこの大乱を、最新の研究成果をふまえながら実証的に検証してみせる。さらには、同時代に生きた興福寺の2人の高僧(経覚と尋尊)が遺した日記を通じて、戦乱に巻きこまれた人々の生態を描いている。それらの合間に、気鋭の中世史学者ならではの自説も展開する。いたって学術的な内容なのだが、構成の巧さと呉座の筆力によって最後まで読ませる。
しかし、全体としては、やはりよくわからない。それは決して呉座の責任ではなく、この戦乱が結果的に大乱になってしまっただけで、発端の当事者(細川勝元と山名宗全)たちも、短期に決着するとふんでいたからだ。それがいつしか、両氏が多数の大名を引きこんだために、諸大名の目的が錯綜して、将軍も大将もコントロールできなくなっていき、京都だけでなく各地で戦闘がくり返され、だらだらと終結まで11年もかかってしまったのだ。しかも、戦後処理まで判然としないのだから、応仁の乱はよくわからない。
大義名分に乏しいだらだらと続いた応仁の乱は、第1次世界大戦に類似していると呉座は説く。結果的に諸国に新たなパワーバランスを生みだすことになる、地味な大乱。ひょっとしたら今、私たちもそんな混沌の時代を生きているのかもしれない。
評者:長薗安浩 (週刊朝日 掲載)

 

 

今月のひとこと2017年8月号

2017年8月2日
梅雨も明け蒸し暑い夏になって来ました。 加計問題はとうとう政権を揺るがすまでに、大きな政治問題に発展しました。 元々は国家戦略特区の意思決定過程の問題であったのに、防衛省の日報問題と同時進行で安倍政権の問題となり支持率が急落し危険水域まで悪化しました。

加計幸太朗氏が、いかにも悪そうなイメージの写真になっていて、どんどん想像による悪印象が強くなっているのも原因でしょう。 ちょっとマシな写真を掲載しておきました。 首相の「1月20日に知った」問題も加計氏の国会招致を避けようとしているような印象があり、それで無ければ過去の答弁を修正してまで、1月20日に拘るのかが意味不明です。 説明すればするほど、疑問点が出てくるのも良くないです。

藤堂高虎の今治。 市職員の官邸訪問も、官邸側に記録が無いと言うことになって、また疑問が深まります。 今朝の新聞では、この時には愛媛県職員も同席していたと言うことですが、これだけ多くの関係者が居るにも関わらず、官邸側の対応者が不明というのも解せないところです。 一説では、対応したのは安倍総理本人では無いか、と言う見方もあり、確かにこれなら隠したくなると言う気持ちは分かりますが、もしそうなら、いずれはバレるのではないかと思います。 その時の衝撃は北朝鮮のミサイルの比ではないでしょう。

報道しない自由と言うのがあるらしく、加計問題の国会中継で、加戸元知事や青山議員の質問が、全くなかったように報道しないマスコミもあったようで、たまたま国会中継をずっと見ていて非常に違和感がありました。 どうも従来型のマスコミは、トランプ大統領では無いですが、消極的なフェイクニュースだと言うことです。

結局頼りになるのは、玉石混淆のネットの複数の記事です。 ニコ動やYouTubeなどの映像はもっと役に立ちます。 いずれにしても、情報とくに新聞記事は当てにせず、自分で事実を確認しなければならない時代になったと言うことでしょう。 事実をありのままに伝えると言うマスコミの機能はほとんど無いと言っても良いと感じました。

いずれにしても、アメリカでは毎日史上最高値を更新しつつあるにもかかわらず、せっかく2万に到達した日経平均株価も、膠着状態となり、さらに問題が出てくれば、如何に日銀やGPIFが買い支えようと暴落の恐れは多分にあります。

最近のITの話題の一つはビットコインでしょう。 NHKの番組でも取り上げられ、億万長者に成れると言う感じです。 少し流行ってきたと思ったら、やはり問題はブロックチェーンのブロックの作り方にあります。 小人数で細々とやっている分には良いのでしょうが、これだけメジャーになってくると、ブロックを生成するマイナーの処理速度やブロックの大きさ、また各ノードで保持する全ブロックのサイズなど問題が顕在化しています。 今までの取引の全ブロックは1Tバイトに収まっているようですが、これからどんどん増えると思いますので、容量が2桁も多くなると、普通のPCと言うわけにも行かずに、だんだんとヘビーになってくるのでは無いでしょうか?

たしかに初期のインターネットを想起する状態です。 初期のインターネットもせいぜい9600Bpsの電話回線で結ばれていただけで、ネットの上でサウンドやましてや画像や動画がハンドリングできるとは、夢にも思わなかったです。 ビットコインの中核技術のブロックチェーンも似たような状況で、これからどんどん改良が加えられて行くのではないでしょうか。 今回のビットコインの分割も、基本はシステムの更新方法の異論にあるわけです。 いずれにしても、ブロックチェーンは、インターネットの上の更なる大発明ですので、ますますネットが重要になってくるのは間違いないところです。

今月の読み物は、「反資本主義の亡霊」(日経プレミアシリーズ) 新書 原田 泰 著
\880

オススメ度 ★★★ 是非読むべし

どっかの書評にもありましたが、もう資本主義はアカンとか経済はこれ以上向上しないととか、後ろ向きで自虐的な本がたくさん出ていて、私も何冊か読みましたが読後は何となく気分が落ち込みましたが、この本を読んで溜飲が下がる思いです。 ちょっと筆が走りすぎで、話の筋が少し飛ぶところはありますが、なかなか良いです。 *野さんなんかどっかに行ってと言う感じです。

特に大恐慌辺りからの歴史は再読する必要ありです。 こんな人が日銀の政策委員会に居るなんて、それだけでもビックリ。 本当はビックリする方がおかしいのですが。

内容紹介

資本主義が格差、貧困、戦争をもたらす!?
――なぜわが国では、資本主義は悪者扱いされるのか?

資本主義の生み出す豊かさこそが、格差を縮小し、環境を保全し、労働条件を高め、福祉や文化を発展させているのである――日本に根強く残る“反資本主義”の誤りを歴史的・思想的な観点から指摘、資本主義の再評価を試みる!
<本書の目次より>
・資本は格差の原因か
・アメリカの所得格差は労働所得の格差による
・江戸の人びとはトリクルダウンの天才だった
・金融危機の原因は経営者の報酬制度にもある
・アベノミクス格差論には根拠がない……

今月のひとこと2017年7月号

2017年7月1日
やっと梅雨に入ったようで雨模様になりました。 政権も長くなると緩みというか内部疲労を起こしているような気がします。 森友に始まって加計、豊田暴言、ついでに女性差別発言、極めつけは防衛大臣資質問題と加計ヤミ献金問題。 これに対抗できる交代可能な与党内外の勢力が見当たらないのが一番の問題でしょう。私の見るところ森友問題は財務省の引渡価格の決定過程を明確にすること。 要するに廃棄物が埋まっていることで、担当者が将来の訴訟などを嫌ったせいで必要以上に査定価格を下げたのが原因だと思うので、その辺を説明する事。

しかし森友関連の学校のデザインは素晴らしいですね。 どれ見てもスッキリ綺麗に出来ています。 お金もかかっているようには見えない。 あの2人のうちにこんなセンスがあったのか、と感心しています。 建物は残して保育園なり小学校は開設すべきですね。

加計問題は確かに加計ありきで話が進んだと思います。 やはり何かネタが無いと特区など出来ないわけで、もし特区をぶち上げて誰も応募が無ければ面子丸つぶれです。 しかし総理のお友達との関連が深いので、ここは念入りにその関係を否定する論理を作っておかないと行けなかったと思います。 要するに脇が甘かった。

豊田暴言は個人的な事なのでドウしようも無い。 これだけの経歴を持っている人がおかしいとは言えず、まあ田中真紀子も似たようなモノでしょう。

現防衛大臣発言は根が深いので深刻。 以前から資質に問題があると感じてましたので、地が出たと言う感じですが、こういう人をキチンと見抜けない総理大臣と言うのに信頼が無くなりました。 世論調査の結果でもこう言う傾向がありますが、この発言問題の後の世論調査がミモノだと思います。 形式上で無い本質的な任命責任が生じます。 せっかく70年かかった憲法改正もこれで風前の灯火になった感があります。

元文科大臣の加計ヤミ献金問題も、限りなく黒に近い。 加計の元秘書が11件(笑)のパーティ券購入をとりまとめたとのことですが、法律上のあっせんにはならないようで、逃げ切れると思っていると思いますが、実態はあっせんなので、いくら11に分けてもダメだと思います。 この調子で行くと、どんなにまとまったパーティ券でも20万に分ければOKと言うことになります。 まあ政治家が作った政治資金規正法なので・・・と言う論調もありますが、あまりにも有権者を馬鹿にした話だと思います。

株価も日銀の買い支えで高値維持ですが、方向性に欠けてぱっとせず、 アメリカの第2のサブプライムローンと言われている低所得者用のオートローンの問題と自動車そのものが変革期を迎えていることで需要が減っていること、これに絡んで安全機能が付いていない中古車の価格が下落するなど、一時は我が世の春だった自動車業界にも暗雲が垂れ込めています。

サスガに最近は政府の債務を家庭の借金に例える論調は無くなり、あの騒ぎはやはり財務省のヤラセだったと言うことが明確になりましたが、日銀が買うべき国債が市場から枯渇してきたり、ETFの購入を通じて、日本の株式会社のかなりの部分が日銀が最大株主になってきたりして、その副作用が顕在化してきています。

安倍政権が終わりオリンピックが終わった後が恐ろしい。 全てのツケが回ってくるようで、大激震のそれまでにいろんな事を整理して置いた方がよいかも知れません。

先月買ったビデオレコーダーの番組を離れたTVで見たかったので、試しにDNLA対応と書かれたTVスティックを買ってみました。 送料込みで\1,406なので、あまりきたいしていませんでしたが、やはりそれなりでした。 中国からの直送。

AnyCast M2 Plus Mini Wi-Fi ディスプレイドングル レシーバメディアTVスティック

ハードウェア仕様:
CPU:シングルコアARM Cortex A9 Rockchip RK2928 1.2 GHz。
GPU:3D GPU 1 xマリ400。
OS:Linux 3.0.8。
DDR3:256MB
Wi-Fi:802.11b / g / n 150Mbps 2.4GHz

ポータブルDLNA AirplayミラキャストHDMI
WiFiディスプレイドングルテレビ受信機アダプタ
HDMI 1.4、1080PフルHD出力をサポート
RAM:256MB
HDMI 1080Pスマートフォン用マルチディスプレイ共有

マニュアルは簡単な英文のみで、非常に分かりにくいです。 仕組みが分かれば理解できるのですが、それがなかなか分からない。

EZCastのコピーみたいで画面が似ています。 スマホをWifi接続して設定しますが、スマホからルーター接続して、さらにこのドングルが本来のWifiでネットに接続します。 この辺は洗練されていて使いやすいです。

Airmirror、DLNA、Airplay Miracastをサポートします。となっていますが、結局スマホ側にアプリを入れて、スマホに表示して、それをドングルを経由してTVにミラーすると言うことで、ドングル自体に機能があるわけではないです。 従って機能の大半はスマホ側のアプリで決まります。 EZCastのコピーらしいので、EZCast用のアプリはみな使えるようです。

元の目的のTV視聴は、どうなったというと、操作が面倒になるので、アキラメました。 まずスマホのWifiをドングルにつなぎ直して、スマホのアプリを立ち上げて、ビデオを表示して、それをTVにミラーすると言う手順を毎回行わないと視聴できないようです。

今月の読み物は、「黒部の太陽」 木本 正次 著
Kindle版 ¥ 800

オススメ度 ★★☆ この閉塞の時代に再読すべし

先月紹介の、吉村 昭 「高熱隧道」の続編として読みました。 詳しくは説明不要でしょうが、重なる逸話が出てくるので、全体の状況が良く分かりました。 それにしても当時の日本にはガッツがあったのですね。 元気が出てきます。 単なる1つの民間企業の関西電力がここまでやるとは素晴らしいと思いました。 昨冬にカニを食べに行った城崎温泉にあった、太田垣翁資料館も思い出して、興味深く読みました。

内容紹介
21世紀によみがえる黒部ダム建設工事の苦闘。 北アルプスに山中を貫く関電トンネルの掘削―。 破砕帯と呼ばれる脆弱な土壌、冷たい地下水の大量噴出。 トンネル貫通までの苦闘と葛藤を描く、人間ドラマ。 映画『黒部の太陽』(1968年、三船敏郎・石原裕次郎主演、熊井啓監督)や、フジテレビ開局50周年記念ドラマ『黒部の太陽』(2009年、香取慎吾主演)の原作文庫版。 –このテキストは、文庫版に関連付けられています。

内容(「BOOK」データベースより)
昭和三〇年代。電力不足の日本を救うため、人跡未踏の地で、巨大ダム「黒四」の建設が始まった。だが工事はトラブルの連続で、ついに「破砕帯」に遭遇、大出水に襲われる。もしこのまま工事が進まなければ、黒四ダムは完成しない。そのとき男たちは、いかにして困難に立ち向かったのか?徹底取材で描かれたノンフィクション・ノベルの傑作。

 

今月のひとこと2017年5月号

2017年6月2日
やっと6月になりました。 5月の長かったこと。 2ヶ月分に感じました。 毎日が同じ事の繰り返しだと短く感じ、異なることの連続だと長く感じるようです。 以前に新規事業を立ち上げたときは、それこそ1ヶ月が3ヶ月にも感じましたし、1週間も長かったです。 日曜日に助走体制に入って、月曜日の早朝会議からスタートするのですが、途中の日にああヤレヤレ週末かなと感じても、大概は水曜日でした。

トランプ大統領の本領発揮で、G7会議もほとんど何もまとまらなかったようですね。 最古参メンバーの安倍首相にはもう少し頑張って欲しかったが、メルケル相手ではなかなか思うようにならないですね。 結局トランプ対メルケルの構図になってしまって、日本は入る隙間もなく、あまり出番も無かったです。 パリ協定も風前の灯火。

これを反映しているのか、2万円の大台を前に株価も冴えず、一進一退になっています。 これを書いている金曜日の朝の時点ではまだ2万円に届いていませんが、これで終値が2万円を超えるのかどうかが関心事だと思います。

今朝の日経には、日銀の資産がGDPに並ぶ500兆円に達したと言う記事があり、将来的には一時的に債務超過になるとの見方があり、しかし日銀本体は意外に問題にならないと言う見方が強いと書いてありました。 通貨発行権のある日銀が債務超過になったとしても、何が問題として出てくるのかは誰にも分からず、日銀内部でも心配する人は多いと思います。 いずれにしても壮大な経済実験には変わりはないと思います。

長年使ってきたビデオレコーダが、ディスクの不具合か、よくダウンするようになって来たので、後継機を購入しました。 癖はあるが豊富な機能で有名だった東芝のレコーダーはどうかと思ったのですが、癖だけ残って、後はあまり進歩していない様子で、後の候補はパナソニック、シャープ、ソニーとなります。 結局、原状の機械に不満はたくさんありますが、連続性を買ったのと、ネットの評価が悪くないので、パナソニックにしてみました。 これで4台目となりました。

高機能機でも5万でおつりが来る値段で、この前に買ったのは、これの3倍以上はしたと思うので、コスパ的には大進歩です。 問題のチューナーは、地デジ3ch、BS3chと一番多いのを選んで、これで録画の時の制約は大分マシになりました。

もっとも全番組録画の機種は20万近くしますので、しかし以前のレコーダに少し上積みするだけで、全番組を1ヶ月録画出来るマシンを買えることになります。

機能面でもっとも進んだと思うのは、ネットを経由してスマホなどで外部で視聴できる事です。 従来もDNLA対応であれば、ローカルのLAN経由で使えたのですが、今回からは外部から使えるようです。

 

 

仕組みはイマイチ理解できていないのですが、以前よりパナソニックは、ローカルの機器を外部からアクセスできる技術、つまりルーター越えが可能でした。 今回はそれにストリーミングを組み合わせて外部からの視聴が可能になったと言うことでしょう。 スマホなどは無料、PCは有料と言っても1ヶ月200円程度です。 外部アクセスは理論的には可能なのですが、特別の設定を全く不要にしている点が非常に良いと思います。 今流行のIoT機器にも十分応用が可能だと思います。

セキュリティが心配になりますが、まだ総設置台数が少ないので、問題にならないのでしょう。 その内に、意外なセキュリティホールが見つかるかも知れません。

今月の読み物は、「高熱隧道」 新潮文庫 1975/7/29 吉村 昭 著 Kindle版 ¥ 520 文庫 ¥ 562

オススメ度 ★★☆ 立山アルペンルートに行ったことのある人は読むべし

宇奈月温泉からトロッコ電車に乗って鐘釣駅まで往復したときに、この小説を思い出して、早速読んでみました。 トロッコ電車と言っても、京都の山陰線のトロッコと似たようなモノだと思っていましたが、実際は大違い。 よくまあこんな所に小規模とは言え鉄道を敷設して、ダムまで建設するとは、ビックリです。

ここに来たことが無かったときは、あまり興味も湧かなかったのですが、来た後に読むと俄然興味が湧きます。 本題の高熱隧道は、この辺りの遙か上の方ですが、この下の辺りだけでも、その状況は推測できルくらいです。 鉄道は黒部第3ダムや第4発電所まで通じていて、トロッコ電車の終点である欅平から、200mのエレベーターで上がって、さらにバッテリ電車で第3ダムまで行けるようです。

ビデオはこちら。

サスガに、欅平から先は、予約制で抽選だそうで、平日にもかかわらず結構な競争のようです。 この欅平から先が、本題の高熱隧道で、触るだけでもやけどするくらいの高熱の中を掘り進んだと言うことです。

黒部第三発電所――昭和11年8月着工、昭和15年11月完工。人間の侵入を拒み続けた嶮岨な峡谷の、岩盤最高温度165度という高熱地帯に、隧道(トンネル)を掘鑿する難工事であった。犠牲者は300余名を数えた。トンネル貫通への情熱にとり憑かれた男たちの執念と、予測もつかぬ大自然の猛威とが対決する異様な時空を、綿密な取材と調査で再現して、極限状況における人間の姿を描破した記録文学。